mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

佐々木朗希のプロ意識 牧秀悟の意地 小園健太の通過儀礼




3月11日 あれからちょうど12年。


全ての日本人が苦悩した期間だったが、東北の方々のご苦労はどれほどのことであったか。


WBCで今日先発した佐々木朗希投手は陸前高田出身で、震災当時は未だ9歳だった。


肉親を亡くされた彼の胸には、きっと強い想いがあったに違いないが、試合後のヒーローインタビューの彼を見ていると、試合のために、過度にemotional になることを避けようとしているように思えた。


ああ、この若者は既に素晴らしいプロフェッショナルになっているのだなぁ。




【WBC 日本代表対チェコ】


165km/hのストレートと鋭く落ちるフォークボールを軸とした彼らしいピッチングを披露した。


3回2/3を投げて被安打2、奪三振8、与四死球3、失点1(自責0)


初回の失点は二死からツーベースの後、負傷した名手源田壮亮に代わってスタメンの中野拓夢が平凡なショートゴロを悪送球し、その間にセカンドランナーの生還を許したものだ。


源田選手に代わってのスタメンで最初の守備機会ということで大事に行きすぎたのかも知れない。このタイプのエラーというのも国際試合“あるある”のような気がする。


重苦しい立ち上がりとなり、しかも、チェコの先発サトリア投手がストレートの最速120キロ台後半、それに110キロ台のチェンジアップと言う日本の選手達にとってはかなり変則に見えるタイプだったため、遅いボールを待ちきれず、強振して三振、凡退を繰り返していた。


我々ファンはやきもきしていたが、選手達は自信があったのだろう。


2巡目に入った3回には、近藤健介のツーベースを皮切りに、フォアボールを絡めて、吉田正尚の2点タイムリーツーベース、牧に代わってセカンドに入った山田哲人のタイムリーの2本であっと言う間に3-1と逆転した。


4回にも、ヌートバー、近藤健介、大谷翔平のタイムリーと吉田正尚の犠牲フライで4点を追加して7-1とリードを広げた。


事実上、ここで勝負がついたと言う感じだった。



投手陣は、佐々木朗希が4回途中で降板した後、宇田川優希が打者1人をピタリと抑え、5回から宮城大弥が代わりばなに1点を失いはしたものの、その後は全く危なげなく最終回まで投げ切って10-2で勝利した。


昨日の韓国戦で5打数ノーヒットと沈黙した我らが牧秀悟はスタメンセカンドの座を山田哲人に譲り、やや気落ちしているかと思っていたが、TV画面で時々映し出されるベンチ内では元気に声を出し、チームメイトの今永昇太と明るく話し合うなど落ち込んではいないようだった。


そして、6回、7回と走者は出すものの得点に繋がらず停滞感のあった8回裏の攻撃。


先頭の3番大谷翔平の打順で代打 牧の名前がコールされた。


チームを鼓舞するためにベンチで声を出していた牧選手だったが、内心は悔しかっただろうし、雪辱の機会を狙っていたはずだ。


1-2と追い込まれた後の四球目。


高めに浮いた緩い変化球を思い切り打ち上げてレフトスタンドに運んだ。


打球角度40°と言うことなので、かなり高く上がったボールはきれいなアーチを描いてフェンスを超えて行った。




VTRでチェコのカプカ投手の手元がちらっと映ったが、1本だけ爪を立てていたようにも見えたのでナックルカーブだったかも知れない。


牧選手の意地を見せてくれたここ一番での1発だった。


これで彼はWBC本戦でヒット2本を打ち、それがいずれもホームランと言う不思議な状況になっている。


打率は.222だが、OPSは1.189だ。


どこの世界にそんな中距離打者がおるっちゅうねん!



