mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

サイン会に声出し応援 戻りつつあるプロ野球の日常



感染対策を行えば100%まで入場を可能とするという政府の方針を踏まえ、NPBは先日入場者数の制限を撤廃するとともに、マスク着用での声出し応援を認めることを決めた。


早ければオープン戦から客席で声を出して応援することが可能になりそうだ。


こうした動きと連動して、ベイスターズのキャンプ地である宜野湾でも選手たちによるサイン会などのファンサービスや新人選手たちのスポンサー関連施設訪問などが行われるようになってきた。



コロナ禍が終息したわけではないので、おっかなびっくりと言う面はあるだろうが、徐々に制限が緩和されて日本のプロ野球が本来の姿を取り戻して行くことになる。


ずいぶん長いことスタンドでも息を潜めて応援してきたので、以前の雰囲気がどうだったのか忘れそうになるくらいだが、数万人の観客を集め目の前でプレーする姿を見せるプロ野球と言う興行は、本来、日本でも有数のライブパフォーマンスである。


ライブパフォーマンスなのだから、選手が一方的にプレーを見せるだけではなく、当然、客席からの応援や、時には野次なども飛び交うインタラクションが生じ、スタジアム全体が一体となって盛り上がって行くと言うのが本来の姿だ。


話は少し変わるが、今の中学3年生や高校3年生たちはお互いマスクをつけていない顔をあまり良く知らないまま卒業することになると言う。


コロナ禍でのコミュニケーションというのもあるわけだが、昭和の頃、密な青春時代を送った身としては少し切ないような気もする。


考えてみると、これはプロ野球ファンにも当てはまるのではないだろうか?


この3年以内にプロ野球に興味を持ち、贔屓のチームができて応援するようになった人たちは、ひょっとするとあまり野球場には足を運ばずテレビやインターネット配信での観戦が多かったかも知れない。


そして、現地に行った人たちも無言のおとなしい観客席しか経験していないことになる。


私は、日本のプロ野球の熱狂的な一面を是非彼らに見て欲しいと思う。文字通り、観客席が震えるようなあのどよめきを肌で感じて欲しいと思う。


こればかりはいくら便利になったネット社会でもリモートで体感できるものではない。


さらに言うと、この3年以内にNPBに登録された選手たちも、あの興奮のるつぼの中で野次と歓声にさらされながらプレーしたことはないのだ。


ベイスターズで言えば、森敬斗、坂本裕哉、伊勢大夢、蛯名達夫、入江大生、牧秀悟、小園健太などの2019年ドラフト以降の選手たちがこれに該当する。


そして、タイラー・オースティン、ロバート・ガゼルマンなどの外国人選手たちも本当のハマスタの応援を未だ知らない。


マイケル・ピープルズ、フェルナンド・ロメロ、ブルックス・クリスキーはとうとうそれを知らないままベイスターズを卒業してしまった。


という事で、我々ファンも忘れかけている本来の日本のプロ野球、野球場の熱狂をいくつかの例を見ながら思い出してみよう。



【2016年CSファーストステージの東京ドーム】


ラミレス新監督が就任したこの年、長い暗黒時代を超えてベイスターズが初めてクライマックスシリーズというものに出場した。


それまでは、この時期になるとその年のパリーグのにわか贔屓チームというものを作ってかろうじてポストシーズンの野球に興味をつないでいたが、今度こそ我がベイスターズがCSに出場するのだ。


3位でギリギリ出場権を得たと言うこともあり、ホントに出てもいいんですか?、ドッキリじゃないですよね、といったソワソワした気分もあった。


決戦の舞台は東京ドームで、対戦相手はもちろん読売ジャイアンツ。


私は、全体がジャイアンツのチームカラーである黒とオレンジに染まる中、レフト側のスタンドの一角に居並ぶ全国星覇会の面々と若干のファンたちが自身なさげに被る青い帽子がチラホラ見えると言う絵面を想像していた。


