大谷翔平の異次元の打撃を見て牧秀悟は何を感じただろうか?
3月6日 日本代表チームに合流した大谷翔平、L.ヌートバー、吉田正尚のMLB選手3人が初めてスタメンに名前を連ねた今日の阪神戦。
WBC前の強化試合も残すところあと二試合となり、そろそろオールスターメンバーの個の力を実戦モードのチーム力に束ねていく必要がある。
ここまでの強化試合は、投打ともに本来の実力とはかけ離れたプレーがしばしば見られ、ファンも恐らくは本人たちも不安を感じていたのではないかと思う。
しかし、大谷、ヌートバー、吉田の3人はそんなの全然関係ない、と言うことを明確な結果で示してくれた。
好投手の居並ぶタイガースからホームラン2本を含む8得点、失点わずか1という理想的な展開で、まさに皆が待ち望んでいたドリームチームらしい快勝だった。
なんと言っても凄まじかったのは大谷翔平のバッティング。
MLBのトップレベルって本当に異次元なんですね。
150キロオーバーのストレートと鋭く落ちる変化球で侍ジャパンと互角に渡りあっていた才木投手の1-2からのフォークボールを体勢を崩されながら膝をつきそうになり最後は右手一本になってすくい上げた打球がバックスクリーン横の二回席に飛び込む特大のスリーランホームラン。
決して失投ではなかった。
才木投手は狙い通りにストライクゾーンからボールになる最高の高さにフォークボールを制球していたのだが、これに反応して片手でホームランを打ってしまうと言うのは日本のプロ野球では想定外の事象だ。
そして次の打席でもランナー2人を置いて、富田投手の外角高めのストレートを強振してセンターへの2打席連続スリーラン。
これはかなり詰まった当たりで日本の常識だと凡フライ。
つまりバッテリーは打ち取っているのだがホームランにされてしまう。
試合後の情報だと、この当たりでバットは折れていたらしい。
どん詰まりでバットを折ったのにホームランと言うのも日本のプロ野球では想定外の事象だ。
以前イチローさんが、最近のMLBは頭を使わない野球になってきたと仰っていたが、こう言うことなのだろうかと思った。
簡単に言えば、大谷選手のスイングスピードが桁違いに速いので、日本球界で打者を打ち取るための定石が無力化されてしまっている。
当たり損ねや体勢を崩して当てた打球がホームランになってしまうのだったら、もう、空振りさせるしかない。
これは大問題なのだ。
プロ野球の試合を時折見ることがあると言う人たちにとってはスーパーヒーローの出現であり、オリンピックの時と同じような高揚感につながるものとなる。
私もそれと同じ気持ちであることは間違いない。
しかし、それと同時に、ちょっと困ったなと言う思いもある。
“こう言うのを見てしまった後、普段の野球をどう観れば良いのだろうか?”
と思ってしまうのだ。
試合後に西武ライオンズの山川穂高選手が、
“ああ言うのを見ちゃうと、困りますよね。
あんなの別の競技でしょ。
野球つまんねーな、とか思う。
マジで野球辞めたいっすよ”
と言っていたのは異次元の大谷選手への賞賛であるのはもちろんだが、若干、自虐的な本音も混ざっているように思う。
私もちょっと共感してしまうのだ。
さて、この日はスタメンを山田哲人選手と岡本和真選手に譲り、ベンチで声援を送っていた我らが牧修吾選手。
彼は今日の大谷翔平のバッティングを間近で見て、何を感じたのだろうか?
大谷選手のホームランを見てベンチではしゃいでいる姿がテレビの画面に映っていたが、それはチームメイトとして当然のことだろう。
問題は、試合が終わった後、あるいはWBCが終わって彼の日常に帰った後、今日受けた衝撃をどう受け止めてこれから打席に立っていくのだろうか、と言うことだ。
(シナリオ1) あれは異世界の出来事だと割り切って今まで通りのバッティングを続ける
(シナリオ2) 自分もスイングスピードを極限まで高めて長打を量産できるバッターを目指す
(シナリオ3) 自分は中距離打者だと言うことを忘れず、しかし大谷選手の長所や技術を一つでも自分の打撃に取り入れて向上させるように励む
学習モンスターの牧選手はシナリオ1を選ぶはずがない。
そして、常々、自分はホームランを狙うと碌なことにならないと言っている彼がシナリオ2を選ぶ可能性は低いだろう。
賢い彼は迷わずシナリオ3を選択してくれるのではないか。
大谷選手と同じホームランバッターである山川選手や村上選手あるいは岡本選手などはシナリオ2の誘惑に負けそうになるかも知れないし、逆にちょっと拗ねてシナリオ1に向かうかも知れない。
勝手な印象だと村上選手はシナリオ2、山川選手はシナリオ1に向かって行くような気がする。
岡本選手は?
彼は何となく無表情なのでさっぱり分からない。
もう既に眠りについたであろう牧秀悟選手の胸の内は知ることができない。
しかし、何だか得体の知れない自分でも抑えることのできない興奮を感じているのではないだろうか。
大谷翔平が侍ジャパンの一員として参加すると言うことはこれほどの大事件なのだ。
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