三嶋一輝は”ずっと忘れない”
11月7日 12球団合同トライアウト前日
昨年やコロナや東京オリンピックによる中断の影響があり12月に行われた12球団合同トライアウトが今年は例年通り11月初旬に開催されることとなった。
11月8日 楽天生命パーク宮城
つまり明日だ。
ご存知の方も多いと思うが、合同トライアウトはNPB各球団で戦力外となり自由契約となっている選手がもう一度他チームで復帰することを目指して挑戦するテストだ。
このテストはシート打撃形式で行われ、各参加者は、投手の場合3人の打者と対戦し、打者はのべ7人の投手と対戦する。
カウント0-0からスタートする場合が多いが、塁審や公式記録員は帯同していないためヒットか否かの判断等は明確にはされない。
この対戦を各球団の関係者が見守り、その結果やパフォーマンスを見て戦力になると考える参加者がいればピックアップして個別に再契約に向けて話を進める(通常はトライアウト実施後1週間以内に直接電話連絡があるようだ)。
毎年数十人の選手が合同トライアウトに参加するが、例年の合格者は1〜2名と極めて少なく、狭き門となっている。
また、一部参加者の体験談として、合格者は皆トライアウトの前に獲得の可能性のある球団と話をしており、トライアウトは再契約のための最終試験と言う意味合いであることが多いとも言われている。
今年ベイスターズを戦力外となった選手で現役続行を希望している選手のうち宮本秀明選手が唯一トライアウトに参加するそうで、倉本選手や三上選手は不参加とのこと。この二人は実績もあるので他チームからの話が既にあるのかも知れない。
今年のトライアウトには名前の知られた選手も多く参加するようだ。
桜井俊貴投手(読売、2015年ドラフト1位)
福井優也投手(広島・楽天、2010年ドラフト1位)
安部友裕内野手(広島、2007年高校生ドラフト一巡目)
といったところは有名選手だし、その他にも、阪神の守屋投手、小野投手などは一時はかなり活躍していた印象がある。
また、同じ阪神の尾仲投手は大和選手のFAに伴う人的補償でベイスターズから移籍した選手であり、27歳で自由契約と言うのは寂しいというか申し訳ないと言うか、複雑な気持ちになる。
その他にも、中日の桂捕手や三ツ俣内野手なども30歳を過ぎたばかりであり、まだやれそうな印象がある。
ベイスターズは、これまで、風張投手や宮國投手(トライアウトではなく球団施設に招いて個別にテストを行った)など自由契約となった選手を獲得してきた歴史があり、今年も三ツ俣内野手などに声をかける可能性は十分にあるように思う。
【筒香嘉智がFAに】
海の向こうでも、ワールドシリーズが終了した米国でストーブリーグが始まっている。
ベイスターズからMLBに挑戦した筒香嘉智選手は2年目途中でMLBのロースターから外れ、現在は3Aに在籍しているが、ブルージェイスの3AからFAと言う公示が今日なされた。
これから5日間はブルージェイスが独占的に交渉権を持つが、それ以降は日米各球団が彼と交渉を行うことが可能となる。
彼の人柄を考えると、NPBに復帰するならベイスターズを最優先で考えてくれると思うが、石に齧り付いてでもアメリカで野球を続けていくと言う強い意志を持っていることが最近の報道でも伝えられているので、たとえマイナーリーグであっても来シーズンは米国にとどまるだろう。
気が済むまでアメリカで頑張ってくれ。
そして日本に帰ってくる時には必ず横浜スタジアムにその姿を見せて欲しい。
筒香選手の他にも、元日本ハムの有原投手や元巨人、ロッテの澤村投手もFAとなっており、本人たちがNPBへの復帰を視野に入れているようであれば争奪戦になることだろう。
また、NPBで活躍した外国人選手たちもFAが公示されている。
阪神で活躍したジョンソン投手、広島などで剛腕を見せつけたジャクソン選手など。彼らもNPBに復帰する可能性はあるだろう。
【三嶋一輝は道なき道を歩いて復帰を目指す】
三嶋投手は今年の1月中旬に左足に力が入らないと言うこれまで経験したことのない症状が現れて、オープン戦ではだましだまし投げていたようだが、シーズンに入ってから力の入らない下半身を庇って投げていた負担から右肩痛を発症した。
一時は日常の歩行にも支障があるほどだったようで、自ら申し出て病院に行き、数カ所を受診した結果判明した病名は黄色靭帯骨化症という国指定の難病だった。
黄色靭帯というのは、胸部の脊髄を入れている脊柱管を構成する12個の胸椎という骨を連結する靱帯のなかで、脊髄の背側にあって胸椎を縦につないでいるものらしい。
黄色靱帯骨化症とはこの靱帯が通常の何倍もの厚さになり、なおかつ骨の様に硬くなり(靱帯の骨化)、徐々に脊髄を圧迫してくる病気とのこと。
靭帯の骨化によって脊髄が圧迫されることで、脳からの命令を手足に伝える役目を担っている運動神経などに障害が生じて、徐々に下半身に痺れがでたり、歩行が不自由になるなどの症状が現れる。
この病気を発症して手術を受け、手術以前と同じようなパフォーマンスにまで復活した投手の例は今のところないようだ。これまでに最も成功した例はロッテの大隣投手で、彼は唯一、手術後に復活の勝利を挙げている。
気になって調べてみると、黄色靱帯骨化症の手術についても近年は技術の大きな進歩があったらしく、最小侵襲脊椎治療(ミスト)と言われる新しい方法は、CTなどを使いながら1〜2cm程度の小さな傷口だけで骨化した箇所を取り除き圧迫されている胸椎を解放する施術で、患者の身体への負担は小さいためにリハビリ期間も短く、発症前の状態に戻ることができる可能性も高いとのこと。
三嶋選手は担当医に「手術を受ければ必ず治る」という力強い言葉をかけられ、このミストと呼ばれる手術を受けたそうだ。
手術は成功し、今では足の痺れはなく、肩の違和感も解消しているとのこと。
三嶋投手は既にチームに合流して横須賀のDOCKで秋季練習に参加している。
今日のスポーツ紙では、40mのキャッチボールを行い、50mダッシュで5秒9という記録を出すなど体調に問題はないことが報じられていた。
三浦監督からもこの病気から完全復活する最初の一人になってくれと言われているようで、本人もそれを目指して前向きな気持ちでひたすら頑張っていることが短いコメントからも伝わってくる。
これまでも幾多の困難を乗り越えてきた三嶋投手は、きっと、道なき道と言われるこの病気からの本格復帰を果たして以前のような跳ね上がるようなダイナミックなフォームで最終回を締める活躍を見せてくれることだろう。
その三嶋選手は、8月の手術後の試合で、セーブを上げてお立ち台に上がった山﨑康晃投手が
“三嶋さんが本当に一生懸命闘っている中でブルペンとして一日でも早く復帰できるように。皆さん三嶋さんにエールを送っていただけると助かります”
とコメントしたことについて、
”本当に嬉しかった。
病院のベッドでゴロゴロしていて、球場にいない僕の名前をわざわざ出してくれて。
僕はすごくうれしかったです。感謝していますね。
これから先ずっと忘れないと思います”
と言っている。
彼が復帰する頃には、山﨑康晃はMLBに挑戦しているかも知れない。そして、彼の大学の先輩で共にブルペンを支えてきた三上朋也は戦力外となりチームを去った。
しかし、嫌だからこそ、仲間達の応援と想いを受けて、三嶋一輝はきっともう一度輝くに違いない。
少なくとも、私はそう信じている。
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