mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

2組の師弟たち




前日の早出と居残りの練習に続いて、昨日も森敬斗選手は石井琢朗コーチに付きっきりで指導を受けているシーンをしばしば見かけた。


森選手はシートバッティングに参加し、濱口遥大投手の投球に必死に食らいついていたが、クリーンヒットというような当たりはあまりなかった。


この時期はバッターの調子が上がらないということが勿論あるが、それに加えて、濱口投手のコントロールが定まらず、高めに大きく外れるようなボールもいくつかあった。
腕を真上から垂直に振り下ろすような彼のピッチングフォームだと制球力が犠牲になるのは仕方がないのだろうか。



シートバッティングの後、再び、石井コーチが付きっきりで森選手のトスバッティングに付き合っていた。


石井コーチは、通常の位置ではなく、左打席で構えた森選手の正面つまり右打席の方向からトスを上げる。


シートバッティングで内角に入ってくるボールにつまっていた点を矯正しようとしていたのだろうか。
あるいは、軸足(左足)の近くにボールを置いてそれを目安にしていたので、体が前に出ないように我慢して打つ練習だったのだろうか。


いずれにしても、森選手は芯で捉えるのがなかなか難しいようだった。
こういう点がプロとしての基盤になって行くのだろう。



昨年の秋季トレーニングの際、石井琢朗コーチが復帰2年目のシーズンを終えた森敬斗選手について「スタメンに名を連ねるには、しないといけないことがたくさんある」と言い、時間をかけて大成させるプランを思い描いているという記事があった。


「(潜在能力に)見合った土台づくりをしないと。基礎となる部分をしっかりやってもらいたい。おそらく今はその段階」


ポテンシャルはすごくいいものを持っているからこそ焦らずに育成すべきと考えているとのことで、素人ながら私もその通りだと思う。


ファームで森選手を去年から指導してきた仁志2軍監督も次の様に言っている。


「1軍でもそれなりに見えるかもしれないが、続けて出場してどうかと考えると、まだやることはたくさんある。技術だけじゃないところもいろいろステップアップしてほしいと今でも思っている」


「肩が強く、足が速く、振る力も強い。原石として素晴らしいものを持っている。ただ素質だけで結果は出せない。その方法を覚えてほしい。彼は1軍のレギュラーとしてだけではなく、ゆくゆくは日本代表チームで不動の1、2番打者にならないといけない。そういう意味ではまだまだスタートラインにも立っていない」


首脳陣のみたては概ね同じというところ。
本人はどう言っているだろうか?


「(今シーズンは自分で点をつけるとすると)40点くらい。(今季初スタメンの中日戦で)最初に打って、こんな感じで入っていけば、試合で起用してもらえると思っていたが、そんな簡単ではなかった」


「手も足も出ないという感じではない。ただ、同じように結果を出すことが難しかった。体でも心でも、立ち返る場所、原点とするものを持っていれば良かった。常に明日は来る。毎日、自分(の状態)が変わる中で、どう良い時と同じようにやれるか」


「(30打席連続で無安打の時期は)自分に腹が立って試合が終わったロッカーで下を向いていた。もちろん、今までも不振の時期はあったけどそこまでではなかった」


秋季トレーニングで石井琢朗コーチからマンツーマンで指導を受けた際に、森選手は、


「来年に向けて一日一日を大切にしている。石井コーチらから教えてもらって、新たな感覚が難しければ、ちゃんと質問してもやもやが残らないようにしている。やっぱり、レジェンドの方々に教わっても結果につなげるのは自分。ものにできるようにしていきたい」


と言っていた。春のキャンプに入ってもこの気持ちは変わらないだろう。
足元をしっかりと見て励んで欲しい。


イチローさんが、「小さいことを積み重ねるのが、とんでもないところへ行くただひとつの道」と言っているのは、経験に裏付けられた金言なのだ。



こちらは悩める守護神候補の三嶋一輝投手。


居残りで行ったブルペンでの木塚コーチとのピッチング練習を、後方から優しい名伯楽の小谷正勝アドバイザーが椅子に腰掛けて見守っていた。


昨年、大事なところで打ち込まれることが多かった三嶋投手の悔しい気持ちを十分に理解してのことだろう。


昨年11月の神奈川新聞の記事で三嶋投手は胸中を語っている。
https://www.kanaloco.jp/limited/node/736759

「この順位を含めて、大事な時期に踏ん張れなかった、とずっと思っていた。僕自身も初めてクローザーの場面で逆転されたり、同点を守れなかったり。五つの負けが付いている。9年間で一番悔しい思いをした。一番泣いたし、寝られなかったことも多かった」


「この前は、投球練習中に何でそこに投げられないんだ、と。悔しくて、情けなくて。そんな経験は初めてだったし、人前で弱い姿は出したくない。1人の時は泣いたり、暴れたり。そこで吐き出して切り替えていた」


ここまで胸のうちを明かすのは、それほど悔しい思いを持っていたということだろう。
打たれて負けた試合の後で、三浦監督と木塚コーチはどちらも同じことを三嶋に伝えたということだ(朝日新聞 9月3日)。


「ここから立ち上がらないといけない。心が折れたら、終わりだぞ」


三嶋一輝は、こうしたことの全てを受け止め、来シーズンに向けて秋季トレーニングに励んでいる。そして我々ファンに向けて次のようにコメントした。


「チームのために一生懸命やろうと戦ってきたことに悔いはない。ただ、チームが下位にいる責任は重く感じている。これをどうするか。もう分かりきっている。来年、絶対にチームが優勝できるようにすること。


もっと努力しないといけないし、来シーズンに向けて時間が惜しい。しっかり気合を入れて、ファンをがっかりさせないように頑張るしかない」


昨日のピッチング練習では、昨年被打率の高かった右打者の内角に投げ込んでいた。三嶋投手自身、ぶつけても構わないと言うくらいの気持ちだった、と言っているようにかなり厳しいコースを狙っていた。


木塚コーチに、曲がってましたか?、と聞いていたので、ストレートのシュート回転を抑えるためのフォームの見直しをしているのかと思っていたのだが、どうも違うようだ。


そうだ、先日のWith Baystarsで言っていたシュートを習得しようとしているのだ(ダジャレではないです)。


何球か投げた後、ずっと黙って見ていた小谷さんが三嶋投手の方に歩み寄って行き、何やら短く指導していた。もっと手首を立てて、押し込むように投げると良い、と言っているように見えた。


そして、その後の投球に対して、「ああ、良くなった。良くなったよなあ(これは恐らく木塚コーチに向かって)。」と言っていた。


この方は、こうした一言が選手にとてもどれほど重いかを良く理解しているので、まずは、じっと見て、確信を得てから分かりやすくそれを伝えると言うスタイルなのだろう。皆が信頼する筈だ。


そう言えば、奇跡のリリーバーと言われた盛田幸妃さんに、あの落合博満さんに尻もちをつかせ完全に抑え切った高速シュートを伝授したのも小谷さんだった。盛田さんが亡くなってから、小谷さんは言っていたっけ。


“「投げてきますわ」とマウンドに行って、本当にあのシュートで落合をひっくり返してもまだ、投げ続けていた。7球とか8球も続ける度胸があった。まともに打たれた記憶がないんだよな。“


気のせいか、三嶋投手のピッチングフォームは昨年よりもダイナミックで、奇跡のリリーバーの魂がのり移ったように見えた。