新入団選手たちの門出の日
1月7日 今年も新入団選手たちの入寮の日がやってきた。
プロになる選手たちの多くは早い時期に親元を離れ、実家から離れた高校に入学する、あるいは同じ地域の高校でも寮生活をするなどの経験をしてきているので、こうした引越しや入寮ということには慣れていると思う。
しかし、少年時代から憧れていたプロ野球選手に自分自身がなるというその日には、やはり誇らしい気持ちもあるだろうし、身も引き締まる気分にもなっていることだろう。
今日入寮した10人の新人選手たちにとって特別な日であることは間違いない。
【松尾汐恩選手の出世部屋】
ドラフト1位の松尾汐恩選手は京都府の精華町出身で大阪桐蔭高校に所属していたため、近畿以外の地域で暮らすのは初めてということになる。
精華町は、けいはんな学研都市に隣接したところで、私自身何度か訪れたことがあるが、歴史のある田園地帯という印象の静かな町だ。
入団3年目となり退寮して新婚生活を始めることとなった牧秀悟選手の部屋がちょうど空き、松尾選手は縁起の良いこの部屋に入室することとなった。いわゆる出世部屋というやつだ。
2021年1月、キャリーバッグを引きずりながら入寮した牧選手のやや緊張した面持ちは未だに記憶に残っている。
あの時、牧選手は地元のチームメイト達の寄せ書きがびっしりのバットを大事そうに抱えていたっけ。
あれから丸2年が経ち、その短い期間に1億円プレイヤーとなり侍ジャパンにも選出され、ご結婚もされた牧選手のキャリアもあの日に始まったのだと思うと感慨深いものがある。
松尾選手の入寮時のコメントは「改めてベイスターズの一員になった実感が湧いている」というものだった。
そして、牧選手の暮らしていた部屋に入るということについては、そもそも牧選手のバッティングを見本にしていきたいと言っていtこともあり、
「先輩に負けないように自分もやっていきたいと思っています。
勝負強いバッティングであったり、気持ちの強さってところを自分も見習いながら頑張っていきたい」
と豊富を語っていた。
その松尾選手が入寮時に持参した大切なものは、チームメイト達が作ってくれたという自身の名前(Shion)がプリントされたブランケット。
年末に大阪桐蔭の先輩である千葉ロッテの藤原選手と食事を共にしたそうで、「プロ野球の世界やピッチャーの感じ、球場の雰囲気など聞かせてもらいました」とのこと。
ドラフト直後は、自分らしく新しい捕手像と言うような夢を語っていたが、8日から新人合同練習が始まると言う現時点では、
「捕手としての経験を積んでいかないと。基礎を鍛えていきながら頑張っていきたい」
と言うことで、しっかり足下を見て進んでいく覚悟ができているようだ。
大変によろしい。
【吉野光樹選手のコンディションは大丈夫】
社会人のトヨタ自動車からドラフト2位で入団した吉野投手は、日本選手権で一度も登板がなかった。
チームが11月初旬の決勝で勝利して見事優勝を飾った時にも、コンディション不良ということで登板しなかったので、当然、私としては心配していた。
そのことを踏まえ、報道陣の今日のインタビューで体調について質問があったが、本人は「全く問題ないです」と答えていたので、まずは一安心だ。
これまでにも、柿田選手や水野選手のように期待されて入団した才能のある投手達が怪我などのためにほとんど一軍で登板することなく引退していくのを見送ってきた我々ファンとしては、吉野選手が自分の力をプロ野球の晴れ舞台で発揮できることをひたすら祈っている。
吉野選手が持参した大切なものは、社会人日本選手権で優勝した際、投手陣で記念撮影した写真がプリントされたTシャツ。
「思い出の品として持ってきた。
社会人として入団するということで一番年上なので、新人を少しでも引っ張っていけるように。
チームの勝利に一つでも貢献できるように」
この記事を書く前に吉野投手の投球をYouTubeで見直してみたが、最速147km/hでスピン量の豊富な(2400rpm以上)ストレートと落差のあるフォークボールで三振を奪うシーンが数多く見られた。
ストレートは現在のNPBの投手の中で目立って速いわけではないが、2400rpm以上の回転数でホップ成分が大きいボールのノビが最も大きくなる球速帯であること、そして直球とフォークボールのフォームに全く差がないこと、から流石にドラフト2位で指名されるだけの逸材だと感じた。
昨年末に故郷の熊本で行われたプロ入り祝賀会では、九州学院高校で1学年後輩にあたるスワローズの村上宗隆選手ががサプライズで登場し「おめでとうございます」と祝福してくれたらしい。
「オーラが違いました。さすがだなというか、三冠王という感じ。
高校時代ももちろんすごかったですけど、さらにパワーアップしているなと感じた」
と語っていたが、プロの舞台での対戦も楽しみにしているとのこと。
村上選手に対して挑みかかるような形で切磋琢磨していってくれれば。
【林琢真選手は神に祈る】
駒沢大学からドラフト3位で入団した林琢真選手は、大学時代にはセカンドを守ることが多かったが、ベイスターズではショートを守ることも視野に入れて首脳陣が指名したと言う走攻守三拍子揃った内野手だ。
ドラゴンズから京田陽太選手がトレードで移籍し、ただでさえ競争が激化したベイスターズのレギュラー遊撃手を巡る争いは、大和、柴田、京田、林、森の5選手全体のレベルアップをもたらすことだろう。
高卒ドラフト1位野手ということでスター選手へのレールが敷かれていた森敬斗も目の色を変えて野球に没頭すべき環境が整った。
以前のインタビューで伊勢大夢投手が、後輩の入江大生投手の覚醒で危機感を持ったことに触れて、「危機感を持たせてくれて有難う」と言う趣旨のことを言っていたが、この5人がそれぞれ互いにこうした感謝の気持ちを持つことのできる良いライバル関係を築いて行って欲しい。
林選手の持参した大切なものは、中学生時代に所属していた愛知・瀬戸ボーイズの鈴木正秀監督から贈られた伊勢神宮の神棚。
鈴木監督からは「毎日お祈りして練習に行け」と言われたそうで、
「怪我しないように、レベルアップできるように、というのをお祈りして練習したい。
自分の持ち味を精一杯生かして、沢山アピールしてチームの力になれるように」
と語っていたのが印象的だった。
ドラフトの順位はプロになってしまえばあまり関係ない、と言われるが、それはプロ野球選手としての厳しい練習で鋼のような身体を作り上げ、プロになる前に学んだことに比べてその何倍、何十倍もの技術や経験値を身につけて行かなくては成功できないと言うことの裏返しだろう。
10人の新人選手たちの夢と希望、そして彼らを待ち受ける厳しい練習を想い、将棋の羽生善治さんの言葉を送りたい。
“何かに挑戦したら確実に報われるのであれば、誰でも必ず挑戦するだろう。
報われないかもしれないところで、同じ情熱、気力、モチベーションをもって継続しているのは非常に大変なことであり、私は、それこそが才能だと思っている”
羽生善治




このブログへのコメントは muragonにログインするか、
SNSアカウントを使用してください。