様々なことを乗り越えて掴んだ勝利
9月6日 対読売ジャイアンツ 東京ドーム
勝 ベイスターズ 2 - 1 ジャイアンツ
勝利投手 入江大生(4勝0敗0セーブ)
敗戦投手 大勢(1勝2敗31セーブ)
セーブ 山﨑康晃(0勝2敗32セーブ)
今永と菅野のエース同士の投げ合いで引き締まった投手戦になった。
マツダスタジアムで27イニングス無得点で帰ってきたベイスターズ打線は、この日も初回ノーアウト一塁のチャンスを全く生かすことができず、ゼロ行進は今日も続くかと思われたが、3回表二死二塁で牧に久々のタイムリーが出て先制した。
今永も5回裏に吉川にソロホームランを打たれて同点に追いつかれたが、その後は佐野の好守備などに助けられ、7回1失点と試合を作った。
8回にはエスコバーが二死満塁のピンチを作るもなんとか切り抜けて同点のまま延長戦に入ると、10回、今度は入江が一死満塁と絶対絶命のピンチ。しかしここも後続を三振と外野フライに打ち取ってサヨナラ負けを回避した。
ピンチの後にチャンスあり。11回には、プロ入り後初の回またぎとなったジャイアンツのクローザー大勢の初球を佐野が思い切り振って左中間スタンドに放り込む決勝のソロホームラン。
そして、その裏は山﨑康晃が3連続三振に抑えて、2-1でベイスターズが勝利。
マツダでの負の連鎖を断ち切り、9連戦の最初を接戦でものにしたことは非常に大きい。攻守でチームを引っ張った佐野キャプテンに選手や首脳陣は勿論、全ベイスターズファンが感謝したに違いない。
(その1 今永昇太が乗り越えた哲学者の思考)
今日の今永は球威こそいつも通りだったが、細かな制球はもう一つだったように感じた。
しかし、気迫とボールの力で吉川のソロホームランによる失点のみに抑え、7回、108球、被安打6、与四球1、奪三振5、1失点と言うHQSにまとめたのはさすが。
吉川に打たれたボールは外角低めをねらったカットボールで、甘いと言うほどでは無いが、キャッチャー嶺井の構えた位置よりはやや真ん中寄りに入ってしまった。まあ、これは打った吉川を誉めるべきだろう。
菅野との投げ合いと言うことが良い方向に作用した面もあった。
このところ、今永のピッチングは安定しているが、その背景には自分を追い込みすぎない事によるメンタルの安定があると思う。
この試合でも、3連敗の後で意識したのではないか、と報道陣に聞かれて、
「そういうことを考えて試合に臨むと、これまでの経験上では良かった試しが一度もない。考え過ぎず、ただ試合に没頭すればいい」
と答えている。
今までだったら、必要以上に一人で責任を背負って、哲学的コメントなども発していたところだと思うが、こう言うことをサラッと言えるようになった。
前腕肉離れによる出遅れ、ノーヒットノーラン、その後の不調、ご尊父の逝去、8月5勝の快進撃など色々あった今シーズンだが、それらを通じて、投手として、いや人間として大きくなったと感じさせる。まさに、エースという名前にふさわしい存在になった。
(その2 牧秀悟が乗り越えた無得点の壁)
9月2日、カープとの初戦の4回表に先頭打者としてヒットで出塁した牧は大瀬良の素早い牽制に反応して帰塁することができず、タッチアウトとなった。
その後、宮崎の四球、楠本のヒットと続いただけに、天敵の大瀬良投手から得点を挙げるチャンスを潰してしまったという残念な気持ちが残った。
そして、この無念はマツダでは一度も晴らすことができずに、33年ぶりの同一カード3連続完封負けを喫することとなった。
牧は終わったことをあまりクヨクヨしないプロ向きの性格だと言うが、それでも、あの牽制アウトの後、力みが感じられたように思う。
以前、一死満塁のチャンスで3-0から山を張っていたストレートを果敢に打ちに行って、しかしボテボテのピッチャーゴロで併殺に倒れてしまった試合があったが、あの後も同じような力みがしばらく残った。
この時ばかりは、牧自身、夜、目を瞑るとそのシーンがハッキリと浮かんでくる、と言っていたので余程悔しかったのだろう。
月曜日の休みでリフレッシュし、東京ドームに移って臨んだ試合でやっと彼らしい勝負強いバッティングを見せてくれた。
3回表二死二塁の場面で好調の菅野投手にあっさり2球で追い込まれ、その後はファウルで粘る。
0-2のカウントのまま迎えた5球目がやや高く、逆らわずにバットを出してセンターの右に打ち返した。
先週木曜日以来となる待望の得点シーンをベイスターズファンに見せてくれた。
この長い無得点の連鎖を断ち切るのは中心打者の誰かだろうと思っていたが、それはやはり牧だった。8月以来バッティングの状態は上がって来ていると思うので、妙な呪縛から解き放たれて、これからツーベースを量産した昨年同時期のような活躍を見せて欲しい。
(その3 エスコバーが乗り越えた待球策の罠)
エスコバーは鉄腕だ。連投が続いても投げ抜いてくれる。
しかし、逆に、登板間隔が空くと制球が安定しないという癖も持っている。
この日の登板は8月31日以来、中5日のブランクがあり、やはりこのクセが出ていたように感じた。
8回裏に2番手として登板し、先頭のウォーカーはセンターフライに打ちとったが、続く丸にフォアボール、そして中田翔にはデッドボール。
岡本を三振に打ち取ってツーアウトにしたが、若林にもフォアボールを与えて、ノーヒットでツーアウト満塁のピンチとなった。
