mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

山崎康晃の夢と2023年ベイスターズの現実

昨年の冬、私はこのブログに次のようなことを書いた。


“山崎康晃は、今冬、ライバルたちが待つ厚木に向かう。


オフの自主トレは今季守護神を務めた三嶋、抑えの座を虎視眈々と狙う伊勢らと行う。

 

「決して仲良しクラブではない。みんな負けたくない気持ちを持っていると思うので、気持ちを再認識できればと思うと、今から本当に楽しみ」と高揚感に胸を膨らませた。

 

プロ棋士たちの命がけの勝負の世界を描いた漫画「3月のライオン」で、主人公の桐山零が次のように語る箇所がある。

 

倒れても、倒れても、飛び散った自分の破片を掻き集め、何度でも立ち上がり進んでいく

 

私はこの年の瀬に、山﨑康晃投手が飛び散った自分の破片をかき集め、立ち上がって再びリスペクトを集めるという大逆転を見せてくれることを祈っている。”


そう、炎上することが当たり前になってしまった山﨑康晃がもう一度クローザーとして復活することは、あの時は大逆転に思えたし、それを強く願っていながらも可能性があまり高くないことを感じていた。


しかし、不屈の闘志を持って、彼は今シーズン見事にクローザーに返り咲き、自己最多タイの37セーブを挙げた。




【山崎康晃の夢】


ところで、山﨑康晃は以前からMLB挑戦の夢を語っていた。


昨シーズンオフの契約更改では、国内FAの権利を行使せず、単年で契約を結んだが、その際に次のようにコメントしている。


“長いキャリアの中でも、1度は挑戦してみたい。


いろんな方々に背中を押してもらえるようなプレーができるよう、頑張っていきたいです。


いろいろな国際大会で、格上の打者と対戦することで成長させてもらってきた”


彼は、亜細亜大学3年生だった2013年に日米大学野球選手権の日本代表に選出され、5試合中4試合に登板して計6イニングを無失点に抑えて最優秀投手賞を獲得した。


この時の経験がメジャーを意識するようになった直接のきっかけだ。


プロ入り後も、2015年と2019年のプレミア12、2017年のアジアプロ野球チャンピオンシップ、2018年の日米野球、昨年の東京五輪で、計15試合15イニング無失点と結果を残している。


昨年彼が口にしていた第一目標は、クローザーの座を取り戻し、満員の横浜スタジアムでヤスアキジャンプで締めることで、(コロナ禍のため声を出してというわけにはいかなかったが)この目標は達成することができた。


そして、彼が挙げていたもう一つの目標は、


“横浜のために来年は優勝する。その先に自分の夢もあります”


ということだが、こちらは成し遂げることができなかった。


この辺りに彼の現在の迷いがあるのだろうと思う。


球団も資金を手にすることができ今年30歳という年齢を考えても好ましい今オフのポスティングでのMLB挑戦か、あるいは海外FA権を獲得する2023年にベイスターズの優勝を成し遂げてから挑戦するか。


恐らく、市場となるMLB各球団の評価によっても判断は変わってくるのだろうと思う。


”球団と色々と大人の話をしています”という彼の最近のコメントはこうしたことを踏まえてのことだろう。


2015年のデビュー以来、新人ながらクローザーを務め、その後長きにわたって戦い、苦しみ、時として栄冠を手にし、時として恥辱にまみれた、山﨑康晃の物語をずっと見続けてきた今、私は彼にMLBに挑戦するという自分の夢を叶えて欲しいと思う。


ファンの自分勝手な都合で言えば、2023年もクローザーとしてベイスターズの優勝に貢献し、それから渡米するという道を選んで欲しいところだが、そういうエゴは呑み込んで、彼の決断がなんであれ精一杯応援しようと思う。



【2023年ベイスターズの現実】


山崎康晃の夢がどのような形になろうと、来シーズンのベイスターズが優勝するためにはクローザーが確立されなくてはいけないという現実がある。


この視点から候補となる勝ちパターンのリリーバーたちの今シーズンの成績を整理してみよう。






伊勢、エスコバー、入江、山﨑の4投手はいずれも50投球回以上をこなしており、単純に量の問題でもここから山﨑投手が抜けるのが非常に厳しいことがわかる。


難病の手術を終えてリハビリ中の三嶋一輝は秋季練習に合流し元気な姿を見せているが、来シーズンが復帰初年度であり、無理は禁物だ。


今年は怪我とコロナに泣かされたが11を超える脅威の奪三振率を誇るクリスキー投手や今シーズン後半に楽天からトレードで入団した森原康平投手(彼も大事なところで打たれはしたが、奪三振率は12.00と非常に高い)が勝ちパターンに準ずる立場で50を上回る投球回をこなして欲しい。



さて、肝心のクローザーをどうするか?


私は、クローザーには以下の資質が必要と考えている。


コントロールが良いこと(一試合当たりの与四死球数:BB/9)

三振がとれること(一試合当たりの奪三振数:K/9)

ランナーを出さないこと(1イニングあたりに許す出塁の数:WHIP)

ホームランを打たれないこと(一試合当たりの被本塁打数:HR/9)


これらの資質に関して各投手のデータを比較する際には、それぞれ括弧内に挙げた指標に注目すると良い。


これらの4つの指標でみると、やはり今年の山﨑康晃は優れた成績を収めたと言える。中でも、コントロール(BB/9)及び出塁阻止(WHIP)では候補の中で最も優れており、結果として1.33という防御率を保った。


しかし、彼自身の新人年と比べると、奪三振率の低下と被本塁打率の上昇が目立っており、これら二つの指標については候補者の中でも真ん中かやや下位となっている。


上記①〜④のすべての指標で上位の成績を残している”バランスの良い”クローザー候補は、やはり伊勢大夢だろう。


特に私が注目しているのは、三振をとれること、そしてホームランを打たれないことだ。


その背景には、彼の投球の52%を占めるストレートが被打率 .195、被本塁打0、空振り率14.8%というリーグでも指折りの威力を持っていることがある。


やはり、抑えの投手は強いストレートで圧倒できる存在であって欲しい。


彼がクローザーとしての地位を確立するためには、柱となるストレート(被打率 .195)とフォークボール(同 .213)に続く変化球(スライダー、被打率 .302)を改善することだろう。


方向性としては、昨シーズンに比べて大幅に改善したフォークボールをさらに磨いて二つの球種で勝負するか、球速差のある変化球としてスライダーあるいはチェンジアップの精度を高めることなどの策が考えられる。


斎藤隆投手コーチや小谷正勝アドバイザーたちの知恵も借りつつ、クローザーとして最終回のマウンドに君臨する姿を見せてくれることを切に祈っている。