mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

ベイスターズ捕手陣の里崎チャンネル式評価



里崎智也さんは、言わずと知れた元ロッテマリーンズの名捕手で、2006年の第一回WBCで正捕手として侍ジャパンを優勝に導いた。


非常に壁性能の高い捕手で、パスボールが極めて少なかった記憶があるし、交流戦で3年連続の満塁本塁打を放つなど勝負強いバッティングも強く印象に残っている。


選手時代の里崎さんに関してもっとも記憶に残っているのは、“史上最大の下克上”と言われたリーグ戦3位から日本一の栄冠を掴んだロッテマリーンズのポストシーズンの大躍進を支えた働きだ。


この年、里崎選手は怪我などの影響でシーズン戦での出場機会を減らしていたが、クライマックスシリーズで復帰し、そこから日本シリーズ最終戦まで、ここぞというところでのヒットやホームラン、そして内角を強気にせめるリードと攻守両面で活躍した。


あの時、“史上最大の下克上”という流行語を最初に発したのは里崎さんのインタビューだったような記憶もある。


現役時代も歌ったり踊ったりと陽気なキャラクターでファンから愛されたが、引退後もそのキャラのままニッポン放送の野球解説やNHKの球辞苑のレギュラー出演者などとして活躍している。


関西人(四国の徳島出身だが文化と言語という意味ではかなり関西に近いと思う)ならではのサービス精神もあり、ミルクボーイの内海崇のような人好きのする風貌も相まって、プロ野球OBの中でもかなりの人気者になっている。


その里崎さんはここ3年ほどフリーアナウンサーの袴田彩会さんと共に里崎チャンネルというYouTube配信を行なっているが、その内容は独自の視点でプロ野球の内面やデータを語る非常に興味深いものだ。




【里崎さんのドラフト評価(ベイスターズ編)】


最近の里崎チャンネルでは、先月行われたドラフトでのベイスターズの指名選手について、里崎さんが寸評を加えるというものがあった。


事前の里崎さんのオススメは、高卒、大卒、社会人のいずれでも1位〜3位で捕手、リリーフ投手、内野手をとるべきだというもので、蓋を開けてみるとほぼその通り(1位は高卒捕手の松尾汐恩、2位はトヨタ自動車の吉野光輝投手、3位は駒澤大学の林琢真内野手)だった。


自身のオススメとほぼ合致している(吉野投手はどちらかというと先発型で、クローザータイプは5位の慶應大学橋本投手だったという点がやや異なる)こともあり、ベイスターズの今年のドラフトに対する里崎先生の評価は非常に高かった。


特に、1位で高校随一の松尾捕手を指名するとともに、育成1位でも独立リーグ愛媛マンダリンパイレーツの上甲凌大捕手を獲得したことを好感しているようだった。


名捕手だった里崎さんが上甲捕手の強肩とバッティングを褒めており、“1軍でマスクをかぶるのは松尾君より上甲君の方が早いかも”と仰っていた。



【里崎式指標によるベイスターズ捕手陣の評価】


里崎さんの最近取り組んでいることの一つに、キャッチャーの成績を適切な指標によって定量化するというものがある。


野手全般については、打率、打点、ホームラン数という古典的な指標から出塁数、長打率、OPSと言った得点貢献に関する新しい指標、そして守備の指標UZR及び攻守全体の指標としてのWARなどの多くの指標が既に使われている。


しかし、捕手の場合は、肝心のリードやキャッチングあるいは盗塁阻止率等が盛り込まれていないため、これらの野手用の指標だけでは的確な評価が難しい。


里崎さんが最近提案している指標の一つに、捕手のQSというものがある。


これは、投手の場合のQSと同じで、スタメンでマスクをかぶった捕手が6回まで自責点3以内に抑えればクオリティースタート(QS)とみなすというものだ(捕手が一人であれば、投手は継投しても構わないものとする)。


同じように、7回まで同じ捕手が自責点2以内に抑えればHQS(ハイクリティースタート)、9回まで0点で抑えれば完封とみなすことができる。


この指標を使って2022年シーズンのNPBの主要なキャッチャーたちを里崎さんが評価した結果を下表にまとめる。



先発試合数を各チームの総試合数の過半数(つまり72試合)以上で絞ると、トップは阪神タイガースの梅野捕手、2位はソフトバンクホークスの甲斐捕手、そして、3位にはDeNAベイスターズの嶺井捕手がランクインしている。


特に、チーム全体のQS率に比して、嶺井捕手のQS率は8ポイントほど上回る結果(梅野捕手のQS率はチームの数値とほぼ同じで甲斐捕手は3ポイント程度プラス)となっており、各チームの投手力補正を考えると、嶺井捕手の働きは大きいとしている。


里崎さんのやり方を真似て、私もベイスターズの3人の併用捕手及び序盤に何度かマスクをかぶった山本祐大捕手の指標を計算してみた。




この表を見ても、嶺井捕手のQS率は際立っており、彼が先発すると安定して試合を作ってくれていたことが良くわかる。


インターネット上では、ソフトバンクが嶺井選手に4年程度3億円超の契約をオファーしていることに対して、金満だとか払い過ぎだ、とか言っている人たちもいるが、このデータを見ると決してそんなことはないと言いたい。


そして、嶺井選手よりも4試合だけ先発数が少ないものの、好投手が揃っているが故の非常に高いチームQS率をさらに8ポイント上回る抜群の個人QS率(77%)を誇る伏見寅威選手も目立っている。


守備的なキャッチャーとしてこの二人が高く評価されることの理由がデータの上でも見えてくる。




今日の報道(日刊スポーツ)によると、嶺井選手のソフトバンク入団が決まったようだ。


大事なものは失ってみて初めてその大切さがわかる、とやら言うが、上記の分析はまさにそんな結果になった。


もう一人の大切なキャッチャー、伏見選手には日本ハムが接触していると言う報道がある。


やや遅きに失したかも知れないが、我が横浜DeNAベイスターズも是非獲得に乗り出して欲しい。


上手くいけば、ソフトバンクで甲斐選手と正捕手の座を争う嶺井選手の更なる活躍を祈りつつ、次のような言葉とともに彼を送り出すことができるかも知れない。



“行く手に美しい希望があると、別れもお祭りのようだ。”


ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