入江大生は来季の更なる飛躍のために南半球でツーシーム習得
12月21日 オーストラリアウィンターリーグに参加していた入江大生投手と宮國椋丞投手が帰国したという報道があった。
ウィンターリーグと言っても南半球なので、春から初夏にかけての気持ちの良い天候の中で野球に明け暮れることができたのではないだろうか。
宮國投手は自責点0という安定した成績で終え、入江投手は失点するシーンも度々あったが、通常のシーズンではできなかったことを試して、ということなので本人は気にしていないようだ。
ベイスターズでは試合前の声出しなどでギャグを披露しているようだが、オーストラリアでもそちら方面はおろそかにしなかったとのこと。
別に笑いはとらなくても良いと思うのだが、それで本人が気分よく投球できるならどんどんやってください。
【各チームの勝ちパターン救援陣における入江大生の現在地】
入江投手はオーストラリアに向け出発する前の11月2日にチームの先陣を切って契約更改を行った。
2900万円アップの年俸4500万円でサインしたが、前年に比べて2.8倍以上に上がったということで球団もブルペンの柱の一つに成長した入江投手の活躍を高く評価しているということだろう。
新人だった2021年は先発で0勝4敗、防御率7.85でシーズン途中に右肘の手術をするなど決して満足のいくものではなかっただろう。
ドラフト1位の重みを感じていただろうし、2位の牧秀悟選手が球団の歴史に残るような大活躍をしたことから焦りもあったに違いない。
そうした様々な気持ちを持ちながら、昨シーズン終盤からオフにかけて、体幹等のトレーニングに励み、そして読書に時間を費やした。
彼にとっては、立ち止まって自分をじっくり見つめ直し、プロの世界で勝負していくことの出来る武器を整備する良い機会になったのだと思う。
三浦監督とも相談してリリーフに転向し、今永昇太投手の故障による離脱などチーム事情もある中で開幕一軍を勝ちとった。
そして入江投手はこのチャンスを手放さなかった。
チームの柱になる選手は皆こういう経験をしている。そして、一度つかんだチャンスを絶対手放さないという気概で努力を続けた選手が一流、スターへと上り詰めていくのを我々はこれまで何度も見てきた。
入江投手もそういう階段を登っていくための資質を備えた人材であることは間違い無いだろう。
5月5日の横浜スタジアムでのドラゴンズ戦で7回から登板し2イニングを無失点、4奪三振で抑えてプロ初勝利を挙げた。
この時は確か同期の牧秀悟選手と一緒にお立ち台に上がり、嬉しそうに「ごめんね、ごめんねー」という地元栃木のU字工事のギャグを披露していた。
MCの方にウィニングボールを見せてくれと言われ、慌ててベンチに取りに戻っていたのが初々しかった。そして、それをニコニコしながら見ている牧選手も微笑ましかった。
二人は寮の風呂で、いつか一緒にお立ち台に上がれるといいね、と話していたそうだ。
そうだ。今思い出したが、あの日、私はスタジアムで観戦していたんだっけ。
それからビハインドの場面を中心に登板経験を積み、7月には8試合に登板して月刊防御率という素晴らしい成績を収めて首脳陣の信頼を勝ち取り、8月にはセットアッパーに昇格して勝ちパターンの一角を占めるところまで上り詰めた。
10月3日のヤクルト戦で村上宗隆選手の今季最終打席で王貞治さんの記録を破り日本人最多となる56号を被弾するという衝撃もあったが、全体として見れば彼にとって良いシーズン、飛躍の年になったと思う。
こうして勝ちパターンと呼ばれる主力リリーフの一人となった入江投手は、セリーグの同格の投手たちの中でどのあたりに位置しているのだろうか?
