ブルックス・クリスキーの第三のボール
3月13日に来日して自主隔離を経た後チームに合流していた新入団のブルックス・クリスキー投手の入団会見が今日行われた。
このブログでも何度か取り上げたように、クリスキー投手は28歳の右腕で平均150 km/hを上回るストレート(フォーシーム)と空振り率の極めて高いスプリットチェンジを軸としたパワーピッチャーだ。
昨シーズンのAAAでの三振奪取率は13.02という異例とも言えるほど高い数値を示すなど素晴らしい成績を残している。ただし、シーズン途中で昇格したMLBでは結果を残すことができなかった。
2021年シーズン
奪三振率・・・・・・・・・・13.02(AAA) 8.74(MLB)
1試合あたりの与四死球・・・ 4.45(AAA) 4.76(MLB)
1試合あたりの被本塁打・・・ 0.64(AAA) 5.56(MLB)
被打率・・・・・・・・・・・ .155(AAA) .347(MLB)
防御率・・・・・・・・・・・ 3.81(AAA) 14.29(MLB)
実は、クリスキー投手は2020年にも試合数はわずかだがMLBに昇格しており、その際は、以下のような数字を残している。
奪三振率・・・・・・・・・・19.64(2020MLB)
1試合あたりの与四死球・・・17.18(2020MLB)
1試合あたりの被本塁打・・・ 2.45(2020MLB)
被打率・・・・・・・・・・・ .200(2020MLB)
防御率・・・・・・・・・・・14.73(2020MLB)
異常に高い三振奪取率と異常に多いフォアボールが目を引く。また、この時点では、被打率は良好だ。
私の仮説は、2020年の異常に多い四球を減らそうとしたところ、ストレートが甘いコースに集まって痛打された、というものだ。恐らく全く的外れということはないだろう。
そして、クリスキー投手は昨シーズンの途中でヤンキースからオリオールズに移籍し、その後オリオールズからもリリースされることとなった。
この苦い経験から、彼は何を学び、どのような対策を立てているのだろうか?
その答えのヒントは今日の入団会見での彼のコメントにあるように思う。
平均150 km/hを上回るフォーシームと空振りのとれるスプリットチェンジのコンビネーションで三振の山を築いたクリスキー投手だが、彼自身、「2つの球種だけだとヤマをはられることがあった。対策として新しいボールを習得した」と言っている。
その球種とは何か、興味がわくが、今日のところは内緒だそうだ。
2021年シーズンのクリスキー投手は、全等級の54.1%を占めるフォーシーム、同じく39.7%のスプリットチェンジに加えてスライダーを投げているが、その割合は6.2%に過ぎない。
彼自身、「新しく習得したボール」と言っているのでスライダーではないのは確かだ。
クリスキー投手のボールの球速帯とコースの分布を下図に示す。
フォーシームの平均速度が95 MPH(153 km/h)で、スプリットチェンジが85 MPH(137 km/h)とおよそ15キロの球速差がある。
そして、スプリットチェンジは低めのボールゾーンに落とすことが多いのに対して、フォーシームは真ん中から高めのかなり甘いコースのなかでばらついている。
球速とコースにはっきりした傾向があるので、甘いストレートにヤマをはって打つというのは確かに難しくはなさそうだ。
以上のことを考えると、第三のボールとして有効な変化球はカットボールになるのではないだろうか?
フォーシームと同じ腕の振りで平均90 MPH(145 km/h)くらいのカットボールを投げることができれば、そして、それが打者の手元で小さく鋭く曲がるものであれば、コースが甘くてもそうは打てないだろう。
もっと大事なことは、バッターがフォーシームにヤマをはって打つことが難しくなるということだ。
斎藤隆投手コーチが、何かのおりに、クリスキー投手とはオンラインで密に連絡をとっていて、米国での練習もじっくり観ている、と言っていた。
ベイスターズには、カットボールを教えることにかけては評価の非常に高い大家2軍投手コーチがいるので、ひょっとすると、すでに通信講座で彼にカットボールを伝授しているのかも知れない。
大家コーチ自身、MLBでの経験が長いので、コミュニケーションの面でも問題なく効率的にノウハウを教えることができたのだろう。
今日の会見の冒頭、クリスキー投手は日本語で「私はクリスキーです。私はアメリカ人。応援お願いします」と言っていた。
「この機会を頂いたからには最大限の努力をして、一日も早くチームに貢献できるように頑張って参りたいと思います」という律儀なコメントもあり、ロメロと同様、ファンにもチームメイトにも愛される選手になってくれそうだ。
会談に同席した三原代表によると、「ファームの試合に数試合出場して、チェックすべきところをチェックした後に昇格について検討することになると思います。近いうちに登板機会が回ってくると思います」ということなので、試合での投球を見ることができる日も近そうだ。
開幕時点でオースティンとソトが不在なのは寂しい話だが、クリスキー投手が近いうちに登板して新しい変化球を披露するというのは序盤戦が楽しみになるような朗報だと思う。
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