mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

来年こそ復活するぞ 27歳になった2人の投手



NPBの長い歴史の中で多くの選手が故障により離脱し、治療や手術を受けて復活を果たしたり、あるいは残念ながらそのまま引退という結果に終わるのを見てきた。


こうした事例は枚挙にいとまがないが、それでも1000人近いと言われるNPB在籍選手全体(育成選手含む)の中で言えば一部にとどまるという印象だった。


しかし、近年、その印象は大きく変わってきており、特に主戦級の投手については大半の選手が箇所や重篤度は異なるものの何らかの故障を経験している。


NPBの投手の球速が近年明らかに上昇する傾向にあることや打者から見にくいフォーム(テークバックを小さく体後ろに隠れるようにするなど)の採用などが原因として考えられる(一部のOBが最近の投手はひ弱だから怪我が多いなどと言っているがこれはあまりにも乱暴な言い分だと思う)。


球団の立場から言うと、投手の故障から手術そしてその後のリハビリと実戦復帰に至るプロセスは危機管理と言う位置付けだったものが、皆いずれはどこかに故障が生ずると言う前提の下にルーティン的な選手管理の一部になりつつある。


現在のベイスターズの主だった投手の中でも、大貫、ロメロ、東、平良、田中健二朗がトミージョン手術を経験しているし、今永は肩のクリーニング手術、平田と入江は肘のクリーニング手術を受けている。


ハマちゃんや上茶谷は手術こそ受けていないものの。それぞれ股関節や肘などに懸念がある。


各チームの投手力を決定づける要因として、これまでは、ドラフトやトレード、外人獲得に関するスカウト能力、入団後の育成能力、一軍昇格後の起用に関するマネジメント能力などが挙げられることが多かったが、近年はこれらの要因に加えてあるいはそれ以上に故障の予防と故障後の復帰プログラムが重要となってきている。


ベイスターズのここ数年の事例としては、やはり、東克樹と平良拳太郎と言う将来を嘱望される二人の投手のトミージョン手術からの復帰が重要で注目度も高い。


今日はこの二人に焦点を当てて、現在の状態と来年に向けた取り組みについてまとめてみようと思う。



【東克樹の落胆と希望】


開幕投手を任されながらも指の怪我やコロナによる離脱などもありわずか1勝に終わった東克樹はシーズンの終盤に中継ぎに回り、タイガースとのCSファーストステージでもブルペンで待機していたが、一度も登板機会のないままシーズンを終えた。


最終戦に敗れた後、ロッカールームに戻ってから東投手は自身の不甲斐なさに腹が立ち、号泣したと伝えられている。


「あの(試合終了の)瞬間、全て走馬灯のように今シーズンがフラッシュバックして、何も力になれなかった。


泣けてきましたね。悔しかったです」


その後、小谷正勝コーチングアドバイザーからは


「お前は俺の期待を今年3番目に裏切った男やぞ」


とハッパをかけられたそうだ(1番と2番は誰だろう?一人は上茶谷かな)。


東自身もこれに対して、


「まさにその通り。来年見返すという強い気持ちになれた」


と言っており、小谷さんの言葉はキツく聞こえるが、お前はこんなもんじゃない、期待しているぞ、と言う励ましのニュアンスが強いものなのだろうと思う。


「直球の質を見直す」と言う目標を掲げて、秋季練習では1日おきに100球を投げ込むという異例の練習に取り組んでいるようだ。



東投手の過去5年間(2020年は手術後のリハビリのため登板なし)の投球内容の変遷を球種別に整理してみた。


軸になるのはやはりストレートで、手術前も後も全投球の半分程度を占めている。


そのストレートの平均球速は新人王を獲得した2018年の144km/hから手術の前後に一時低下していたが、今年は142.9km/hまで戻してきている。


しかし、NPB全体のストレートの平均球速自体がこの5年間で2.5キロほど速くなっているため、NPB全体の相場観で言うと打者から見て「怖くはなくなっている」と言うことになるだろう。


