2023シーズンの数値目標と春季キャンプのメンバー発表
昨日(1月23日)のスタッフミーティングで、今シーズン、チームが全体として掲げる3つの具体的な目標、そして春季キャンプのメンバーの割り振りが決定され、今日発表された。
【今シーズンのチーム目標は今まで以上に具体的かつ定量的】
昨年のシーズン終了後から、各コーチが昨年の課題を挙げ、それに沿ってアナリストの方々が分析と検討を重ねて三つの定量的な目標を設定した。
ミーティング後の三浦監督の言葉によれば、三つの目標というのは次の通り。
「今年、投手は“3球カウント構成率”、野手は出塁率、走塁面では“UBR”を意識していこうという話をしました」
3球カウント構成率については昨シーズンから斎藤隆コーチらが話していたが、これは、投手が3球目までに2ストライクを取り、有利なカウントをつくることのできる確率を意味している。
昨年のキャンプでは「ストライクゾーン内で勝負する」ことを強く求め、試合では「80%の確率で投手有利のカウントをつくること」を目標に掲げていた。
それだけが理由と言うことではないと思うが、チーム防御率は一昨年の4.15(セリーグ最下位)から昨年3.48(同3位)へと大きく改善された。
今季はこれをさらに押し進める。
「3球目までにいかにストライクを先行するか。
相手打者を早く追い込むように、キャンプから意識して取り組んでもらいます」
ツーストライクを取られて追い込まれると、バッターとしては、ワンバウンドするフォークボールなどのボールになる変化球からストライクゾーンの速球など様々な可能性に備える必要が生じるため、狙いを絞ることができない。
このため、ほとんどの打者は追い込まれてからの打率は大きく低下する。
従って、バッテリーとしては早めにツーストライクを取って有利なカウントを作りたいというのは当然だ。
一方、バッターとしても追い込まれると不利なことはわかっているので、早いカウントからストライクは積極的に打っていこうということになる。
ラミレス監督が掲げていたファーストストライクを積極的に狙うというのはこの戦法だ。
バッテリーが3球カウント構成率を高めるためには、従って、ファーストストライクを狙っているバッターが手を出してもヒットにされないようなボール、いわゆるカウント球を磨く必要がある。
投手によっても異なるだろうが、キレのある速球派ピッチャーであれば、わかっていても前に飛ばずファウルでカウントの稼げるストレート、あるいは、変化球が得意なピッチャーは相手の意表を突くスローカーブ、カウントを稼ぐための高めのフォークなどが考えられる。
早いカウントからストレート狙いのバッターに対しては、カットボールやツーシームなどの動くボールでゴロを打たせることも有効だろう。
こうしたことは、昨年から各ピッチャーが取り組み、成果を挙げてきたと思う。
ただ、私の印象としては、3球でツーストライクに追い込んだ後に打者にファウルなどで粘られることも多かった。
3球でツーストライクにすることはあくまでも中間目標なので、アウトをとるというゴールにたどり着くために必要なウィニングショットを磨くことも併せて努力して欲しいところだ。
チームの出塁率についての三浦監督のコメントは次の通り。
「数字的には.320以上、リーグトップを目指す
出塁にはヒットを打つこともそうだが、四球も死球も含まれる。
選手はそれぞれタイプが違う。各々どうすれば塁に出られるかを意識してもらう」
チーム打率ではなく出塁率に注目した理由はなんだろうか?
おそらく、三浦監督の「選手はそれぞれタイプが違う。各々どうすれば塁に出られるか」という部分にその答えがあるのだと思う。
全員が打率を2割7分以上にしろというのは目標としても現実性がない。しかし、打率はあまり高くなくても四球を選んで出塁するということまで含めれば、全ての野手がチーム出塁率の向上には貢献できるだろう。
例えば、昨シーズンの楠本泰史選手の打率は .252だが、出塁率は .322と今季のチーム目標を上回っている。
昨シーズン、優勝したヤクルトの打率は .250(リーグ3位)とベイスターズの .251(同2位)をやや下回っているが、出塁率は .318(リーグ最高。ベイスターズは .308で同4位)であり、得点力の差が生じた原因の一つとしてこの出塁率の差を重視しているということなのだろう。
UBR(アルティメット・ベースランニング)は、盗塁以外の「走塁」でチームに何得点相当の貢献をしたかを表すセイバーメトリクスの指標で、昨年はリーグ4位の5.4だった。
三浦監督によれば、
「昨年は常に1つ先の塁を狙うことを意識して取り組み、成果が出た。
今年は1つ先の塁は当たり前。2つ先を目指そうということで取り組んでもらいます」
とのこと。
出塁率の向上とUBRの改善とは恐らくセットになっていて、チーム全員が、なんとか塁に出る、出たら先に進むという姿勢を明確にすることで攻撃の圧力を増すことが狙いなのだと思う。
昨シーズンのベイスターズは2位になったとは言え、得失点差では-37となっており、いわゆるアルキメデス勝率から見ると2位は出来過ぎという声もある。
チームの掲げた三つの目標は、失点を減少させ、得点を増すことにより、得失点差をプラスに転換させることにつながるだろう。
逆に言えば、それ無くしては優勝の2文字は見えてこない(得失点差がマイナスで優勝したという話は聞いたことがない)。
【春季キャンプのメンバー割を読み解く】
