森敬斗のマーケティング戦略
新しい商品を開発する時などにその商品をどうやって売っていくかについての作戦、つまりマーケティング戦略というものを考える。
よく言われるように、プロ野球のスポーツ選手というのもある意味では商品であり、そのような観点からは、若手のスター候補などについてのマーケティング戦略を考えることも有用だろう。ひょっとするとDeNAは既に検討済みなのかも知れない。
ベイスターズの若手のスター候補と言えば森敬斗選手だ。昨年は牧秀悟選手だったと思うが、彼は既にスター選手になったとみて良いだろう。
マーケティング戦略の基本的な手法で、SWOT分析というものがある。
この手法は、あるモノ(商品でもスポーツ選手でもアイドルでも良い)について、以下の4つの観点で特徴を整理するところから始める。
Strength(強み):長所や武器となるもの(そのモノ自体の特徴)
Weakness(弱み):短所、弱点(そのモノ自体の特徴)
Opportunity(機会):チャンスとなるような状況(外的要因)
Threat(脅威):成功を妨げるような状況(外的要因)
SWOTという名称は、この四つの因子の頭文字からとったものだ。
次に、これらの四つを組み合わせたポイントのそれぞれについて、マーケティング戦略を検討する。
この4つのポイントの中で、最も重要となるのは、強みを活かして機会を勝ち取るにはどうすれば良いかという点で、この道筋が不明確だとなかなか成功はおぼつかない。
そして、他の3つのポイントも、周囲の環境や情勢が変化していく中で、強みを活かして機会を勝ち取る道筋をしっかりと歩んでいくことのできる確実性を上げるためには欠かすことができない。
まずは、森選手のSWOTを思いつくままに挙げてみよう。
もう少し具体的に言うと、第一に走力。50m 5秒7というタイムは俊足で有名なソフトバンクの周東選手と同じで、プロ野球選手の中でも抜きん出て速い。
盗塁というのは、俊足に加えて、相手投手のクセを見て隙をつくことやフライング気味に見えるような素早いスタートの技術、そして減速しないでセカンドベースに到達するスライディングの技術など経験も必要なため、昨シーズンは盗塁4(失敗2)にとどまっているが、まだまだ伸び代はあるだろう。
そして、走塁も素晴らしい。ランナーとして二塁から一気にホームに還る際のサードベースを回るスピードなどは爽快感がある。
この俊足という森選手の特徴は守備にも生かされていて、彼の守備の指標UZRを見ても、守備範囲の広さという意味では既にチーム内で随一の遊撃手ということができるだろう。
肩も強い。
遠投120 mというのは凄いことで、分かりやすく言うと、横浜スタジアムであれば両翼(94.2m)に軽々と投げ込むことができ、一番深いセンター(117.7m)でもフェンスにダイレクトでぶつけることができる。
この守備範囲の広さと強肩は遊撃手に求められる二大要件なので、彼はその資質を入団当初から持っていると言うことができる。
バッティングでも、身体能力の高さは発揮されていて、高校時代の常総学院戦での逆転サヨナラ満塁ホームランやプロ初打席での巨人ビエイラからのツーベースヒットなど、長打力というと言い過ぎだが、いわゆるパンチのある打撃ができる。
解説の権藤博さんも、昨年、「この人はどんな球でもしっかりと強く振ることができる」と仰っていた。
走攻守の中で言うと、今のところ走力が安定して期待できる長所だと思うが、それでも、上に書いたように、大事なところで盗塁を決めるだけの経験や知恵そして技術はまだまだ足りない。
昨シーズン無理な姿勢からの無理な送球でファーストアウトどころかさらに先の塁にまで進めてしまうようなことが何度かあったように、エラーによる守備指標のマイナスは現時点では明らかに弱点だ。
遊撃手としての守備指標はチームの中では良い方だったが、それは広い守備範囲でマイナスを埋めているに過ぎない。
打撃に関して言えば、本人もコメントしていたように、良い時と悪い時の差が大きい。
昨シーズンも30打席ノーヒットという期間があったように、疲れや迷いから不調に陥りやすく、また、そこから脱出する自分なりのノウハウを身につけていない。
さらに言うと、左投手を苦手にしている点(昨シーズンは16打数1安打 打率 .063)もはっきりしたウィークポイントだ。
森選手は2019年のドラフト1位でベイスターズに入団したが、高校生の野手をドラフト1位で指名するのは筒香嘉智選手(2009年ドラフト1位)以来実に10年ぶりのことだった。
このことからも分かる通り、DeNAは将来チームの顔となり長年活躍してくれるような野手のスター、特に遊撃手を求めている。
ベイスターズ・ホエールズの生え抜きのショートと言えば、山下大輔さん、高橋雅裕さん、そして現在野手総合コーチを務める石井琢朗さんと言う名手の系譜がある。
大和選手は私も大好きな守備の名手だが、34歳という年齢を考えると、そろそろ緩やかな世代交代を考えなくてはならない。
そして、もう一つ、盗塁や一つ先の塁を常に目指した貪欲な走塁など、機動力野球のベースとなるような走力も喉から手が出るほど欲しい。
こうしたチームの求めるポイントとかなりのレベルで合致していることが森選手にとって大きな機会であることは間違いない。さらに言えば、その路線に沿った施策として、上述した石井琢朗さんがコーチとして復帰し、付きっきりで手取り足取り全ての面での指導を行ってくれるというのは彼にとって最大のチャンスだろう。
