mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

1軍定着を狙う二人の未来



11月21日 週末にソフトバンクとの合意が報道されていた嶺井博希がスーツ姿で球団関係者に挨拶回りをしたとのこと。


ソフトバンクとの契約は3年3億円程度(推定)で背番号12。


嶺井選手自身のコメントは以下の通り。


「9 年間在籍した球団には本当に感謝しています。この 9 年間で多くのことを経験させていただき、今後の野球人生も更に挑戦したい気持ちが強くなり移籍を決断いたしました」


ファンの皆さまには、結果が出ない時も応援していただき本当にありがとうございました。


皆さんの後押しがなければ、ここまで野球を続けることはできなかったと思います。本当に感謝しています」


嶺井らしい誠実な言葉が並んでいる。


嶺井頑張れよ。




【楠本泰史の覚悟】


10月14日からの先行期間も含めると1ヶ月以上に及んだベイスターズの秋季練習は昨日(11月20日)で終了し、唯一全日程に参加した楠本泰史選手が選手を代表して次のように述べて手締めを行った。


「悔しい思いを忘れずに自分に厳しいオフを過ごして、来年こそは笑って終われるシーズンに皆さんでしましょう」


大変よろしい。


この言葉は彼自身の覚悟でもあるだろう。



楠本選手は2017年ドラフト8位で東北福祉大学からベイスターズに入団した(全82選手中81番目)。前年には佐野恵太がドラフト9位という下位指名で明治大学から入団しており全87選手中84番目)、2年連続での下位での好打者の指名ということになった。


彼は少年期を横浜で過ごしており、ベイスターズジュニアの出身でもある。


小学校4年生でお父上の転勤に伴い横浜市内の小学校に転校するとすぐ、小柄な同級生が彼に近づいてきて、君も野球やっているの?一緒にやろうよ、と声をかけてくれた。


結局この友人と二人でベイスターズジュニアに加わることになったのだが、この友人こそが現在楽天ゴールデンイーグルスでクローザーを務める松井裕樹選手だった。


その後、松井選手は横浜市内の桐光学園高校に進み、甲子園での華々しい活躍を経てイーグルスにドラフト1位で入団し、楠本選手は花咲徳栄高校で甲子園に出場するもこの時点ではプロから声がかからず東北福祉大学に進学。


仙台六大学リーグでは最優秀選手賞2回、打点王2回、首位打者と本塁打王各1回という成績を残し、大学日本代表でも4番を務めたことがある。


プロ入り後は新人年にオープン戦で大活躍したが、シーズン戦ではヒットが出ず、走塁ミスで交代になったタイミングでファーム行きとなった。


最初の3年間は1軍と2軍を行きつ戻りつしていたが、3年目の2020年にはイースタンリーグで30試合出場して打率 .365、出塁率 .455、長打率 .663でOPS 1.118と素晴らしい成績を残し、最早ファームでやるべきことはない状態まで上げてきた。


その後は主戦場を1軍に移し、2021年は主に代打として打率 .254、OPS .691、今シーズンはライトスタメンでの出場機会を増やし、打席数327と自己最多を記録して打率 .252、OPS .683とまずまずの成績をおさめた。


今シーズンは、ホームラン6本(昨年までの通算は4本)、27打点(昨年までの通算は25打点)と勝負強さも見せてくれた。


楠本選手は本来内野手だったがバッティングを生かすために大学4年で外野手に転向したことから守備に難があると言われていた(このこともドラフト指名順位が低かったことの理由の一つだろう)。


しかし、プロ入り後に守備練習に励み、(今シーズンも何度か見たゴロ性のヒットを後逸するという外野手としてはかなりまずいプレーはあったものの)かなり安定してきた。


彼の右翼手としての守備の指標(UZR1000)は2018年には-75.0だったが今シーズンは3.3とだいぶ見られる数字になってきた。


今シーズンはタイラー・オースティン選手が肘の故障のためシーズンを通じてスタメン出場できる状態ではなく、楠本選手のチャンスが多かったが、レギュラーの座を掴み取ることができたかと言うと、答えは「保留」と言うところだろう。


やはり打撃が売りの外野手としては、もう1段階飛び抜けた成績が欲しい。


同じ下位指名から首位打者、最多安打のタイトルをとるまでに出世した佐野恵太キャプテン(速球に対する得点貢献の指標 wFA/C 2.99)と異なり、彼の場合は速球にあまり強くない(wFA/C -0.60)ことが克服すべき課題だと思う。


私は楠本選手の来シーズンの活躍に大いに期待している。


その理由として、まず、かつて2年連続で首位打者を獲得した鈴木尚典コーチとの出会いがある。


二人とも理論よりは「本能で打つ」タイプであるようで、感覚について通じ合うことが多かったらしい。鈴木コーチとの練習を通して掴んだものも多かったのではないだろうか?


