mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

失敗しても良い場所としてのフェニックスリーグ



10月27日



【フェニックスリーグについて】


このところ宮崎で行われているフェニックスリーグでのベイスターズの試合をインターネット配信で観る機会が多い。


みやざきフェニックスリーグは日本におけるプロ野球の「教育リーグ」として位置付けられているもので、パンフレットによると、その趣旨は次のようなものだ。


”過ぎたシーズンを反省して、チーム及び個人の課題を明らかにし、翌シーズンに向けてその克服を目指すのと併せて、公式戦で出番が少なかった若手選手を積極的に起用し、試合を通じて若い選手を育てることを大きな目的としている。”



「反省」「課題」「克服」といった言葉が並び、出番が少なかった若手選手を積極的に起用という姿勢からもわかる通り、重要なことは勝ち負けではなく、若手の選手たちがどれほど課題を浮き彫りにすることができるか、そして、それらを克服するためのきっかけを掴むことができるかという点が眼目である。


このことは、フェニックスリーグがスポーツエンターテインメントつまり優れたプレーと緊迫した勝負で観客を魅了するべく行われる興行としての1軍の試合とは大きく異なるものであることを意味している。


従って、インターネット配信とは言え、フェニックスリーグの試合を観る我々は観戦モードを切り替え、エンターテインメントではなく、父兄参観あるいは子供のピアノの発表会のような意識で見守る必要がある。


これまでのところ、ベイスターズのファームチームは大きく負け越しているが、それはこの際問題ではない。


反省と課題という意味では参加14チーム中最も多くの収穫があったのではないだろうか?
いや、現時点で収穫と言ってしまうのは恐らく楽天的すぎるだろう。


負け続けているということ、野手はエラーが多く得点圏で打てず、ピッチャーは与四球が多くてボールを置きに行って打たれるということ、は明らかな失敗だ。


こうした失敗に対して課題を明確にして反省し、克服に向けた具体的な改善の道を見出すことができて初めて収穫ということになると思う。



【今日の試合で収穫はあったか?】


今日の試合はソフトバンクホークス戦で、結果から言うと2-6で敗れた。


守備では3人の投手が合計9つのフォアボールを与え、野手は三つのエラーを記録した。


中でも、先発の高田琢登投手は4回、90球、被安打5、被本塁打1、与四球5、4失点と言う結果で反省すべき点が多々あったように思う。


全体的にボールが高く、かつ、右バッターのインコース(左バッターのアウトコース)の直球がシュート回転しながら抜けていくボールが多かった。


5つのフォアボールは厳しいところを狙って攻めた四球ではなく、明かにボールとなる抜けた投球を多発してのものだ。


私は素人だが、これは投球メカニック的に問題がある可能性があると思う。


下半身をうまく使うことができず上体に力が入って開きが早く、右腕の振りが相対的に遅れるために抜けるボールが増えるように思えるのだ。


しかし、全ての投球がこうなっているわけではない。中にはバランスの取れたフォームからコースにピタリとおさまるボールもある。


恐らく、高田投手はブルペンでの投球練習ではもっとバランスの良いボールを投げているのではないだろうか?


今日の試合で言うと、3回表ソフトバンクの先頭打者佐藤直樹選手に高めの初球をレフトスタンドにホームランされてから投球のリズムがおかしくなった。


恐らく、フェニックスリーグで浮き彫りにすべき課題とは、例えばこう言うことなのではないだろうか?



ホームランや死球などでショックを受け精神的な余裕がなくなったところでピッチングのリズムが狂うと言うピッチャーには、まず、「ホームランや死球などでショックを受け」た後も投げさせてもらい、そこで四球を連発するなり打ち込まれるなりの失敗を経験して、その次に改善策に必死に取り組むと言うプロセスが必要なのだろう。


一言でいえば「試合途中での修正力」と言ったものは、実戦の経験なしにはなかなか身につけていくことができない。


その意味では、今日の試合は彼にとっては財産となる可能性がある(そうではない可能性も同じくらいある。全ては彼次第だ)。


野手では、外野が本職の蝦名達夫と内野が本職の知野直人がポジションを交換して出場していたのが印象的だった。


スタメンでは蝦名がサードで知野がライト、そして試合途中でポジションを交換した。



蝦名がサードを守る意図は良くわかる。


今年も何度かあったが、宮﨑敏郎が出場できない場合にサードの代役が柴田竜拓だと守備は問題ないものの打線の迫力が大幅に低下してしまう。そこで、(好調時は)バッティングの良い蝦名にサードを守らせることができると戦術の幅が広がることになる。


今日の蝦名は三塁守備で一つ素晴らしいファインプレーを見せた。三遊間を抜けるかと言う鋭く低いライナーにぎりぎり飛びついて捕球したのだ。


しかし、エラーもあった。一死二塁でサード正面のゴロをファンブルしてしまいオールセーフになってしまった。結局、この回は二つのフォアボールとエラーが続き、その後の犠牲フライで1点を失うという流れの悪い失点になった。


蝦名は学生時代にサードを守っていたそうで、今日のファインプレーでも明らかな通り身体能力と反射神経と言う意味では十分こなせるだけのものを持っていると思う。


むしろ、ランナーが出て複数のポイントに気を配りつつ様々なシナリオに備えながらアウトにできる打球を確実にアウトにしていく落ち着きのようなものが課題なのだろう。


これも、勝敗がメインになってしまうシーズン戦ではなかなか浮き彫りにすることが難しい課題だ。



【フェニックスリーグを観て辛さを感じる自分への独り言】


スポーツエンターテインメントとして楽しませてもらうことに慣れた我々ファンが教育を目的としたフェニックスリーグを観ているのは辛くなることが多い。


一軍では考えられないような凡プレーやミスに苛立つことも度々ある。


しかし、ここで明らかになった課題を若い選手たちがどのように克服し一流選手に上り詰めていくのか、そのプロセスを見続けるのもまた我々ファンの楽しみに違いない。


中畑監督時代のあの日、一軍公式戦で一塁ベースカバーに入った宮﨑敏郎がよそ見している間に送球が目の前を通り過ぎていくと言う大失態を犯して即日2軍降格となり、その年は決して一軍には戻ってこなかったことを思い出す。



あれから彼は誰かが無理矢理やめさせないと終わりにしないほど守備練習をして、ゴールデングラブを受賞するほどになったではないか。


私も、目の前の試合を見てイライラせずに、これからの伸び代の大きさに期待を馳せることとしよう、



“若い人には、失敗してもいい場所が必要だと思う” 


野茂英雄