mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

牧秀悟という新たなブランドの誕生



昨日NPBからベストナインの発表があった。


ご存知の通り、この賞はスポーツ紙等の記者の投票によって決められるもので、投票資格を持つのは全国の新聞、通信、放送各社に所属し5年以上プロ野球を担当している方。


セントラルリーグの受賞者は次のとおり(括弧内は得票数)


投手 青柳晃洋(286)阪神タイガース

捕手 中村悠平(176)東京ヤクルトスワローズ

一塁手 J.オスナ(160)東京ヤクルトスワローズ

二塁手 牧秀悟(271)横浜DeNAベイスターズ

三塁手 村上宗隆(298)東京ヤクルトスワローズ

遊撃手 中野拓夢(208)阪神タイガース

外野手 近本光司(208)阪神タイガース

    佐野恵太(181)横浜DeNAベイスターズ

岡林勇希(141)中日ドラゴンズ


いずれも順当なところだと思うが、得票数が200を下回っているポジションについては、記者によって意見の相違があったことが窺える。


捕手部門では中村悠平が他を圧倒してはいるものの、ドラゴンズの木下拓哉(79票)、ジャイアンツの大城拓三(32票)の支持も一定数あった。これもよくわかる。


最も投票先がバラついたのは一塁手で、オスナの160票をトップに、佐野恵太(41票)、大山悠輔(32票)、D.ビシエド(29票)、中田翔(27票)と20票以上を得た選手が5人も並んでいる。


三冠王を獲得し日本人新記録の56本のホームランを放った村上宗隆は満票かと思われたが、一票足りずに298票となった。この1票が我らの宮﨑敏郎に入ったということで、嬉しいような本人にはちょっと気の毒なような複雑な気持ちだ。


ベイスターズから選出されたのは2年目のジンクスをものともせず、セカンド、4番でほぼフル出場(コロナによる離脱期間を除く)で活躍した牧秀悟が初受賞したのに加えて、最多安打のタイトルを獲得した佐野恵太が2年ぶり2度目の受賞を果たした。


佐野選手は一塁手としても41票を獲得しており、ポジションを跨いだ合計の得票数は222とかなりの支持を得ていることがわかる。


その一方、守備機会は圧倒的にレフトが多かったにも関わらず、一塁手として支持する記者が多かったことは本来内野手である彼の適性とも関係しているのだろう。



【牧秀悟の初めてのベストナイン受賞はブランドの誕生だ】


牧秀悟の得票数は271で2位の山田哲人の17票を大きく上回った。


今年のゴールデングラブ賞を受賞しベストナインも常連だった菊池涼介はわずか4票に終わった。


ゴールデングラブ賞もそうだが、投票によって決まるベストナインも各記者の「印象」による部分が大きく、したがって成績の数字やデータからはある程度乖離したものとなる。


この乖離について色々と批判があることは承知しているが、私は「これはこういうものだ」と思い特に問題視はしていない。


むしろ、スター選手というブランドに関する意識調査だと思えば、それはそれで価値のある結果だと思っている。


セリーグのセカンドに関しては、過去10年近い間、山田哲人と菊池涼介という二つのブランドが君臨しており、ジャイアンツの吉川尚輝が素晴らしい守備能力でこの二人を追いかけていた。


そして今年、牧秀悟という新しいブランドが誕生したのだ、と私は思う。


受賞後の牧選手のコメント。


「ベストナインに選出していただき大変光栄です。


初めての受賞なのですごく嬉しい気持ちと共に、監督、コーチをはじめ、スタッフの皆さん、そしてファンの皆様に感謝しています。


来年も受賞することができるよう頑張っていきたいと思います。」




【今シーズンの振り返りと来季に向けた課題】


新人として迎えた2021年と今シーズンの牧選手の主な打撃成績を比較してみた。



打率が少し下がって3割を下回ったが、本塁打数はわずかながら増え、新人年から2年連続20本以上という誇るべき成績を残している。


入団当初は中距離打者と思っていたので、私にとっては嬉しい誤算だった。


特に、オースティンが離脱してソトが不調という状況で牧選手のホームランは打線の迫力を保つ上でも必要な飛び道具だったと感じている。


次に、球種ごとの打撃指標(得点貢献)を見てみると、ストレートに対して昨年(14.7)も今年(15.2)も12球団トップレベルの成績を残しており、この速いボールへの対応力が彼のバッティングの基盤になっていることが窺える。



昨年は唯一カットボールに対する指標(-7.4)が顕著に悪く、昨年オフの本ブログでもこの点を改善すべきポイントとして挙げていた。


この点は恐らく本人も自覚していたようで、今シーズンは3.4とむしろ得意なボールの一つとなっている。今年は全ての球種について大きな弱点もなく満遍なく対応できていたと言えるだろう。


やや気になるのはスプリットボールなど落ちる球への指標がやや悪くなったことで(3.4から-0.6へ)、今シーズンはストライクからボールになる低めの落ちるボールに空振りさせられるシーンが去年よりも多かった印象がある。


今年の彼のヒットゾーンのデータでこの点をもう少し詳しく見てみよう。



真ん中から高めのボールはほぼどこでも得意にしているが(例外はベルト付近のインコースだが、ここは恐らくツーシーム等をひっかけてゴロというパターンだろう)、低めのボールについて三振が多い。


彼の三振の総数が84ある中で、低めの3コースの三振数が59と突出しているのはやはり落ちるボールへの対応が課題ということを意味している。


特にアウトローの落ちるボールやスライダーなどが2年目となった彼への対策として各球団のバッテリーが心掛けていることだと思うので、これに対応することが来季に再び3割以上の打率を残すために取り組むべきテーマだと思う。


そして、セカンドの守備に関しては、昨年オフでの大和選手との自主トレなどで精力的に取り組んだにも関わらず、UZR1000が-2.3から-8.5に悪化している。


これは、4番、セカンドという攻守の要として初めてシーズンを通じて出場し続けたことで負荷が増大したためと考えるべきだろう。


驚異的な学習能力を持つ彼のことなので、来年はこの点も改善してくれるはずだ。