雨の横浜でV字回復 強豪になって広島へ
9月1日 対中日ドラゴンズ 横浜スタジアム
勝 ベイスターズ 7 - 0 ドラゴンズ
勝利投手 フェルナンド・ロメロ(5勝7敗0セーブ)
敗戦投手 上田洸太朗(0勝4敗0セーブ)
本塁打 桑原将志4号(3回裏ツーラン)
先週末の首位攻防戦でヤクルトに3連敗した時にはチーム状態が底辺にあったベイスターズだが、週が変わってエース今永が力投してドラゴンズに6-0で圧勝したところから、ボールが硬い床板にぶつかって跳ね上がるようにV字回復の気配を見せている。
8月最後の2試合を連勝して18勝6敗の素晴らしい成績で終え、貯金9の2位で決戦の9月に入った。
9月最初の試合はドラゴンズとのカードの第三戦。中日キラーとなっているロメロ投手と若手ながら丁寧な投球で失点の少ない上田投手の先発で始まった。
今年のロメロはピリッとしない投球が多く、既に7敗を喫しているが、去年も絶好調だった9月に入って見違えるようなピッチングを見せてくれた。
ロメロといえば150キロを超えるツーシームの投球割合が多く、それが球速の割には被打率が高いイメージだが、この試合では最速155km/hのフォーシームで空振りを奪うシーンが多く見られた。
レビーラとビシエドの2人を三振にとったボールはいずれも高めの釣り球だったが、バックスピンの効いたフォーシームのノビのお陰で気持ち良い空振りを奪っていた。
こう言う力のあるフォーシームをある時は高めで見せ、またある時はインコース一杯に決める、と言うことができたために、ツーシームやチェンジアップあるいはスライダーと言った彼の持ちダマがことごとく活きた。
今日は6回、79球、被安打4、与四球1、無失点のQSだった。
雨の影響にも配慮して早めの降板だったが、中断を挟んでの難しいコンディションでこれだけの投球ができたと言うことは、得意の中日戦だったということを差し引いても、来週の巨人戦そしてその先に希望が出てきた。
久しぶりのホームでのお立ち台で、ミキティー、と叫ぶギャグを披露したのも彼らしい(何故今このギャグだったのかは不明。試合後のラジオ番組で庄司さんも不思議がっていたらしい)。
打線は再び活性化した。
14安打で7得点。桑原、佐野、大和、伊藤光、関根がマルチヒットで、大和は渋いヒット3本で猛打賞。休み休み起用すればまだまだチームに貢献してくれる。
試合を動かしたのは、3回裏、雨を切り裂いてセンター左中間スタンドに届いた桑原のツーランホームランだった。
ドラゴンズの先発左腕上田投手は若手ながら打者との駆け引きも上手く、制球も安定していて、さすがに前回登板では強打のヤクルト打線を5回無失点に抑えただけのことはある。
1回と2回の攻撃を見る限りは打てそうな気配がなかった。特に、右バッターの外角からストライクゾーン一杯に入って来るカットボールは彼独特の軌道で手を焼きそうに思えた。
しかし、3回の先頭打者となった伊藤光がこのボールを巧く追っつけて右方向に打ち返すと潮目が変わり、他の右バッター達も同じような打撃を量産して上田投手を攻略した。
まさに束になった攻撃を実践することができた。
桑原の打ったボールは真ん中高めに浮いたカットボール。これは上田投手の失投で、桑原らしく思い切りの良いスイングで仕留めた。深読みかも知れないが、上田投手自身、伊藤光に打たれたことの意味を理解してショックを受けたことがこの失投につながったように思われる。
4回にはヒットの大和を一塁に置いて再び伊藤光が同じ打ち方で今度は右中間真っ二つのツーベース。大和がファーストから激走して1点追加。
5回にはヒットとエラーでセカンドに進んだ宮﨑をソトがレフトフェンス直撃のツーベースで返して4点目。ライト岡林の返球が逸れた間にすかさず進塁した宮﨑の抜け目ない走塁も好感が持てる。
このところ、打者がファウルで粘る間にファーストランナーのソトが何度でも繰り返してスタートを切る姿や、この日の試合でやはりファーストに居たオースティンがランエンドヒットでサードまで進むなど、強打者達も例外なくチーム戦術の柱である積極走塁を見せていることが素晴らしい。
