mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

大敗?いや確信犯的な負けだから気にする必要はない



8月27日 対東京ヤクルトスワローズ 横浜スタジアム 4-16 負け


久しぶりにダムの放流のように打ちまくられた。被安打23、被本塁打7、失点16、ということでヤクルト打線の猛打爆発と言うことだが、ナニ、気にすることはない。


横浜スタジアムで観戦していたベイスターズファンの皆さんには申し訳ないが、昨日は3点取られて石田健大を引っ込めた時点で後はもう何点取られても良いというのがベンチの戦術的判断だったと思う。


ピタゴラス勝率で野球をやっているわけではないので、何点取られても一敗は一敗だ。勿論、興行的には大失敗だが、首位攻防戦とか言って勝手に盛り上がったのはメディアと久しぶりの快進撃で舞い上がった我々ファンだけだ。


ベイスターズ首脳陣はペナントレース終了時に最も良い位置にいること、そしてクライマックスシリーズで勝ち上がることを最大のファンサービスと考えて、目先の勝利の渇望を抑える采配をしている。


私は大差の敗戦にも関わらず、この意味で三浦監督の負けず嫌いが正しい方向を向いていると評価している。今日はその辺りのことを書いてみたい。


時間を少し戻そう。


試合が無いため作戦タイムとなる月曜日(8月22日)、この日までで今月は14勝2敗。何と勝率 .875は絶好調という言葉も遥かに飛び越えて、異常と言って良い状態だった。


武田信玄公曰く。


“勝負のこと、五分・六分・七分の勝ちは十分の勝ちなり。子細は八分の勝ちはあやうし。九分・十分の勝ち、味方大負の下作りなり。”


令和の言葉で言い換えれば、5分から7分の勝ちを目指すべきで、それ以上の勝ちは持続可能なものではなく取り返しのつかない敗北につながるので避けるべきだ、というような趣旨だろう。



月曜日の時点で、持続可能性という意味で最も危機的状況にあったのは言うまでもなく、連勝を重ねる中で酷使され疲弊した勝ちパターンの救援陣だった。


彼らの8月の登板数は以下の通り。


伊勢大夢 10試合
山﨑康晃 12試合
入江大生 7試合
エスコバー11試合


今月まだ一週間以上を残していた時期にこの登板数は危機的状況である。3月から10月までのシーズンを通じて50試合の登板が多い方と言われる中で、これらの数字はまさに異常事態だ。


言ってみれば、ずっと息を吸い込み続けていた状況であり、やはりどこかで息を吐かないことにはとてもじゃないが持続することはできない。


もう一つ別の話をしよう。


今月の快進撃で、首位ヤクルトと17.5ゲーム差から4ゲーム差まで追い上げる中で、1997年シーズンとの類似性がメディアや解説者達に指摘されることが多かった。


1997年、野村克也監督率いるヤクルトスワローズは開幕から独走し、一方、大矢明彦監督のベイスターズは6月末の時点で借金9、首位ヤクルトとは14ゲーム差の最下位だった。この状況が今年の同時期とほぼ同じであることが指摘その1。


そして、7月は13勝5敗、8月には20勝6敗と言う脅威的なペースで追い上げ、9月はじめには首位ヤクルトから2.5ゲーム差まで追い上げた。これも今年と酷似している。これが指摘その2。


しかし、1997年は、天王山と言われた9月2日の直接対決で石井一久投手(現楽天監督)のノーヒットノーランなどで連敗し、そこから急失速して、9月は9勝11敗、10月は3勝6敗と負け越し、最終的には首位と11ゲーム差の2位でシーズンを終えた。


まさに信玄公の戒めの通り、この年の夏のベイスターズの快進撃は持続可能なものではなく、「味方大負の下作り」であった。


シーズン終了後、大矢監督は退任し、翌年、投手コーチから昇格した権藤監督の指揮のもと38年ぶりの優勝を果たすのはご存知の通り。


1997年8月のベイスターズの月間勝率は .833なので、冒頭に挙げた今年の8月22日時点での勝率 .875はこれをさらに上回る異常事態だったことがわかる。


そして、重要な点は、三浦大輔、石井琢朗、鈴木尚典、斎藤隆、相川亮二と言う現在のベイスターズの首脳陣は全員が1997年のチームメンバーであり、その多くは当時の主力だったと言うことだ。


その彼らが、上述した今年と1997年の類似性に気がつかないはずはない。そして、今年こそはと言う情熱、今回は失敗しないと言う反省は誰よりも強いはずだ。


その彼らが22日の時点で選ぶことのできる戦術は2つ。


一つは、26日からの首位攻防戦に全力で臨んで、今度こそは連勝して一気に追いつく、と言うもの。そしてもう一つは、ゲーム差が4から一つ二つ増えても一旦体制を立て直して9月にピークを作り、そこで攻勢をかけると言う選択肢だ。