しかし、現実は全く違っていた。


第1戦の試合が始まった時、バックネット裏から三塁側そしてレフトスタンドまで、東京ドームのほぼ半分が青く染まっていたのだった。



長い暗黒時代の間、こんなにたくさんの同士たちは一体どこに隠れていたんだ。


私は記録映画で見た第二次世界大戦のパリ解放時のレジスタンスのメンバーたちを思い出していた。


そして想った。


ああ、生きていて良かった。



なんだか、だんだん思い出してきた。



【ヤスアキジャンプ】


2015年のベイスターズは前半戦を首位で折り返しながらも結局最下位で終わると言う罪深い闘いを見せた。


何年振りだか思い出せないくらい久しぶりに首位に立ったことで舞い上がった私は選手たちのTシャツやさまざまなグッズを大量発注していたが、それらが家に届いた夏の終わりには既にチームは失速し最下位に向けて急降下していた。


大量のTシャツやバッグなどを握りしめて私はいつまでも途方に暮れていた。


しかしこの年、私たちは他のチームにはない私たちだけの自己主張を発明した。


それがヤスアキジャンプだった。


彼の登場曲であるゾンビネーションに合わせてウォウ・ウォウ・オと歌い続けるあのスタイルを始めたのはニコニコ動画のアナウンサーだったかと思う。


それに呼応して、スタンドのファンたちが自然発生的にジャンプし始めた。


僅差でリードしている9回表。


ファンたちはライトフェンスの一角の大きな扉が開いてリリーフカーの日産リーフ(早口言葉じゃないよ)に乗った山﨑康晃が登場する瞬間を固唾をのんで見守っている。


そして、彼の姿が見えた瞬間、音楽が始まり、一瞬で沸点に達したライトスタンドと一塁側内野席は総立ちでジャンプする。


あの瞬間、プレーしているのは選手たちだけではなく、数万人のファン全員が大好きな山﨑康晃と一緒に腕を振っていたのだ。



ああ、何だか物凄く鮮明におもいだしてきた。



【2017年8月 3連続ホームランでサヨナラ勝ち】


2016年に優勝しCSセカンドステージでベイスターズを破ったカープは翌年も強敵だったが、夏になって少し印象が変わった。


そのきっかけがこの試合だったと思う。


有名なゲームだし、このブログでも既に何度も書いているのでくどくは書かないが、3点ビハインドで迎えた9回裏、まず筒香のツーランで一点差に迫ると、続くロペスもレフトスタンドに突き刺さるホームランを放って同点に追いついた。


あの時、ホセ・ロペスは打った瞬間にホームランを確信してバットを放り投げ、チームメイトとそして我々ファン全員を鼓舞するように両手でアピールした。


それに応えるかのように、スタンドの満員の観客は歓喜の声をあげ、手が痛くなるほど拍手をつづけた。


そして、次の宮﨑敏郎が低い弾道でレフトスタンドに飛び込むサヨナラホームランを放つと、世界が震えるほどの大きなどよめきが起きて何だかよく分からない涙が出てきた。



その日友人と観戦していた私は日付が変わるまで関内周辺で呑み続け、さー振り抜けみーやーざーきー、気迫溢れるパワーで、と唄いつづけた。


幸せだった。



これを読んでくださったオールドファンの皆さんもあの興奮を思い出していただけただろうか?


そして、コロナ禍での観戦の続いた新しいファンの皆さんにも少しでも興味を持っていただけたら望外の喜びだ。



私には夢がある。


手術から復帰したタイラー・オースティンが横浜スタジアムでいつかのように逆転満塁ホームランを放つ。


そしてファンの全員が横浜市歌から燃える星たちよの球団歌を合唱し、応援団のトランペットと太鼓が夜空に轟く。


初めて経験する数万人の割れんばかりの声援に驚いた彼は目を丸くして呟く。


YATTA!



もうすぐ野球の季節が始まる