ここでジャイアンツベンチはホームランを打っている吉川に代えて中島を打席に送った。
2-2のまま中島はファウルで粘る。
これはエスコバーが苦手とするパターンで、痺れを切らしてフォアボールという結末が頭をよぎった。同じように感じていたベイスターズファンも多かったと思う。
しかし、押し出しで失点というこの状況では逆に腹を括りやすかったのかも知れない。
エスコバーと嶺井のバッテリーはまん真ん中のストレートを何球でも投げ続けると言う愚直な戦術で待球策に対抗した。
そして8球目、何度目かの真ん中のストレートを中島が打ち返したが、155km/hのエスコバーのボールの力が優ってセンターフライに打ち取った。
そう、きっとこれで良いのだ。
(その4 入江大生が乗り越えた絶対絶命のピンチ)
入江大成は9月2日のカープ戦で0-1と1点ビハインドの8回裏に登板し、西川のツーベースとマクブルームのタイムリーで久しぶりに失点した。
このところ三浦監督の信頼を勝ち取って、ほぼ勝ちパターンと言って良いような起用が続いている。そして、接戦の緊迫した状態での度重なる登板は2年目の若手投手に目に見えない疲労を蓄積させているのだろう。
この日の試合では、10回裏に登板し、先頭の重信の内野安打で出塁を許し、中田翔のピッチャーゴロで一死二塁。
一塁が空いているので、続く岡本は申告敬遠。ここまではある意味定石通り。
しかし、次の若林をフォアボールで歩かせて一死満塁のピンチにしてしまったのが大変まずかった。8回にもエスコバーが若林を歩かせているが、この時と同じ3-1とボール先行となってからの四球。
ベイスターズの柴田にその傾向があるように、必ずしも恐いバッターというわけでもないのにボール先行になって歩かせてしまうという打者のタイプがあるように感じる。
しかし、入江はここから踏ん張った。
7番北村に対して、1-2とピッチャー有利なカウントを作ってからの5球目を絶妙な高さから落ちるフォークボールで空振り三振に打ち取った。
三振かポップフライ以外だとサヨナラの可能性が高い緊迫した場面で狙って三振が取れたことは、入江の抑えとしての適性を感じさせるものだったし、彼のレベルがまた一つ上がったことの証明でもあった。
二死満塁とピンチはまだ続き、次の大城の打席ではフルカウントとなってしまった。
押し出しでもサヨナラと言う絶対絶命のピンチ。
入江はここで腹を括り、腕を振って高めのストレートを投げ込みセンターフライに打ち取って危機を脱した。
この1イニングで勝ちパターンのリリーフとしての経験値がグンと上がるような濃密な体験だった。入江はこの経験を明日からの連戦で活かしてくれるだろう。
(その5 佐野恵太が乗り越えた15打席ノーヒットの焦り)
マツダでの屈辱的な3連続完封負けで一番責任を感じていたのはキャプテンの佐野恵太だっただろう。
マツダの試合では、レフトオーバーになりそうな打球をなんとか追いつくシーンが2度ほどあり、守備面での貢献は見られたが、本人はやはり打撃で本領発揮出来なかったことに忸怩たる思いがあった筈だ。
カープ戦では、初戦の第一打席でヒットを打ったのみ。その後、今日の第4打席まで15打席ヒットが出ていなかった。
ヒットのでないバッターはどうしても焦る。そして、その焦りが微妙にタイミングをずらす、さらに焦る、と言う悪循環に陥るのが常だ。どこかで断ち切らなくてはならない。
今日の試合でも、守備のファインプレーがあり、5回裏吉川のソロホームランで同点に追いつかれ、その後さらに二死二、三塁と追い詰められた状況で丸の浅いレフトフライに飛び込み、グラブの先端ですくい上げて捕球した。
原監督がリクエストを要求するほどギリギリのプレーだったが、判定変わらずスリーアウトチェンジ。佐野がとっていなければ2点入って、1-3となり、菅野の出来を考えれば勝機はまずなくなると言うビッグプレーだった。
しかし、佐野はやはり打ってチームを勝たせたかっただろう。
11回表、前の回をわずか6球で三者凡退に抑えたジャイアンツのクローザー大勢が初めての回跨ぎでの登板。多くのファンがこの回も完璧に抑えられてしまうと言う嫌な予感を持った。
そして、山﨑康晃以外にその裏を任せられるピッチャーがおぼつかないので、この回に得点しないと勝機は無いとも皆感じていた。
一死走者なしで3番佐野が打席に入る。
そして、その初球、変則右腕の153km/hのストレート、真ん中だが低めのボール、難しいボールだ。
迷うことなく振り抜くと、ライナー性の打球は左中間スタンドに吸い込まれていった。
決勝打となるソロホームラン。キャプテンの意地と集中力が15打席ノーヒットの負の連鎖を断ち切り、チームを勝利に導いた。
「もう投手陣が本当に頑張ってくれていたので、体がちぎれるくらい思い切り振ってやろうと思った。完璧です!」
今までで最も大人数でにデスターシャにチームのみんなの想いがこもっていた。
明日は、山崎伊織と濵口遥大の先発だ。
この勢いを止めずに打線には苦手としている山崎伊織を今度こそ攻略してくれるものと期待している。
そして、ハマちゃん、頑張れ。負けんなよ!
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