世界に向けて投げた 今永昇太の11球
WBC準々決勝の日本-イタリア戦は9-3で日本が勝利し、チームは試合後まもなく羽田空港からのチャーター便で米国フロリダに向かった。
日本代表は0-0で迎えた3回裏の攻撃で1点を先制した後、岡本和真選手のスリーランホームランで一気に4-0と大きなリードを奪った。
さらに、5回にも村上宗隆、岡本和真の連続タイムリーツーベースで3点を加えたが、この攻撃が試合を決定したと言って良いだろう。
7回には吉田正尚のソロホームランと源田壮亮のタイムリーでさらに2点を追加してダメを押した。
ベイスターズから参加している牧秀悟選手は7番セカンドでスタメン出場を果たしたが、4打数0安打に終わった。
しかし、外野フライでセカンドランナーを進塁させる当たりが2度あり、また、守備でも難しいバウンドに対応する良い働きがあった。
どの試合でもヒットを打つという訳にはいかないので、ノーヒットでも何らかの形でチームの勝利に貢献するという意味では評価できる。
そして、一際目立ったのが、リリーバーとして一回を投げた今永昇太投手のピッチングだった。
5回表の守備で初回から飛ばしていた大谷翔平投手が2つのデッドボールで走者をためたところでフレッチャー選手にライト前の2点タイムリーヒットを許して降板。
4-2とリードは2点に縮まり少し重たい雰囲気になりつつあった。
しかし、大谷翔平の後を継いだ伊藤大海投手が二死一、三塁のピンチをショートフライで脱すると、上に書いたように、その裏の攻撃で村上宗隆、岡本和真の連続タイムリーツーベースで3点を挙げ再び7-2とリードを広げた。
そして6回表、ここでイタリアの攻撃をピシャリと3人で終えることができれば流れは完全に日本のものになると言うタイミングで、栗山監督は信頼する今永昇太投手をマウンドに送った。
今永投手は緊張した面持ちだったが、前回の韓国戦の時よりも腕の振りが滑らかになっているようだ。余分な力がうまく抜けているような状態に見えた。
最初の打者は5番パスカンティーノ選手。
初球152km/hのストレート(回転数2625rpm)を打ったが、どん詰まりのショートゴロとなり、右小指骨折をおして出場した源田壮亮選手が軽快にさばいてワンアウト。
続く6番マストロブオーニ選手にはやはり152km/hのストレート2球で1-1とした後、これまで見たことのない大きなスライダーを外角に投げ込み、空振りを取って1-2。
そして、4球目も同じスライダー。見送ればボールだったと思うが、マストロブオーニ選手のバットが止まらず空振り三振。ツーアウト
7番フリシア選手にもスライダーから入り、ファウル。
2球目は152km/hのストレートを空振りで早くも0-2と追い込んだが、その後、ストレート2球とスライダーがいずれも外れて3-2のフルカウントとなった。
ここで、この日最速154km/hのストレートがインコース高めに決まり、フリシア選手のバットは空を切って空振り三振。スリーアウト、チェンジ。
反撃の狼煙を上げたイタリアに対して味方の攻撃が追加点を挙げ、再び大きなリードを奪ったところで完璧な三者凡退。
これで日本勝利の流れが揺るぎないものとなった。
今大会の栗山監督の起用法そして試合後のコメントを見ると、彼の今永昇太投手への深い信頼がはっきりと見てとれる。
新人の年(2016年)のクライマックスシリーズファイナルステージで初回にカープ打線に捕まって炎上した試合の後、ロッカールームで号泣していた彼の姿を思うと、とうとうここまで来たんだな、と思う。
一人の青年がプロフェッショナルとして高みに上り詰めて行くまでの数年間を日々見続けてきた我々ファンとしては、誇らしいとともに、別れの季節が近づいていることも感じるような素晴らしい投球だった。
自分の本当の頂点がどれほど高いところにあるのか、未だ誰も知らない答えをMLBの舞台で我々に示してくれ。
頑張れ今永、メジャーに行ってもずっと応援するぞ。
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