mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

伊勢の威勢のせい



12月1日 昨日、伊勢大夢が契約更改を行い、6440万円増の年俸9200万円(推定)でサインしたとの報道があった。


今季の年俸2760万円が実に3.33倍になったということで球団の高い評価が窺える。


今季はリーグ最多の71試合に登板し、3勝3敗39ホールド1セーブ、防御率1.72とセットアッパーとして抜群の成績を残した。


最優秀中継ぎ賞を受賞したドラゴンズのロドリゲス投手とタイガース湯浅投手の45ホールドポイントにはわずかに及ばず42HPで終えたが、この辺りは来季に向けて良い目標になっただろう。


本人のコメント


「あと一歩で(最優秀中継ぎ賞を)つかめなかった。


そこだけが、チームが優勝を逃したことも悔しいですけど、自分としてはそこが1番悔しかったので。


来年以降タイトルを狙える立場になっていきたい」


昨日の契約更改後の記者会見の写真を見て思ったのだが、何だか顔つきが変わって貫禄というか風格のようなものが出てきたように思う。これも自信の現れなのだろう。


実力に裏付けられた自信を持つことはプロ野球選手として誠に喜ばしい。


今日は彼の今期を振り返り、来季に向けた展望を書いてみよう。




【2022年は伊勢大夢の飛躍の年】


伊勢大夢は2019年ドラフト3位で明治大学から入団した。


この年は同じく明治大からカープにドラフト1位で入団した森下投手が10勝3敗の好成績で新人王に輝いたこともあって、伊勢投手がマスコミに取り上げられることはそれほどなかったが、新人のリリーバーとしては文句なしの成績を残して勝ちパターンの一角を担うようになった。



当時からベイスターズファンとしては次の世代の勝ちパターンは伊勢が中心になる、と予想していたが、その後も順調に成長を続けてきたと言って良いだろう。


彼の入団以来3年間の成績の推移を下表にまとめた。



今年の登板数とインニング数は過去2年に比べてほぼ倍増しており、まず、量的な問題としてまさに大車輪の活躍だったことがわかる。


そして、質的にも、ホールドは勿論、防御率、被打率、奪三振、与四死球、WHIP(イニングあたりに許す走者の期待値)のいずれも自己ベストを記録している。


こうして眺めてみると、年俸3.33倍という球団の高い評価は至極当然のものだということが理解できる。


次に、球種別に、投球割合、平均球速、指標(失点回避の貢献)をまとめる。



まず目を引くのがストレートの指標の向上だ(5.0程度から17.6に上昇)。


元々伊勢投手のシュートホップする独特の軌道のストレートはリーグ随一の空振奪取率を誇っていたが、その最大の武器がさらに磨かれたようだ。


思い返してみると、今年就任した小谷正勝アドバイザーが秋季キャンプで伊勢投手にかなり時間を割いて指導を行なっていた。リリーバーとしては異例の150球の投げ込みなども行っていた記憶がある。


先日、小谷アドバイザーの期待を裏切ったと自己申告している投手たちについて書いたが、彼らとは逆に、伊勢投手と入江投手あたりは小谷さんの期待通りあるいはそれを上回る活躍を見せてくれたと思う。



もう一つ変わった点はチェンジアップをやめてスプリットを投げるようになったこと、そしてその指標が去年のチェンジアップよりもかなり改善していることだ。


ただし、これはDeltaの集計上の変化なのかも知れない。元々スプリットチェンジ気味だったボールがスプリットに区分されたのかも知れない。いずれにしても球質の変化(向上)があったことは確かだろう。


コントロールについても昨年からかなり改善された印象だが、被打率の比較的高い真ん中付近への投球が左右打者ともの10%程度あり、特にスライダーのコントロールミスが痛打されていたことがあったように思うので、この辺が来季に向けて改善すべき課題となるだろうか。




【来シーズンの展望】


契約更改後の記者会見で、先輩の山﨑康晃が残留し新たに6年契約を結んだことについて尋ねられると、


「目指してきた選手がまだいてくれる。


また学ばせていただける。超えるチャンスもくれている。


背中を追って越えて行ければいいなと思っています」


と答えており、山﨑投手とクローザーの地位を競う意欲を見せていた。


伊勢投手は昨のオフも山﨑投手や三嶋投手と共に合同自主トレを行ってキャンプ前の基盤を作っていたが、今年も恐らく同様の取り組みをするのではないだろうか?



彼ら3人と入江投手あたりが切磋琢磨して強力な勝ちパターンを形成してくれれば悲願の優勝に向けてベイスターズのストロングポイントになることは明らかだ。


来季の伊勢投手について懸念があるとすれば登板過多ということになるだろう。「肩は消耗品」と言われる中で70試合登板というのは流石に多すぎる。


彼自信、ブルペンのマネジメントをきっちりして戴いたので3連投というのがほとんど無く、身体はそれほどキツくなかった、と言っているが、やはり複数年この状態が続くのは避けなくてはならない。


球団が元MLBの剛腕リリーバーであるウェンデルケン投手を獲得したのも、伊勢投手やエスコバー投手などの登板過多を緩和して彼らに多年にわたって活躍して欲しいという配慮が含まれているものと思う。


私は伊勢投手が来年も活躍し、特に今年よりもさらに重要な局面で登板することを確信している。


山﨑康晃投手とダブルストッパーを務める可能性もかなりあるように思う。それほど彼の今の表情には余裕と自信そしてそれらに裏付けられた貫禄を感じるのだ。


ファンの間からは「伊勢大明神」というニックネームで呼ばれることも増えているようだが、本人も満更ではないようで、「嬉しいですね。ちょっとプレッシャーですけど」と言っている。


ちょっとプレッシャーというのはちょうど良い緊張感という意味だろう。


そういう言葉が口をついて出るのも、


伊勢の威勢のせい(回文)


お後がよろしいようで