もう少し具体的に言えば、今シーズン後半に始めた「一本足打法」が功を奏すると言う期待が大きい。



実際、9月の月間打率は .345、OPS .993と素晴らしい成績を残すことができたが、この時期に彼のフォームが大きく変わったことをはっきりと覚えている。


速いストレートが弱点のバッターが一本足にすると余計差し込まれるのではないかと思うのだが、そのあたりが楠本選手と鈴木コーチにしかわからない感覚的なことなのだろう。


昨日の秋季練習打ち上げ後に三浦監督も1番内容が濃かったのは楠本と言っていたように、彼自身も手応えを掴み、これから「自分に厳しいオフ」を送ることだろう。


来春、相手投手の速いストレートを力強く打ち返す勇姿を見せてくれることだろう。


期待しているぞ、楠本!(ちょうどここまで書いたところで、楠本選手の契約更改で1290万円増の3600万円(推定)というニュースが飛び込んできた。)



【蝦名達夫の一軍定着に向けた戦略】


楠本選手と同じく、蝦名達夫選手も東北の大学からドラフト下位(2019年6位)でベイスターズに入団した。


彼は出身地も東北(青森)で、青森商高から青森大学と県内でキャリアを積み上げてきた(北東北大学リーグでの最高打率4割超を誇った)。


郷土愛が強く、大学進学時には他の地域からも誘いがあったが、青森で野球を続けたいという想いが強く、青森大学への進学を決めたと言う話を聞いた。


彼も最初の2年間は主にファームの試合に出場しており、そこでは打率3割、OPS .900程度以上という良好な成績を残している。


しかし、1軍での試合に起用された昨年、得点機に代打で起用され、まん真ん中のストレートを見逃して三振という非常に消極的なプレーを見せてしまった。


あの時は我々ファンも複雑な心中だったが、本人はそれどころではないトラウマだっただろう。


今シーズンの蝦名選手はあのトラウマを払拭する積極的なバッティングを1軍の試合で見せることをテーマに始まったと思う。


そして、5月と6月には合計30試合、約100打席で打率3割を超え、OPSも一時は.800を上回るなどブレークの兆しを見せたが、疲れからかその後失速し、9月以降は2軍での出場にとどまった。


蝦名選手は速いストレートには比較的良く対応しており(wFA/C 0.60)、むしろ課題は一軍のピッチャーの変化球のキレに慣れることだろう。


蝦名選手も大学の途中(3年生)で内野手から外野手に転向したが、プロ入り後のライトでの守備指標は良好であり、肩が強く(遠投120 m)、脚も速い(50m 6.0秒)という評価を得ている。


その蝦名選手が大学以来の内野守備に取り組み、外野に加えて三塁手もこなすユーティリティとしての1軍定着を目指している。


ベイスターズのサードは宮﨑敏郎が不動のレギュラーの座にあるが、年齢を考えるとそろそろバックアップが必要になってくる。


実際、今シーズンも宮﨑選手が故障で離脱した試合では柴田竜拓や知野直人などが代わってサードを守っていたが、バッティングについては小粒感が否めず、打線全体としての迫力が大きく減ってしまった。


蝦名選手が今シーズンの5月と6月のような好調時のバッティングをある程度安定して見せてくれ、かつ、サードも守れるということになると、チームとしての戦術の幅は大きく広がる。


血行障害の持病があって春先に苦労することの多い宮﨑選手の負担を軽減しながら使っていくことができるだろう。



来シーズンには、蝦名選手と彼と同期の伊勢投手の「伊勢海老コンビ」が投打でチームを引っ張る姿を見る機会が増えることを期待している。


頑張れ、蝦名!(蝦名選手も665万円アップの年棒1600万円で契約更改とのニュースあり)


ビビらないで思いっきり行けよ。