mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

横浜ベイゴールズを舞台にした漫画『ドラフトキング』実写化決定



1月18日 本ブログでも度々ご紹介してきたクロマツテツロウさん原作の『ドラフトキング』がWOWOWで実写化されることが発表された。


土曜午後10時の枠での連続ドラマで、4月8日から放送、配信が開始される。


主役の郷原眼力(オーラ)にはムロツヨシさんがキャスティングされた。


これまで野球を題材にした漫画やドラマは山ほどあったが、それらのほとんどは選手が主役の作品であり、監督やコーチなどが中心になることはほとんどなかった。


ましてや、個性的で凄腕のスカウトが主役となる本作は極めて異例と言ってよい。


主人公の郷原眼力はベテランスカウトだ。


所属する球団は、横浜ベイゴールズ。


本作をご存知ないベイスターズファンも、んっ?、と思ったでしょ?


そうなんです。この漫画はベイスターズのスカウトの話なんです(確認した訳ではないが、そう思った方が俄然ストーリーも面白くなるのでそういうことにしようよ)。


彼は日本全国津々浦々の社会人、大学生、高校生はもちろん、中学生や小学生まで彼の独自の評価に適った有望選手を見出し、常に彼らの動向や怪我等の状況あるいは必要に応じて家庭事情なども含めて見守り続けている。


ドラフト会議と言うたった一つの時間断面で候補選手たちを評価するのではなく、幼少期から彼らを見守り、将来、プロ野球選手として金の取れるプレイヤーになる完成形を予想し、そのゴールに向けて選手たちの野球人生をデザインしていく、と言うのが郷原スカウトのやり方だ。



ドラフト時点では下位指名でも、プロ野球の世界で頭角を現し、いずれは球界を代表するスターになった選手たちのことを本作では「ドラフトキング」と呼んでいる。


落合博満さん、イチローさん、最近だとソフトバンクからMLBに挑戦する千賀投手などがドラフトキングの代表例だろう。


郷原たちスカウトの目指すところは、人知れず眠っている逸材のポテンシャルを見出し、彼らの野球人生をデザインして、その完成形であるスター選手になるまでに必要なあらゆるサポートをしつつ自軍の戦力を高めて行くことだ。


中でも、各世代のドラフトキングを見つけ、導くことはスカウト冥利に尽きるということになる。


私は本作を愛読しており、中でも、郷原スカウトの独特な視点とブレない行動力が現れるシーンが特に気に入っている。


名場面をいくつかご紹介しつつ、横浜ベイゴールズ、じゃなかった横浜ベイスターズの選手たちに関連して少し説明を加えてみる。





最近だとジャイアンツの中田翔選手、少し前だと同じくジャイアンツの阿部慎之助さんや高橋由伸さん、阪神在籍時の福留孝介さん、阪神や広島在籍時の新井貴浩さんなどのように、たとえ打率が2割台半ば以下であってもピンチに打順が回ってくると、あるいは代打で打席に送られると絶体絶命という感じで追い込まれるようなバッターがいた。


郷原スカウトのこのセリフは、彼らを念頭に置くと分かりやすくなる。


恐らく、彼らはシーズンを通じての打率などあまり重視していなかったのではないか?


打つべきところで打って決められるかどうか、その一点だけに全てを賭けて打席に入り、ピンチで怯んだバッテリーに対してとんでもない精神的圧力をかけてくる。


強いチームには、やはり、こういう凄みのあるベテラン強打者が控えていることが多い。


翻って我がベイスターズを見てみると、伝統的にこうしたバッターが少ない印象だ。


特にここ数年は、宮﨑敏郎、佐野恵太、牧秀悟のようにむしろ数字が良い好打者が揃っているのがアドバンテージになっている。


もちろん、彼らがレギュラーになるのは素晴らしいことなのだが、もう一枚、ベンチに控える凄みのある強打者が欲しい。


候補になるのは大田泰示選手くらいだろうか?


彼はこれまでスタメンで4打席に立って実力を発揮するタイプと言われてきたが、自身のキャリア終盤に向かって、上に挙げたジャイアンツの先輩たちのような凄みのある勝負強さを身につけることができれば彼自身にとってもプラスだし、チームの戦術的にも終盤の決定力が大きく向上することになる。




このセリフは郷原ではなく、彼のライバルである毒島スカウトが言ったものだが、さまざまな技術を習得する能力があるゆえに自分は絶対にこれ、というものがなく、誰か別の人のスタイルを取り入れて良さそうな形にまとめることができる選手がいる。


しかし、プロ野球の世界は大変に厳しく、こうした「良さそうな形」では通用しないことが多い。


器用貧乏という言葉もあるように、こうした小手先のスキルは得てして、不器用でそれしかできないという選手が生涯をかけて磨き上げた一芸には歯が立たないということをしばしば見かける。


