mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

京田陽太と北風と太陽



11月20日 京田陽太と砂田毅樹の電撃トレードが発表されて2日経つが、ファンの気持ちはまだ何となくワサワサしている。


トレード発表のタイミングが嶺井博希のソフトバンク入り決定の直後だったこと、その時中南米にいた立浪監督から直接京田選手にトレードを通達したと言う情報があり京田選手のトレードはかなり前から決定されていたと考えられることから、ベイスターズ側の事情で発表を待っていた節がある。


一部報道では、京田選手と戸柱選手のトレードの話が進んでいると言われていた時期がある。そして、その可能性は嶺井選手のFA移籍で消えたとも。


ドラゴンズから見れば、木下捕手と競わせるキャッチャーも左のリリーフと同様に補強ポイントであり、戸柱と砂田のどちらかであればと言うことがあったのだろう。


そしてベイスターズにしてみれば、嶺井がいるならいずれにしても来年FAの権利を得る戸柱は出しても良いがそうでなければとても移籍は認められず、その場合は砂田が第一候補となる、と言うことだったと思う。


と言うことは、間もなく行われる戸柱選手との契約更改で、球団は複数年の契約を提示して来年のFAを阻止するのではないだろうか?


などと考えるのでワサワサするのだ。


まあそれはさておき、ベイスターズに入団することになった京田選手が来年ベイスターズで輝くためには何が必要かを考えてみよう。


そうだ、不確かな裏事情をいくら考えていても仕方ない。大事なこと、そして確実なことは京田陽太がベイスターズに来てくれると言うことなのだから。



【ストレートに振りまけない強さ】


2016年にドラフト2位でドラゴンズに入団した京田選手は新人の2017年にほぼ全試合ショートスタメンで出場し、球団新人記録となる149安打を記録して新人王に輝き遊撃手としてのレギュラーの座を手に入れた。


その年の打率 .264と守備の指標UZR1000の4.7と言う数字はいずれもショートと言う最も難しいポジションを1年間全うした新人として素晴らしいものだったことは間違いない。


その年はウチのハマちゃんも新人で10勝を挙げ、日本シリーズでの快投などもあったが(ただし、ポストシーズンは新人賞の検討範囲外)、京田選手の活躍を考えれば新人王になれなかったのも仕方ないかなと思っていた(ハマちゃんも目覚ましい好成績を挙げたと言うことで新人特別賞を受賞)。


しかし、不調の底にいた今季、京田選手の打率は .172まで低下し、UZR1000も-27.5にまで悪化してしまった。


京田選手が来年ベイスターズで輝くためには、この不調の原因に正面から向かい、しっかりとした対策をとることが必要だと思う。


素人が何を、と言われるのを承知で敢えて私自身の考え(印象)を言うと、京田選手は、以前のNPBで一つの成功パターンだった「走り打ち」型の選手としてキャリアをスタートし、その後の球界全体のストレートの球速アップのトレンドに対応するためにしっかりと振る打撃に変えようとして上手くいっていないのではないかと思う。



彼のストレートに対する指標(100打席あたりの得点貢献)であるwFA/Cは新人年からマイナスを記録していたが(-0.5)、その後悪化の道を辿っている(最低は2020年の-2.70、昨年は-1.62)。また、彼が打撃対象としたストレートの球速は142.6km/hから145.1km/hにアップしている。


そして、今季の不調を決定的なものにしているのは、ストレートに対する苦手意識から従来は得意にしていたスライダーやチェンジアップなどの緩い変化球の指標が大幅に悪化していること、そして、打撃の不調が守備にも影響してUZR1000が上述した-27.5にまで低下していることだ。


そう、彼は負のスパイラルにはまっているように見える。


そして、大事なのは、京田選手がベイスターズで輝くためには、かつての自分を取り戻すことではなく、速いストレートに負けずに強くスイングして打ち返すことのできる新しい京田陽太を作り上げる必要があると言うことだ。



【北風と太陽】


「先攻は北風です。冷たい風を思いっきり旅人に吹きつけ、服を吹き飛ばそうと一生懸命に頑張ります。でも、旅人は背中を丸めながらも歩き続きます。


北風はさらに強く風を吹きますが、旅人は服を抑えて身を守ります。北風がますます風を強めると旅人はさらに服を着込んでしまいました。


北風が疲れ果てて諦めると次は太陽の出番です。太陽は、北風と違って乱暴な方法は使わないと言います。そして、空から穏やかな光を地面に送りました。


旅人は、急に暖かくなってきたので不思議そうに空を見上げながらもぽかぽか陽気に誘われて服を一枚脱ぎました。そして、太陽が力を込めると、野原の草も森の木もぐんぐん葉っぱを広げ、鳥たちも楽しそうに歌い始めます。


さらに暑くなったので旅人は服を一枚、また一枚と脱ぎ始め、汗を拭きました。そして、しまいには、服を全部脱ぐと気持ちよさそうに川に飛び込みました。」



立浪監督がトレードの決まった京田選手にかけた言葉というものが報道されている。


「ずっと頑固やったな。なんでそんなに頑固なんや? 


去年の秋から言ってきたけど、お前変わらんかったな」


2人の間の会話がどうやってメディアに伝わったのか、どの程度正確なものなのかと言うのは大いに気になるが、もし本当にこう言う会話があったとすると、京田選手を頑固だと言う立浪監督も同様に頑固だったのではないだろうか?


京田選手のプレースタイルを変えようとして力づくで指導する姿が目に浮かんでくる気がする。


京田選手は服が飛ばされないようにしっかり抑えて身を守ってしまったように思えるのだ。



彼に必要なものは、ポカポカと温かい光を送ってくれる太陽なのではないだろうか?


旅人のコートを脱がせようとした時と同様、この場合も、北風と太陽の目的は同じで、京田選手の打撃をストレートに打ち負けない力強いものにすることなのだが、アプローチを大きく変える必要があるような気がする。


ドラゴンズOBの田尾さんなどは石井琢朗コーチの指導で京田選手は変わるだろうと言っている。


そうかも知れない。


そして、ベイスターズには彼よりももっと太陽っぽい(大洋っぽい)人がいた。


今年から巡回打撃コーチになった田代富雄さんだ。


阪神からFAでベイスターズに入団した大和選手の打撃が改善し、得点圏の鬼と呼ばれるようになったのは良く知られており、その背景として彼と田代さんとの微笑ましい関係があることも良く知られている。


大和選手も当時の金本監督の指導方針に上手くフィットすることができず少し頑なになっていたところだったが、ニコニコしている田代さんとの出会いで自ら変わっていった。


私は同じようなことが京田選手にも起きるような気がしている。トレードが決まってすぐに電話を入れたと言う三浦監督や同期の佐野恵太とハマちゃんもいる。





京田陽太は古くなった上着を一枚また一枚と脱ぎ捨てていき、そしてとうとう全部脱ぐと気持ちよさそうに川に飛び込んで「横浜サイコー」と叫びましたとさ