mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

2023年ベイスターズの冒険



この年になるまで色々なことを経験してきた。


さまざまなことに手を出して、諦めてしまったものも多い。


その手数があまりにも多いために、自分がこれまでに見てきた世界の範囲がどこまでなのか、かなり曖昧になってきている。


それに加えて、テレビや映画で観たことと実際の体験が混ざってしまい、自分の世界の境界線というものがよくわからないことも多い。


しかし、その境界がはっきりと見える時がある。


そして、自分が見たことのない、その境界の先を見てみたいと考え、意図的に一歩を踏み出す時、それは間違いなく冒険と言うべきものになる。


その一歩がたとえどんなに小さいものであったとしてもだ。




【ストライクゾーンで勝負すると言う冒険】


今日もインターネットでベイスターズ関連の記事をななめ読みしていると、相川亮二バッテリーコーチのインタビュー記事が目に止まった。


昨年、ベイスターズが最下位から2位にまで順位を上げた原動力の一つは防御率の改善であり、その原因は若いカウントからストライクゾーンで勝負していくと言う戦術の変化だ。


この件については、これまでに本ブログでも斉藤隆投手コーチなどの談話を取り上げてきたが、恐らくその中心にいたであろう相川コーチ自身からこの件についてコメントを出すことはあまりなかったように思う。


「とくに先発は球数のことやあらゆる面を考慮するとストライクを先行させなければいけない。


2ストライクに追い込むまでの被打率というのは高いわけですし、ストライクゾーンでいかにカウントを進めて追い込んでいけるか。


今の野球はそこが大事だと思うので、初球の入りや追い込むまでの過程、そしていかにして一球で仕留めるかを明確にしてやって来た部分はあります。


その点において昨年はいい部分も見られました。


しかし今年、同じように行くとは限らないので、引きつづきバッテリーとはコミュニケーションをとっていきたいと思います」


冒険と無謀な挑戦とは隣り合わせのものなのだろう。そして、この二つを分けるものは周到な準備に尽きると思う。


昨年のベイスターズは、ストライクゾーンでの勝負という挑戦を冒険として成立させるために、どのような準備を行ったのだろうか?


この点についても相川コーチが触れている。


「そうですね。特にカーブはピッチャーに意識するように伝えました。


奥行きや緩急、他のいいボールを活かすという意味からもしっかり投げてもらいました。


高めもそう。低めが基本とはいえ、高めはファウル、フライ、空振りのゾーンになりますからね。


本当、バッテリーは勇気を持ってやってくれたと思いますよ。


カーブのような遅いボールを投げるのはリスクをともないますし、またゾーンぎりぎりに外れる高めは、甘くなれば長打ゾーンでもありますし、反応がなければカウントを悪くする恐れもある。


そこはもうキャッチャーというか、ピッチャーが頑張って投げてくれました」




昨年の試合で、低めに制球するのが持ち味の大貫晋一が高めのボールゾーンギリギリにストレートを投げ込む姿を見て、私は、彼のボールが上ずっているのではないかと心配したことを覚えている。


たしかその時、テレビの解説者も、今日の大貫はボールが高くて危ないですね、と言っていたように記憶している。


しかし、その試合で大貫投手はHQSを成し遂げ、チームは勝利した。


その時、私は、チームとして高めを使うという戦術に取り組んでいるのだ、と言うことを意識したのだが、今日の相川コーチのコメントで図らずもその答え合わせができたことになる。



カーブについても、大貫投手や濱口投手そして今永投手など、多くの主戦投手が積極的に使い、初球をカーブから入るなどというシーンも多くみられた。


交流戦で、当日絶好調だったライオンズの山川穂高選手に上茶谷投手がカーブを連投した時は流石に痛打されていたが。チームオーダーが徹底していれば、バッテリーもこうした冒険をすることができる。


しかし、相川コーチも言っている通り、これらは全て昨年のことであり、今年はまた新たな冒険に乗り出す必要がある。


相川コーチたちは、既にそのための準備を進めていることだろう。



【相川コーチたちの今年の冒険】


相川さんはバッテリーコーチという役割に加えて、今年から作戦コーチを兼任することとなった。長年ヘッドコーチを務めた青山道雄さんは巡回コーチになる。


作戦コーチとしてのミッションは得点力の向上。


昨年のチーム総得点は497(リーグ4位)で一昨年よりも60点ほど少なく、三連覇を狙うヤクルトに競り勝って悲願の優勝を遂げるためにはこれがポイントになるのは間違いない。


「これは石井コーチも言っているのですが、他球団の人間としてベイスターズを見たとき、このチームの一番の怖さはなにかと言うとやっぱり“打線の爆発力”なんですよ。


昨年、細かいプレーができるようになってきて、そこを踏まえ持ち前の爆発力を改めて加えることができれば、ヤクルトともいい戦いができるし、優勝も見えてくるのではないかと思っています。


また投手に関しても、先発も中継ぎも、昨年からもう一枚二枚、厚みを増せる可能性があると思っているので、期待をしてもらいたいですね」


そういえば、年頭の三浦大輔監督のインタビューでも、「1点を確実にとりに行く作戦がチームの得点力を下げる結果になっていたこともあったのではないか。今年はスモールベースボールと大胆に打たせて行く戦術を併用していきたい」と言う趣旨のことを語っていた。



相川作戦コーチの起用はこの2つの戦術のバランスの良い運用と言う狙いがあってのことのように思われる。


ラミレス監督の頃から思い切り打って行くと言う戦術だったチームが、スモールベースボールで確実に1点をとる野球ができるようになり、そして、今年の冒険は、


スモールベースボールを基本にしつつ、ここぞと言うときの狙いすました打線の爆発


と言う強いチームの野球を展開することになるのだろう。


今年は、動と静、二つの戦術の切り替えに注目しつつベイスターズの闘いを見届けたいと思う。