先輩の大和選手や柴田選手は森選手ほどの身体能力はないものの、プロ選手としての経験から来る安定感という意味では森選手はまだまだ遠く及ばない。
チームの方針として森選手を固定して経験を積ませるということがあっても、シーズン終盤の競った展開で緊迫した場面などでは、首脳陣が守備を固めるために先輩たちを遊撃で起用するという判断をする可能性はかなり高いと思う。
また、得点圏での大和選手の期待感などもまだ森選手に感じることはできない。
こうした勝負どころでのバッティングというのも、やはり場数を踏むことが必要なのだろうと思う。
こうしたベテランの壁がある一方、同期入団の田部選手や今年のドラフト3位で相川コーチと同じ東京学館高校から入団した粟飯原選手といった若手の成長もある。特に、粟飯原選手(身長182cm 85kg)が森選手とは違うタイプの大型遊撃手としてブレークするようなことがあると大きな脅威となる。
もう一つ、これは明らかに長所なのだが、森選手はイケメンである。
従って、世の中の様々な場所でヒラヒラと舞い踊っていらっしゃる綺麗なお姉さんたちも放ってはおかない。
となると、彼女達との交際にうつつを抜かすという状況が実は大きな脅威としてあるのではないかと私は危惧している。
森選手の強み、弱み、機械と脅威をそれぞれ挙げたので、次はこれらを組み合わせて、最初に述べた4つのポイントそれぞれの観点から彼をスター選手にしていく戦略を考えてみよう。
まず、「強みを活かして機会を勝ち取る」というポイントについては、広い守備範囲と強肩という高い身体能力を活かした守備の確実性を上げることが大事だろう。
昨日の守備でも、二遊間を抜けるだろうというヒット性のゴロの打球に後ろ向きでギリギリ追いつき、クルリと身体を回転させながらファーストに強いボールを送ってアウトにしたシーンがあったが、こうしたプレーを何度でもできるようにすることだ。
好プレーと暴投は紙一重。この紙一重の差をものにして、好プレーにできる確率を上げていくことが強みを活かしてチャンスをものにする最大のポイントだと思う。
もう一つの戦略として、出塁率向上と盗塁技術の習得をセットで目指して欲しい。
この二つが同時にできるようになれば、ともかく塁に出て、相手バッテリーを慌てさせ、隙あらば次の塁に進むと言うベイスターズに必要な戦術が可能となる。
そして、これができるようになれば、スタメンで使われる機会が増し、1軍のピッチャーのボールに慣れることができる。
過去の例を見ても1軍での累積打席数が一定以上にならないとなかなか打率を上げることは難しいので、出塁と足をキッカケにして好打者への道を歩むのがあるべき姿だと思う。
次に、「強みを活かして脅威をチャンスに変える差別化」としても、出塁率向上と盗塁技術の習得をセットで目指すという戦略は有効だ。これは、先輩のベテラン選手達も彼のライバルとなる若手選手達にもない大きなアドバンテージとなる。
バッティングで打てない時期と言うのは今年も来年もきっとあると思う。
そうした時期でもベンチが使いたくなるような分かりやすい特長をアピールすることが、脅威をチャンスに変える方法だと思う。
また、「弱みを補強してチャンスを掴む」ためにも、既にこのキャンプを通して実施しているように、格好の生きた教材である石井琢朗コーチにしがみついて、技術とプロ野球選手として必要なメンタルとを身につけることだ。
その内容は、守備の基本となる捕球動作、盗塁の技術、ボールの内側を叩くようなスイング、等々、日頃石井コーチの言っている指導を一つ一つクリアしていくことが唯一の道だ。
何度も書いているが、イチローさんの言う通り、「小さいことを積み重ねるのが、とんでもないところへ行くただひとつの道」であることは間違いないのだから。
最後に「弱みから最悪のシナリオを避けるため」の戦略を考えてみよう。
私の考える最悪のシナリオは次のようなものだ。
イケメンの森選手は今シーズンオフにもテレビ出演の機会があったが、こうしたことが今後ますます増えていき、そして某お台場のテレビ局の女子アナなどと交際するようになる。
二人っきりの楽しい時間を過ごしてはいるが、幸運もあって野球の成績はなかなか良い。
周囲ももてはやすようになり、鬼の石井コーチのしごきにはあまり力を入れなくなる。
そして、その後しっぺ返しが必ず来るのだ。
一度スランプに陥ったバッティングは、そこから脱出する術を知らない。バッティングの調子が落ちると、不安定な守備によるエラーという悪癖が出て、石井塾中退の身ではそれを矯正するだけの基礎技術という裏付けがない。周りの目も冷ややかなものに変わっていく。
こうなると全てを一度リセットして出直すような荒療治をして、本人が死ぬ気で努力するようなことでもないと、もうプロ野球選手として活躍することは難しくなってしまう。
さて、この最悪のシナリオを避けるための戦略とは何か?
私の答えは、石井琢朗コーチに、綺麗なお姉さんとの節度ある(野球修行の妨げとならないような)お付き合いの仕方についてもマンツーマンで手取り足取り教えてもらうことである。
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