先週末のチーム状態からは考えられないほどのV字回復で、全盛期のソフトバンクホークスさんですか?と言うような強豪チームの野球を実践している。
次のヤクルトとの対戦で、このチーム状態のまま、今度こそ固くなって萎縮することなく自分達の野球を見せつけてくれることを心から祈っている。勝ち負けよりもまず先にそのことが必死に努力して来た選手達の最大の報酬だと思う。
7回には先頭の代打関根がドラゴンズの2番手谷元から鋭い打球をライト戦に放ってツーベース。そしてここでは好調の桑原にバントさせて一死三塁の好機を作って代打オースティンを起用する。
4-0でも、セーフティリードと言われる5点目(満塁本塁打でも追いつかれない)を貪欲に取りに行く姿勢もこれまでのベイスターズにはなかった強さだと感じた。
そして、オースティンはフォアボールで歩かされたが、続く佐野が7球目を一、二塁間に引っ張った時には、上述したようにオースティンがスタートを切っていて、ランナーをケアしてセカンド方向に動きかけ逆をつかれた二塁手がギリギリ追いつかずにヒット。
サードランナーの関根は悠々ホームに還って5点目、さらにオースティンはサードまで進んだ。
この走塁が活きて、続く牧のセンター前ヒットでオースティンが生還して6点目。流れるような攻撃だった。
さらに8回には、ダブルプレーで二死走者なしとなった場面で関根が俊足を活かしたファースト内野安打。そして桑原がセンターオーバーのツーベースでさらに加点。7-0とダメを押した。
強い!
先週末の試合は何だったんだ、と言う野暮なことを言うのはやめて、この強さを存分に発揮して9月も暴れ回ってくれることに期待しよう。
最後に、投手陣の復帰について嬉しい話題がいくつかある。
まず、脚の肉離れから復帰した田中健二朗がこの試合で3番手として登板し、ヒット一本を許したものの1回を無失点に抑えた。これから9月の過密スケジュールを迎えるにあたって、彼がブルペンに居てくれることは非常に有難い。
これまで左がエスコバー1人という時期が続いたが、タナケンと中継ぎに転向した坂本裕哉がいる事でワンポイントの起用も含め選択肢が増える。そして、これも故障から復帰した櫻井周斗がファームで状態を上げてきていることも朗報だ。
そして、なんと言っても嬉しいニュースはイースタンリーグ西武戦で平良拳太郎が先発し、3回を打者9人で完璧に抑え、しかも9つのアウトの内7つが三振と言うこれ以上ない好投を見せてくれたことだ。
平良投手は元々球速で支配するタイプのピッチャーではないが、この日はストレートがコンスタントに145km/h程度を記録し、球質も申し分のない空振りのとれるボールだった。そして、スライダー、カットボール、シンカーも両サイドに面白いように決まり、相手がファームのバッターであることを差し引いても素晴らしい出来だった。
手術前の好調期と比べても遜色のないピッチングなので、これから先、2回ほどファームで登板して投球数を伸ばす試運転を続ければ、いよいよ念願の一軍での先発復帰も今月下旬には見込めるだろう。
トミージョン手術後の長く苦しいリハビリを乗り越えた彼の努力が、連戦の中でチームが渇望する7番目の先発投手での勝利という最高の形で報われることを祈っている。
そして、この試合で4回から9回まで85球で投げ切って被安打3、奪三振9、無失点で完封リレーを完成させた上茶谷大河も今月の連戦のどこかで1軍の先発を務めることになるだろう。
既に調整の進んでいる東克樹、上茶谷大河、先日のファームの試合で好投した阪口皓亮、そして平良拳太郎の4人をどのような順番でどのタイミングで9月の連戦に組み込んでいくかが首脳陣、特に斎藤隆コーチと三浦監督の腕の見せ所だろう。
金曜日からは広島に移動してカープとの三連戦。
初戦は大の苦手としている大瀬良投手で、休養明けぶっつけ本番の登板でも容易ではない相手だ。しかし、彼に対しても中日戦のような強さを発揮して攻略することができれば、チームに本当の意味での勢いが出てくるチャンスでもある。
選手達同様、我々ファンもワクワクしながら見守ることにしよう。
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