mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

復活に向けたそれぞれの道(4)  あのストレートを取り戻せ:東克樹の場合



【2021年の復帰まで】


昨年9月末に東投手が一軍で復帰登板した夜、私は次のように書いた。


“東投手が去年(2020年)の2月20日に左肘のトミージョン手術を受けてから、私はずっと待っていた。


今年になってキャッチボールを始めたというニュースを見た。


その後も時々Twitterを覗いて近況を知った。


4月21日 手術後はじめて捕手をすわらせて投球しました。


4月24日 捕手の方にすわっていただいて初めて変化球を投げました。


5月9日 初めて打者に投球しました。


7月11日 ようやく実戦(二軍戦)に復帰しました。


徐々に復活しつつあることを知り嬉しかった。


“捕手をすわらせて”、から“捕手の方に座っていただいて”、に変わったことも嬉しかった。


投球以外にも成長しているのだろうと思った。



そして今日、東は2年ぶりに一軍のマウンドに立った。


青木への2球目は外角低めへのスライダーだったと思う。


そんなに甘いボールには見えなかったが、青木が一枚上だった。


流し打ちの打球は風にものってレフトスタンドに吸い込まれて行った。満塁ホームランだ。


ここで東は降板。これが2年ぶりの彼の晴れ舞台だった。


この短い時間の出来事は、私の心のヨロイを突き抜けて、子供の頃と変わらないむき出しの自分自身に突き刺さった。


立ち直るには、いつものように、2時間程度の有酸素運動で汗をかき、プロ野球スピリッツでかたきをとり、そして酒なども飲むことが必要だろうと思う。


しかし、私には、このショックよりもずっと大きな喜びがある。


そうだ。東克樹がとうとう帰って来たのだ。


そして私は今、東克樹が帰って来てくれたことの喜びを噛みしめる日々を送っている。”



【2022年の挫折】


昨シーズンに実戦復帰し勝利を挙げたことから、東克樹にかける首脳陣やファンの期待は大きかった。


オフの期間に”お尻プリプリ計画”と称して臀部を中心とした下半身の強化に取り組み、2月のキャンプで見た時には下半身が見違えるほど逞しくなっていた。


下半身の強化は体重移動のスピードを上げ、リリース時に強固な壁を作ることでストレートのスピードアップをもたらす、筈だった。


そしてもう一つ取り組んだのは2種類目のチェンジアップ。一緒に自主トレを行ったドラゴンズの笠原投手から習った東投手本来のものよりも1段階遅いチェンジアップだ。


スピードアップした速球と遅いチェンジアップのコンビネーションは打者との対戦に有効に機能する、筈だった。


この間に東選手自身も結婚してお嬢さんが産まれると言うプライベートでの変化もあり、本人の自覚も十分だったと思う。


そして、開幕直前のエース今永昇太の故障離脱(後日、左前腕部の肉離れという稀な怪我であることが判明)に伴い、押し上げられるような形ではじめての開幕投手となった。


しかし、人生というのは思うように行かないし、勝負ごと(ゼロサムゲーム)というのは常に残酷なものでもある。


3月25日横浜スタジアムでの開幕となった広島戦。


東投手は5回、85球、被安打8、奪三振2、与四球2、4失点(自責2)という結果を残し、指の皮がめくれるというアクシデントにも見舞われ降板した。


バックの複数のエラーがあったとは言え、カープ打線に完全にとらえられており、極めて不本意な内容だったと思う。



その後、指の問題が解決して復帰するも結果は出なかったが苦しみながらも6月23日の巨人戦で5回2/3を3失点でまとめ初勝利。


そして、7月7日のドラゴンズ戦で勝敗はつかなかったものの8回、109球、被安打3、与死球1、失点0と言う好投を見せた(試合は12回まで0-0のまま引き分け)。


ストレートの球速はまだ145km/h程度までだったが、緩急を活かしたピッチングで中日打線をしっかりと抑えることができた。


しかし、好事魔多し。


その直後の7月13日に倦怠感を訴え、PCR検査の結果、コロナ陽性と判定された。


復帰後イースタンで調整を行ったがなかなか出力が上がらない。


9月30日に一軍で実戦復帰し中継ぎで三試合に登板したが合計で3回1/3、被安打4、1失点と勝利に貢献できたとは言い難い。


10月8日から始まった阪神とのCSファーストステージでも中継ぎとしてベンチ入りし、ブルペンで待機していたが、一度も登板機会のないままシーズンが終わった。


12試合、1勝6敗、QS2、被打率 .322、WHIP 1.52


これが東克樹の2022年だった。



【2023年の再挑戦】


東投手は、中継ぎ待機のまま登板機会なく終わったCSファーストシリーズ第3戦の後、ロッカールームで悔し涙を流した。


そして、秋季練習では、コーチとの個別ミーティングで小谷アドバイザーから“お前は俺の期待を今年3番目に裏切った男やぞ”と言う愛がある故の厳しい言葉をかけられたそうだ(1番目と2番目は誰なんだろう?)。


小谷さんの言葉を聞いて”まさにその通り。来年見返すという強い気持ちになれた”と言う東は、秋季練習で既に完全復活へスタートを切っている。



この時期にしては珍しい投げ込みを行なっているようで、3勤1休の練習スパンで1日目は60球、一日空けて3日目には100球と言うハードスケジュールをこなしているとのこと。


テーマは、空振りの取れる強い真っ直ぐを取り戻すことだ。


やはり、彼の原点はそこだろう。


東投手がトミージョン手術を受けてから2年8ヶ月が経過した。そして、最速150km/hを超えてバッターを圧倒していたストレートはまだ戻って来ていない。


この後、彼が往年の球威を取り戻すことはあるのだろうか?


先輩の声を聞いてみよう。


レンジャーズ時代の2015年にトミージョン手術を受けたダルビッシュ投手が大谷翔平投手が同じ手術を受けた際のコメント。


“本当に原因不明というか、自分も2016年、2017年に4回くらい、もう絶対にこれ靭帯また切れたって思うくらいの痛みがあったことあった。


MRI撮ったら何もなかったんですけど。


やっぱり復帰してから1年、2年は普通じゃない状態になる。”


東克樹は今まさにこの”1年、2年”の普通じゃない状態にあるのだろう。


2023年の春季キャンプ。ちょうど彼のトミージョン手術から3年後となる時期に始まることになる。その時、彼の新しい靭帯は完全に彼のものとなり、新人王を取った時のような圧倒的な投球を見せてくれるかも知れない。


トミージョン手術の成功確率は100%ではないし、術後のパフォーマンスにも個人差があることは聞いている。


しかし、そう言う客観的なデータがこの場合どれほど役に立つだろうか?


私はファンの一人として、彼の完全復活をただひたすら祈りつづける。




頑張れ、東!


あのストレートを取り戻すまで、諦めずに何度でも挑戦してくれ。


全国100万人(当社調べ)のベイスターズファンがついているぞ。