mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

丁寧な野球だけが奇跡の望みをつないでくれる



9月13日 対中日ドラゴンズ バンテリンドームナゴヤ


勝 ベイスターズ 1 ー 0 ドラゴンズ


勝利投手 R.ガゼルマン(1勝0敗0セーブ)
敗戦投手 髙橋宏斗(5勝6敗0セーブ)
セーブ 山﨑康晃(0勝2敗33セーブ)


今朝のネットニュースに斎藤隆投手コーチの談話が掲載されていた。


ベイスターズの今の状況を踏まえてこれからの戦いについて語った次のような言葉だ。



“奇跡というものは、起こそうとして起きるものではない。


確かなのは、雑なことをしている限りは決して起きないということ”



私はこれを読んで、なぜかエセ関西弁で、「よう言ってくれはった!」と叫んだ。


そうだ。丁寧な野球を続けて行くしかない。


起死回生の一発なんてないのだ。


ひたすら丁寧なプレーを続けて行くことしか奇跡の逆転優勝の可能性をゼロにしない、あるいはゼロになるのを最大限に遅らせる方法はないのだ。


そして、今夜の試合は、斎藤コーチの言葉を体現するようなプレーが随所に見られた。


ベイスターズは、今シーズン途中入団して一度リリーフで炎上してから急きょ配置転換されたガゼルマン投手が初先発。


ガゼルマン投手は8月27日のヤクルト戦で4回に登板し、オスナのスリーランを含む4失点で1イニングのみで降板したが、よほど悔しかったのだろう。無言で自分のユニフォームを噛みしめていた。


9月1日に田中健二朗と入れ替わりで登録を抹消され、その後はファームで調整していたが、ファームのクラスター発生のために登板機会のないまま再登録され、ぶっつけ本番で先発の大役が回って来た。


ファームでは恐らくNPBのボールに慣れ本来の制球力を取り戻すことや、クイック、牽制など日本のプロ野球で生き残って行くために必須のスキルを急ピッチで身につけることに時間を費やしたのだろう。


そして、彼は雪辱を期してマウンドに立った。



今日のガゼルマン投手は、日本のプロ野球のバッターが全員村上宗隆であるかのように慎重かつ丁寧に低めにボールを集めていった。


彼の持ち味は、140キロ台後半のツーシームあるいは高速シンカーと呼ばれるボールとスライダーのコンビネーションでゴロアウトを重ねることだが、非常に安定した制球を見せてくれた。


特にシンカーは左右のコースの低めにかなりの精度で投げこめていた。これはなかなか打たれないだろう。最近、相手が中日打線なのでとか言うコメントを時折見かけるが、そんな両者に対して失礼な話は的外れだ。


成長著しい若手の岡林や土田がいて、リーグ2位の高打率を誇る大島や恐らくセリーグの捕手では打力随一と言って良い木下がいる。そして、調子に波はあるものの、ビシエドとマルティネスという長打力のある外人選手もスタメンに入っている。


こうした面々をしっかりと抑えてくれた働きにただ敬意を表するべきだと思う。


2回には、ポテンヒットと四球で二死二、三塁のピンチを迎えたが、土田のセーフティスクイズを自身が落ち着いて処理しサードランナーをホームでアウトにした。


3回には大島を際どいコースで見逃し三振に打ち取り、三者凡退で抑えた。


そして、6回には、死球で出塁したファーストランナーの岡林を牽制で刺してスリーアウトチェンジ。これも丁寧な野球に対するちょっとしたご褒美だろう。


7回、99球、被安打3、与四死球2、奪三振4、無失点の素晴らしいHQSを達成した。


おめでとうございます。次回の登板も大いに期待しています。


しかし、ベイスターズ打線は、ドラゴンズの若きエースに台頭しつつある髙橋宏斗投手に全く手も足も出ず、5回までパーフェクトに抑えられていた。


6回には森敬斗が四球を選び、かろうじて出塁したが、ノーヒットノーランは継続中。


そして7回にゲームは動いた。


先頭の2番関根が髙橋投手のスプリットにヤマを張っていたようにすくい上げると、これがセンター前のフライとなり、岡林が突っ込んでスライディングキャッチしようとしたがわずかに及ばずボールは後方へ。この間に関根はセカンドまで進んだ。