スッタフミーティングで決定された重要事項のもう一つは、春季キャンプの振り分けだ。
まずは、発表されたリストを見てみよう。
A班(宜野湾)45人
<投手 23人> 東克樹、阪口皓亮、伊勢大夢、石田健大、大貫晋一、小園健太、山﨑康晃、坂本裕哉、入江大生、吉野光樹、濵口遥大、上茶谷大河、三浦銀二、橋本達弥、ガゼルマン、笠原祥太郎、京山将弥、平良拳太郎、エスコバー、森原康平、宮城滝太、石川達也、ウェンデルケン
<捕手 4人> 松尾汐恩、戸柱恭孝、伊藤光、山本祐大
<内野手 8人> 林琢真、牧秀悟、森敬斗、柴田竜拓、田中俊太、知野直人、京田陽太、ソト
<外野手 10人> 大田泰示、桑原将志、オースティン、佐野恵太、神里和毅、楠本泰史、蝦名達夫、関根大気、勝又温史、アンバギー
B班(奄美)34人
<投手 20人> 徳山壮磨、三嶋一輝、今永昇太、平田真吾、森下瑠大、深沢鳳介、田中健二朗、池谷蒼大、髙田琢登、中川虎大、宮國椋丞、松本隆之介、櫻井周斗、草野陽斗、加藤大、渡辺明貴、マルセリーノ、今野瑠斗、ディアス、スターリン
<捕手 4人> 益子京右、東妻純平、東出直也、上甲凌大
<内野手 7人> 大和、藤田一也、粟飯原龍之介、小深田大地、宮﨑敏郎、蓮(鈴木蓮)、西巻賢二
<外野手 3人> 梶原昂希、村川凪、大橋武尊
まず、主力選手のうち伸び盛りのメンバーや脂の乗った世代、伊勢大夢、入江大生、石田健大、大貫晋一、濵口遥大、山﨑康晃、牧秀悟、佐野恵太、桑原将志といったところは順当に1軍メンバー主体のA班に選ばれた。
移籍組の京田陽太、笠原祥太郎もA 班。
手術明けあるいは復活途上の東克樹、阪口皓亮、そして平良拳太郎がA班に入っていることは、オフの間の調整も順調にきている証拠なので嬉しい知らせだ。
外国人選手も、エスコバー、ガゼルマン、ソトに加えて手術明けのオースティンの名前がA班にあるのは良い兆候だと思う。
開幕は絶望という論調がメデイアでは多いが、私自身は手術後の経過についてなんら確定的なことを聞いているわけではなく、最近の情報としては、愛妻のステファニーさんとのアフロヘアー姿(カツラでしょう)のツーショット写真が出回っていただけで、少なくとも写真で見る限りは元気そうだった。
彼が受けた手術はそもそもトミージョンではなく、靭帯修復術なので、ピッチャーの利き腕でも7ヶ月で完全復帰ということからすると、10月の手術からもうすぐ4ヶ月が経過することを考えればキャンプ当初から参加してもおかしくはない。
恐らく、守備のスローイングなどは軽めにしつつ、バッティングについては通常とあまり変わらない調整を行なっていくのではないだろうか?
いずれにしても、来週には彼の状態をインターネットなどで視ることができるだろう。
ウェンデルケン投手とアンバギー外野手という二人の新入団の外国人選手も揃ってA班で調整を行うことになった。
WBC出場予定の今永昇太投手はB班で独自の調整。これは、使用球も異なり、3月前半に実戦のある侍ジャパンのスケジュールに合わせるという意味で妥当なところ。
大和、宮﨑敏郎といったベテラン勢はB班だが、これは彼らの自主性に任せたマイペースの調整という特権と思って良い。
難病からの復帰を目指す三嶋一輝もB班スタートで、自分の投球を取り戻すべくマイペースの調整を行う。年末年始の自主トレの情報を見る限りは、思ったよりも早く彼の勇姿を1軍で見ることができるのではないだろうか?
新人では、即戦力として期待される社会人・大卒の吉野光樹、林琢真、橋本達弥に加えて、注目のドラフト1位松尾汐恩捕手が高卒ながら選ばれた。
A班の捕手は、2本柱の伊藤光と戸柱恭孝に山本祐大、そして松尾選手という構成なので、順当にいけば、一軍でマスクをかぶるのは伊藤と戸柱、そして第3捕手に山本祐大という布陣になり、松尾選手はプロのピッチャーのボールを受けて雰囲気を感じる、という参加と見るべきだろう。
三浦監督も、動きが良いので試合でも使ってみたいと言っており、練習試合かオープン戦で実戦を経験する機会もありそうだ。
一人前の捕手になるにはいろいろなことを勉強し様々なスキルを身につける必要があるので、松尾選手には、焦らずファームで多くの出場機会をもらって成長して欲しい。
本人も、いろいろなピッチャーのボールを受け、吸収すべきところは吸収して自分自身がレベルアップしていきたいと語っているので、しっかりと足元を見て、しかしキラキラと輝く目標を決して見失うことなく精進して欲しい。
私が注目したのは、小園健太と勝又温史の名前がA班にあったこと。
小園投手は昨年のゲスト参加のような意味ではなく、1軍で調整してオープン戦から投げさせるということなのではないかと思う。
現実的には、今シーズンはファームで足固めということだろうが、そこで結果を出すことができれば、開幕一軍という可能性もないわけではないだろう。
そして、育成選手では唯一のA班参加となった勝又選手は、昨年からファームでは際立った打力を見せつけており、今シーズン早い時期の支配下選手登録(再)獲得が予想される。
そう言えば、蛯名達夫は外野手登録のままだが、首脳陣も本人も今シーズンはサードに絞ると言っており、宮﨑敏郎がB班スタートのキャンプそしてオープン戦で爪痕を残すことを狙っているはずだ。
ああ、それにしても、いよいよまた野球が始まるんだなあ。
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