現在のベイスターズの選手で言うと、上茶谷大河投手はモノマネ上手ということもあり、色々なことに手を出しすぎているような感がある。


先日、三浦監督も「見るたびにフォームが変わっている」と言って、モノマネ禁止令を出していた。


本ブログでも取り上げたが、対照的なのがドラゴンズから移籍してきた京田陽太選手で、「自分の野球人生なので、自己責任。変えない方が良いと思った部分は誰に何を言われても変えない」とコメントしている。


この二人の今シーズンそしてさらにその先のキャリアがどのようになっていくかを注目して見守りたい。




ロマン砲という言葉があるように、綺麗な放物線を描いてスタンドに持っていくだけの力のある長距離バッターはエンターテインメントとしてのプロ野球の最大の花形だと思う。


プロ野球の試合時間はおよそ3時間。そのうち90%以上はピッチャーの投球のコースや高低などの数cmからせいぜい数十cmのスケールの中での攻防だし、ゴロが野手の間を抜けるかどうかなどというのも数十cmから数mのスケールでしのぎを削るものだ。


しかし、試合の中でほんの一瞬、こうしたプレーのスケールが一気に2桁から3桁大きくなることがある。


それがホームランだ。


強打者を迎えて外角のスライダーの出し入れでカウントを整えるピッチャー。


彼はボール一個分、時には半個分のコントロールのために投球フォームから指先の力加減までを精密に制御してバッターと対峙する。


しかし、それが数cm、わずかに甘くなった瞬間、ホームラン打者のバットが一閃し、打球は大きなアーチを描いて100m以上離れた彼方のスタンドに消えて行く。


投手からすると天変地異のような、この暴力的な決着に我々ファンも歓喜し、またある時は悔し涙に暮れて痛飲する夜を過ごしたりもする。


ホエールズ・ベイスターズにもこういう天変地異を起こすことのできる歴代のホームランアーティストたちが居た。


最後のクジラと言われた田代富雄コーチ、多村仁さん、村田修一さん、そしてMLB挑戦中の筒香嘉智選手などがその代表例だ。


外国人選手で言えば、タイロン・ウッズ、トニ・ブランコ、ホセ・ロペス、そして現役のネフタリ・ソトやタイラー・オースティンといった名前を挙げることができる。


2022年シーズン前年の最下位から2位に浮上したということで明るい話題が多かったが、ホームランということでは大いに物足りなかった。


牧、佐野、宮﨑の3人はリーグを代表する好打者だが、どちらかと言えば中距離打者であり、シーズン40本以上のホームランを期待するのは難しいだろう。


やはり、ソト、オースティンの二人の復調に期待したい。


彼らの、打った瞬間にそれとわかるホームランはやはりベイスターズの大きな魅力なのだ。





守備職人という言葉があるように、投手が安心できるような確実性の高い野手は非常に重要だ。


彼らは基本的には地味な存在だが、時として、ヒット性の打球をアウトにする、あるいは大ピンチでチームを救うビッグプレーなどで一躍花形に躍り出ることもある。


特に、ロースコアが予想されるエース同士の投げ合いや、僅差でリードした試合終盤など、センターラインと言われる、ショート、セカンド、センターという守備位置に絶対的な信頼性のある野手を配置することができるかどうかはチームの戦績に直結する。


ドラフトキングでも、郷原スカウトは単に優勝するということではなく、常勝軍団にすることが目標だ、と語り、そのためには打撃はどうでも良いから守備が超一流の選手が欲しい、という上記のシーンにつながる。


そして、守備に光るものがありながら、走攻守の三拍子が揃ったプレイヤーを目指す選手に向かって、


「そんなもん、言い方を変えりゃ取り柄がねーってことだろーが」


と言って取り合おうともしない。


確かに、振り返ってみると、常勝軍団と言われたチームには守備に特化した選手たちが黒子のようにチームを支え、時折見せるビッグプレーでファンを魅了してきた。


今のベイスターズでは、柴田竜拓選手や大和選手などが守備型で、新人の林拓真選手などもその部類かも知れないが、彼らはまだ守備だけ食っていくと覚悟するほどの割り切りをしているようには見えない(大和選手などは勝負強いバッテイングがあるのでそもそもその必要はないかも知れないが)。


ここ数年、どのポジションも選手層が格段に厚くなり、チーム内の競争が激化しているベイスターズで一軍生き残りを賭ける戦略として、こうした守備に特化した生き方(あるいは走塁に賭けた生き方)などのスペシャリストを指向する選手たちが増えてくることを期待したい。



最後に、郷原スカウトから、素晴らしい素質を持っている若い選手たちへ一言。




森くん、見てる?