続く佐野はこのところ不調だが、2-2と追い込まれてからファウルで粘り、7球目の外角低めの変化球を体勢を崩されながらバットの先で引っ掛けた。


手首だけで一、二塁間の方向に無理矢理角度をつけた技アリの一振りで、打球は深い位置に達するセカンドゴロ。関根がサードに進むには十分な間を作り出した。


4番牧は申告敬遠で、このところ不調な宮﨑が打席へ。


宮﨑は2球で追い込まれてしまったが、1-2からの4球目を狙っていたかのように引っ張ってサードへのゴロ。関根はスタートを切る、


ここで、サードの阿部が関根のスタートを見て、一瞬、5-6-3のダブルプレーでチェンジを狙えるか一瞬だけセカンドを見遣った。この一瞬の隙をついて関根が生還。両チームが喉から手が出るほど欲しかった1点をベイスターズが手に入れた。


結局、今日の試合のヒットは関根のこの一本のみ。それを佐野と宮﨑の黒子に徹したようなチームバッティングで先制点につなげた。全く無駄のない、まさに丁寧な野球の結実だ。


ガゼルマンが7回で降板した後、2番手は伊勢大夢だったが、どうも今日の調子はもう一つだった。


8回先頭の溝脇への一球目は真ん中高めの甘いストレート。これは幸い見逃してくれたが、2球目をレフトに運ばれて、これがツーベースヒットとなった(セカンドセーフに対して三浦監督がリクエストしたが判定は変わらず)。


土田が送って一死三塁のピンチとなったところで、代打三好はサードゴロ。先ほどのベイスターズの攻撃と重なるような局面だったが、宮﨑は全く迷うことなくホームに送球してタッチアウト(これも立浪監督がリクエストしたが判定変わらず)。


捕手の伊藤光はコリジョンルールを遵守して走路を空けて宮﨑の送球を捕球し、横からタッチしたため際どいタイミングとなったが、衝突を避けるというコリジョンルールの本来の意義を踏まえたフェアで丁寧なプレーだったと思う。



最近、走路に送球が逸れて(あるいは意図的に逸らせて)捕手が走路を防ぐ形になってアウトにするというプレーをよく見かけるが、それらとは一線を画すプレーだった。


誤解のない様に言っておくが、ルールに則っている以上、こうしたプレーに不満は無い。むしろ、走路上に逸れるボールを意図して投げられるとすれば、それはある意味プロらしい技術だと思う。


不満があるとすれば、捕球のため止むを得ない場合を除き、という曖昧な例外を認めているコリジョンルールそのものに対してだ。


ともあれ、これで二死一塁となったが、ファーストランナーの三好に盗塁を決められ二死二塁と再び得点圏に走者を背負った。


しかし、ここでも伊勢が鋭くターンして牽制球を送り、三好の帰塁が間一髪まにあわずアウト。


このプレーも、伊勢の牽制の速さと正確さ、そしてベースカバーに入ったショート森の素早い動きと正確なタッチによって初めて成立したものだ。どんな些細なミスや遅れがあってもセーフになっていただろう。


こう言う丁寧なプレーを続けていけば強くなる。


奇跡が起きるかどうかは神のみぞ知るとしか言いようがないが、たとえ今年最高のゴールを迎えられなくても、間違いなく来シーズンのベイスターズは格段に強くなっていることだろう。


しかし、今は、今を精一杯戦うことだ。


それだけで良い。いや、それしか無いのだ。


“今を戦えない者に、次とか来年とかを言う資格はない”


ロベルト・バッジオ