mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

夢は近づくと目標に変わる



2021年10月28日、シーズンを通して最下位のまま最終戦が終わった日の自分のブログを読み返してみた。


そこには、次のようなことが書かれていた。


”この試合を最初から最後までテレビで観ながら、私はゆっくりと夕陽が沈んで行くのを見つめているような気がしていた。


牧の2本のヒットも太陽が地平線に沈む直前の薄暮の輝きのように思えた。


そして、9回二死から代打で登場した神里がインコースのストレートを見逃して試合終了となった時、完全な闇が訪れたことを悟った。


そう、これが我がベイスターズの2021年シーズンのラストだった。


いいだろう。


来年再び朝日が昇るのを見るためには、一度、しっかりと暗闇に沈む必要がある。


その暗闇の中でチームのメンバーは全員自らを徹底的に見直し、必死の努力をしてくれるものと、私は信じて疑わない。


敗北したところから、すべてが始まる。それが敗北の深い意味である。 石原吉郎”





あの時、1年後にクライマックスシリーズに出場することを願ってはいたが、それは願望であり予想ではなかった。


そして、CSから日本シリーズを勝ち抜いて日本一になるというのはただ遠いところにある夢でしかなかった。


あの日から約1年、その間にいろいろなことがあった。


FAを控えた宮﨑敏郎選手と三嶋一輝選手の複数年契約による残留決定。


既に複数契約を結んでいたネフタリ・ソト選手に加えて、タイラー・オースティン選手とエドウィン・エスコバー選手も複数契約を結んで残留が決まり、こちらは単年ながらフェルナンド・ロメロ投手も残留。


レジェンドと言われる1998年優勝時の球団OB、石井琢朗、鈴木尚典、斎藤隆、相川亮二4氏のコーチ就任。そして、投球メカニズムの理論と指導に関しては超一流の小谷正勝コーチングアドバイザーの入団。


日本ハムから大田泰示選手、そして楽天から藤田一也選手という優勝経験のある頼れるベテランの加入。


150キロ台後半の速球とスプリットチェンジでMLBと3Aで驚異的な奪三振率を記録したブルックス・クリスキー投手の入団。


年が明けて2月1日から始まった春季キャンプでの石井琢朗コーチ主導による猛練習がベイスターズのキャンプは緩いという風説を完全に覆した。



にも関わらず、エース今永昇太の左前腕部肉離れによる開幕直前の離脱や主砲オースティン選手の右肘クリーニング手術によるキャンプ最終盤での離脱など例年通り様々な不運が重なって負けが込んだシーズン序盤。


その後、コロナ禍でのクラスタ発生など調子が出ないまま夏に入ったが、7月からチーム状態は徐々に上向き、8月には18勝6敗、そして球団記録を更新するホーム17連勝など他を寄せ付けない強さを発揮した。


この時期は、先制点を取られてもすぐに取り返せるという自信があったし、実際、そうなる試合が多かった。そして、この自信は投手陣の余裕にもつながり、先発、リリーフともに被打率や防御率が大幅に改善された。


あの暗闇の中で球団フロントが、首脳陣が、そして個々の選手が工夫を凝らして努力を続けた結果がやっと誰の目にも明らかな形で実を結び始めた。





”夢は近づくと目標に変わる”


というのはイチローさんの有名な言葉だが、これは今のベイスターズにもよく当てはまると思う。


1年前には夢でしかなかった日本シリーズ出場、そして日本一というはるか彼方のゴールまでの道のりは今やはっきりと見えている。


CSファーストステージで2勝、ファイナルステージで4勝、そして日本シリーズで4勝することでそのゴールにたどり着くことができる。


もちろん容易な道ではないし、8ゲーム差での2位という現実を考えれば可能性は大きくないのかも知れない。しかし、それはもはや夢ではなく、くっきりと姿の見える目標になった。


今日の報道でも、今永昇太が、宮崎敏郎が、そして桑原将志がそれぞれの表現で同じことを言っている。


”当たり前のことを当たり前にやること。普段の野球をすることのできるチームが勝つ。”


そうだ。


奇策なんか必要ない。


堂々と自分達の野球をしっかりやり切れば良い。この言葉の背後には、あの暗闇の中でモゾモゾと動き始めた一年前から積み上げてきたものに対する自信があるのだ。


そうだ。


この1年でベイスターズは以前よりずっと強くなったのだ。


あの8月末の3連敗や村上宗隆選手に日本人最多となる56号を許した最終戦を思い出せば、まだまだヤクルトとは差がある、という人が多いだろう。


確かにその通りなのだろう。しかし、今のスワローズとベイスターズの差は、1年前のベイスターズと今のベイスターズの差よりもずっと小さいと感じる。


このチームはそれだけの進化を遂げたのだ。


あともう一歩。


もう一歩で頂点に手が届く。


目を瞑れば、桑原が、今永が、佐野が、牧が、宮﨑が、ソトが、そして星のマークを胸につけたすべての選手たちが緑の芝の上で躍動する姿がはっきりと浮かんでくる。


そうだ。


この1年間のすべての努力と精進はこれから始まるポストシーズンという最高の舞台を楽しみ、皆が輝くためにある。