【オープン戦 ベイスターズ対中日ドラゴンズ】


結果から言うと、5-9で打ち負け、オープン戦3連敗となった。


攻撃陣は12安打を放っており、特に長打を含むマルチヒットの林琢真選手が5試合連続安打、そして森敬斗にもヒットが出て好調維持など明るい話題もあった。


春先不調なことが多い印象の神里選手もマルチヒットで、復帰直後の桑原将志もレフト戦を破る鋭い当たりのツーベースで存在感を示した。


彼は今季フォームや形ではなく反応で自由に打つ、と言っているが、彼にはそれが合っているのではないかと思わせるような一撃だった。



昨年ベイスターズに大きく負け越したドラゴンズは雪辱を期しており、今年はなかなか厳しい戦いになりそうだ。


アキーノ選手が新たに加わり、アルモンテ選手が復帰した。


そしてベイスターズのロマン砲だった細川成也が打線にパワーを加えている。


元々投手陣は盤石と言われているチームだけに、、なかなか難敵になりそうな気配がしている。


この厚みを増したドラゴンズ打線に対して、小園健太3失点、吉野光樹4失点、平田真吾1失点、入江大生1失点と登板した投手の中で宮城滝汰以外は全員失点すると言う中程度の炎上となった。


入江投手は不運な当たりもあり、あまり心配する必要はないように思う。


そして、手術明けの平田投手はまだ調整中ということで長い目で見る必要があるだろう。


問題は社会人野球出身、ドラフト2位で即戦力の期待のかかる吉野投手が2回、被安打6、与四球1で4失点と打ち込まれたことだ。


試合後に三浦監督もコメントしていたが、素人目に見てもボールが弱い。


このままではプロのバッターを牛耳ることは難しいだろう。



吉野投手は昨年の都市対抗で優勝したトヨタ自動車の出身だが、体調不良ということで決勝トーナメントでは登板しなかった。


その後、プロ入り新人合同自主トレに参加する時点で、もう問題ないと話していたが、やはり100%の投球ができる状態ではないのではないか?


そんなことを考えてしまう投球だった。


過去の事例を思い返してみても、もしどこかに異常があるのだったら我慢せずに治療に専念した方が絶対に良い。


社会人からの入団ということで焦りはあるだろうが、プロの世界では故障をだましだまし投げる、というようなことでは通用しないのは明らかなのだ。


そしてベイスターズのエースナンバー18を背負う期待の若手、小園健太投手の初先発はほろ苦いものとなった。


ストレートの最速は145キロ程度だったがキレのあるスピンの効いたボールも時折あり、決して悪い訳ではない。


しかし、首脳陣やファンが期待するスケールの大きいピッチャーというイメージとは異なる投球だったと思う。


先日彼の投球を見た谷繁さんが辛口のコメントを出していたのはこういうところなのかも知れない。


それでも、彼はピッチャーとしてのまとまりがあり、バランスのよい投球をするため、ランナーは出すものの予定された3回の二死まで無失点でこぎつけてしまった。


わたしは、このまま大過なくこの若者の初先発が終わることを念じていたが、同時に、このまま終わってしまうと小さくまとまった投手になってしまうかも知れない、という危機感も持っていた。



しかし、やはりプロの世界は(幸い)そんなに甘くない。


3回二死走者なしから、高橋周平、アキーノに連打で2、3塁となった後、アルモンテ選手の当たりは詰まっていたがセカンドの頭上を超えるセンター前ヒットとなり二者生還。


さらに、細川成也を歩かせてから新人の福元選手にもタイムリーを浴びて一挙3点を失った。


この一連のプレーを見ながら、私は通過儀礼という言葉を思い出していた。


これは、ご承知の通り世界のさまざまな文化に見られる男子が大人になるために通り抜けなくてはならない儀式で、恐怖や苦痛を伴うものも多い。


有名なところでは、バヌアツ共和国のバンジージャンプがあるが、これは日本などで行われている観光的なものと異なり、綱が伸びきったところで身体の一部が地面に接触するような本気の度胸だめしだ。


今日の登板は小園健太投手にとって、これから何度もあるだろう通過儀礼の最初のものだったのではないだろうか?


変な言い方になるが、私は、彼が今日打たれたことは長い目で見て彼のために良かったと思っている。