このことを踏まえれば、彼の言っている直球の質を見直す作戦はおそらく正解だと思う。


しかし、ストレートの指標は2.4とまだプラスであり、私はそれ以上に気になることがある。


手術前は全投球数の20%程度を占めていたスライダーが昨年は9.9%、今年は3.1%と激減していることだ。


代わって、手術前は投げていなかったカットボールの割合が昨年も今年も20%近くまで上昇している。



特にチェンジアップの投げにくい左打者に対しては26.4%がカットボールとなっているが(2022年)、その指標は-5.5と芳しくない。因みに被打率で言うと、.478とめった打ちと言っても良い状況だ。


手術前には全投球数の中で合計40%を超えたスライダーとチェンジアップは平均球速がいずれも120キロ台後半であり、打者からすると間際まで球種の判断に迷うような良いコンビネーションになっていたと思う。


しかし、今年は、平均球速134km/hのカットボールと127.5km/hのチェンジアップということで区別しやすくなってしまっているのではないだろうか?


もしそうだとすると、昨オフに習得したドラゴンズの笠原投手流の遅いチェンジアップは逆効果だったように思われる。


そもそもトミージョン手術の必要な肘の故障の原因として最も大きいのはスライダーの多投と言われており、手術後、東投手はスライダーを思い切って投げることに恐怖感があるのではないだろうか?


東投手が来季完全復帰するためには、以前のように思い切りスライダーを投げ込めるようになること、というのがあるように思う。


そしてもう一つ。どの球種もコースが甘くボールが高いのだ。


トミージョン手術を受けて復活したダルビッシュ投手が以前言っていたが、手術後の新しい肘に慣れて以前のような感覚で投げられるようになるには3年かかるということなので、この点については、来年あたりには以前のようなコースに投げ切る東らしい制球を期待することができるだろう。



【平良拳太郎の辛抱はもうじき報われるだろう】


平良投手は2017年に山口俊投手がFAでジャイアンツに移籍した際の人的補償としてベイスターズに入団した。



移籍直後の2017年にプロ入り初勝利を挙げたが、2018年から2年間は右膝の怪我の影響などもありやや不本意なシーズンを送った。


彼がベイスターズファンの希望の星になったのは2020年。味方の援護がなく4勝6敗と負け越したものの、防御率2点台前半、QS率も71.4%と非常に高いレベルの数字を残した。


しかし、好事魔あり。開幕ローテーション入りを果たした2021年に肘の故障が発覚し、6月にトミージョン手術を受け、オフには育成契約に変更された。


平良投手は東投手以上にスライダーを多投するタイプ(全投球数の30%程度)であり、やはり肘にかかる負担は相当なものだったのだろう。2020年の球速アップによる成績向上も肘への負担という意味では大きかったのかも知れない。


そして、今シーズン、リハビリを終えてファームでも好投し、支配下登録を勝ち取ったところで今度はコロナによる離脱。結局2022年シーズンでの一軍復帰登板は叶わなかった。


その平良投手が昨日契約更改を行い、700万円減の年俸2000万円でサインしたようだ。


「悔しいシーズンだったが、順調にリハビリができて来年勝負できる形はできた。


そういう意味ではよかったかなと思う。」


というコメントを残しており、本人も手応えを持っているようだ。


実際、フェニックスリーグでは100球程度を投げており、来年は開幕から100%の状態で投げることができそうだ。




東克樹と平良拳太郎の2投手の完全復活無しにはベイスターズの優勝は考えにくい。


期待を込めて、私は来年の先発ローテーションを次のように予想している。


(左投手)

今永昇太、濵口遥大、東克樹  バックアップ:石田健大


(右投手)

大貫晋一、平良拳太郎、R. ガゼルマン  バックアップ:上茶谷大河、京山将弥