各球団の勝ちパターンクラスのリリーフ投手各5人の成績を比較してみよう。
こうしてみると、まず、Aクラスの3チームが強力なリリーフ陣を持っていることがわかる。
特に、優勝したヤクルトの充実ぶりは素晴らしい。
それに比べるとBクラスに終わった巨人と広島は終盤の継投でやや苦労していたことが伺える(中日の救援陣は強力だが、やはり得点力が弱すぎた(総得点はヤクルトよりも200点ほど少ない))。
やはり、今日のプロ野球ではブルペンの力がシーズン通算での順位に大きな影響を及ぼすということなのだろう。
もう一つ目につくのは、幾度も指摘されていることではあるが、ベイスターズ救援陣の登板過多である。
投球回60以上、投球数900以上の投手を黄色でハイライトしたが、ベイスターズだけ3人の投手(エスコバー、伊勢、入江)がこの両方に該当している。
セリーグ全体として、この3人以外に投球数900以上というのはヤクルトの木澤投手と広島の松本投手のみであり、投球回60以上というのは他チームにはいない。
来季はウェンデルケン投手が入団し、三嶋投手が復帰する可能性があること、そして昨年終盤に楽天から入団した森原投手が序盤戦から勝ちパターンに準ずる役割を果たせるであろうことを考えればある程度緩和されると期待できる。
いや、これは必ず改善してもらわなければならない。
伊勢大夢と入江大生がわずか数年で戦力外になってしまうような未来図は絶対に見たく無いのだ。
入江投手の成績は、リリーフ転向直後だった序盤戦の不安定な時期を含んでいるので他の中堅やベテランたちと比べるのは少し可哀想なのだが、それでも奪三振という意味ではトップレベルにあることがわかる。
課題としては、イニングあたりの投球数がやや大きく、回またぎも辞さない彼の投球パターンとしてはやはり減らしていきたいところだ。
そうすれば必然的にWHIPも低下し1.00を切るあたりまで行くことができるだろうし、終盤の防御率はすでに1点台になっていると思われるが、来季は通年でそのレベルを維持することも可能になる。
でも、どうやって?
【入江大生の来季のキャリア設計】
上記のようなことは入江投手本人も考えていたようだ。
そして、彼が出した答えは、内野ゴロを打たせることのできるボール、ツーシームの習得だ。
昨年と今シーズンの球種別の彼の投球を比較してみよう。
まず目につくのは、ストレート(フォーシーム)の平均球速が146.7km/hから152.1km/hに上昇していることで、これに伴い、失点回避の貢献度を示す指標(wFA)も-1.3から5.0と大幅に改善して明確な武器となっている。
また、このストレートの改善によって、変化球の指標も良化している。特に、去年は見切られていたスプリット(フォーク)が-6.7から3.0とこれも武器となり、被打率 .129と自信を持って投げ込むことのできる勝負球になった。
威力のあるフォーシームを軸にしている投手がツーシームを投げ始めると回転軸に影響が出てシュート回転の成分が多くなる弊害があるというのはよく言われていることだが、入江投手もかつてそういう経験があり、今シーズンはツーシームを封印していたそうだ。
それを承知で彼は来季に向けた課題をストレート(フォーシーム)の威力を落とすことなくツーシームの精度を向上することに設定し、オーストラリアでの実戦を通じて打者との対戦で使えるという手応えを掴んだようだ。
ベイスターズは動作解析など様々なアナリスト達が充実しているので、感覚だけではなく、フォーシームの威力を落とすことなくツーシームのキレとコントロールを向上するというアップデートを行うことは可能だろう。
ベイスターズの勝ちパターンの投手達は正月から神奈川県内で合同自主トレを行うのが恒例で、今年も山﨑康晃、三嶋一輝、伊勢大夢の3人が一緒に山登りダッシュなどを行なっていたが、来年の正月はこのメンバーに入江大生が加わることになった。
この4人、そしてエスコバーとウェンデルケンの2人の外国人投手がローテーションを組みつつシーズンを通じて盤石の勝ちパターンを形成してくれることがベイスターズの悲願の優勝のための最も重要な柱の一つだと思う。
暗黒時代の頃の悪い習慣はキッパリと捨てて、さあみんな、本気で優勝を期待しよう!
昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう アルベルト・アインシュタイン
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