ところで、1997年と今年で大きく異なる点が一つある。


今年は現時点で未だ伸び代があると言うことだ。


野手では、コロナで離脱していたタイラー・オースティン、大田泰示、大和が今月中には本格的に復帰する予定で、9月には今年初めてベストメンバーを組める可能性がある。


また、投手では、これもコロナで離脱していた東克樹がファームで登板を重ね、早ければ来週にはローテーションに復帰するだろう。そして、トミージョン手術から復帰のタイミングでコロナによる離脱を余儀なくされた平良拳太郎もやっと実戦復帰し、何とか9月中には一軍合流できる見通しが出てきた。


脚の肉離れで離脱した田中健二朗も実戦に復帰しており、前腕部の故障で離脱したクリスキー投手も既に練習を再開している。


昨日はあまりに過酷な状況での初登板となってしまったがガゼルマン投手やコロナ離脱中の森原投手も調整が進めば勝ちパターンに準ずる活躍が期待できるだろう。


これら全てを考慮して、三浦監督以下ベイスターズ首脳陣は二つ目の選択肢、つまり、体制を立て直して9月に最後の攻勢をかける、と言う決断をしたのだ、と思う。


逆に、そうでなければ、26日の試合で大貫晋一がスリーランを打たれ0-3とリードされた6回表一死での宮國への継投、翌27日の石田健大が打たれて1-3と逆転された3回終了後の初登板となるガゼルマンへの継投は説明がつかない。



この采配から逆算すると、22日の時点で、ベイスターズ首脳陣は恐らく次のような戦術を採ることを決断したのだろう。


8月23日〜28日の6連戦の投手起用ルール(推定)


(1) 現状の先発ローテーション投手は一人も欠けることなく9月の過密日程にベストに近い状態で登板できるようにする。このため、先発投手は引っ張らず、早めに継投に入る。


(2) 勝ちパターンのリリーフは、確実に勝てる試合でしか使わない。従って、序盤にリードされた展開では、割り切って敗戦処理の投手をつぎ込んでしのぐ。


(3) 敗戦処理投手の登板が連続する場合には、復帰予定あるいは新入団のリリーフを前倒しで投入し、実戦での調整も兼ねてイニングを消費してもらう。


このルールを適用すると、序盤でリードし、かなりの確率で勝てると判断した火曜日と水曜日の阪神戦は今永と浜口を引っ張らずに6回で降ろし、その後は勝ちパターンをつぎ込んで勝ちに行くことになる。そして、実際にこの2試合は勝ちきった。


木曜日から金曜日の3試合は、いずれもリードを許した時点で先発を降ろして敗戦処理に入っており、そして、実際に全て負けている。この負けっぷりが、少々のビハインドでも勝ちパターンを起用して彼らの疲弊を生んだ今年序盤からの大きな改善点だと思う。


と言うことで、説明が長くなったが、昨日の大敗は三浦監督にとって覚悟の上のものだったと思うし、むしろ、私はそれを監督としての彼のレベルアップとして評価したい。


逆に、昨日の試合で16-4と大量リードされた時点で平田真吾を使う必要はなかったとすら思う。平田の登板数がさほど多くなかったこと、明日の試合に向けてヤクルト打線を沈静化させて終わりたかったこと、など理由はいくつか考えられるが。


日曜日もまた、今週の投手起用ルールを守って戦ってくれれば良いと思う。つまり、先発の京山が5回までにリードあるいは同点で凌ぐことができれば、勝ちパターンを投入して勝ちに行けば良い。


ただ、日曜の第三戦は今週の他の試合と少し異なる点があることも確かだ。


第一に、ヤクルトに3連敗するとゲーム差が4から一気に7にまで戻ってしまい、9月の攻勢は優勝ではなく2位死守と言うやや冴えない目標設定になってしまう可能性が高いこと。


そして第二に、翌日は試合がなく、また、勝ちパターンは全員3日間の休養が取れており、使っても問題ない。むしろ、明日も登板しないことになると最低でも5日間の間隔が空いてしまうこと。


こうして見ると、第三戦は僅差であればリードされていても逆転を目指して勝ちパターンを投入し、攻撃でも勝負手をうって行く可能性は十分に、少なくとも第一戦、第二戦よりは格段に高いと考えられる。


言い忘れていたが、大敗の中でも、牧と宮﨑に連続ホームランという光もあった。


牧はこれでハマスタ5試合連続ホームランで去年と並ぶ22号。9試合連続ヒットも記録しており、月間打率は3割を超えた。


宮﨑のホームランは9号で7年連続の2桁本塁打に王手をかけた。



最後に一言。


勝っても負けても(4-16の大敗でも)、楽しんで応援しよう。


今のベイスターズ首脳陣はバカではないどころか優秀なので、勝ちにも負けにも意味があり、それはシーズン終盤にまで生きていくはずだから。