相川亮二のおとこ気
ファンがプロ野球選手を記憶にとどめる理由はさまざまだ。
江夏の21球
斎藤佑樹のハンカチ
松井の五連続敬遠
などなど
そして何の理由で覚えられるかを選ぶことができないこともある。
相川亮二選手はキャッチャーとしては珍しく打率3割を記録しているし、オールスターにも出ている(いずれも2007年)。
アテネオリンピックに出場して銅メダルをとっているし、侍ジャパンの捕手として第一回と第三回のWBCにも出場している。
史上27人目の全球団からのホームランという記録も達成している。
どれも素晴らしい実績だ。
しかし、私の場合、相川捕手のことで一番記憶に鮮明なのはベイスターズからヤクルトに移籍した後のマット・マートン選手とのホームベース上での衝突事件だ。
2013年9月14日の阪神戦。相川は6回に本塁クロスプレイで三塁走者マートンの強烈なタックルを受けた。吹っ飛ばされてもボールは離さず阻止。
怒りは頂点に達し、マートンにつかみかかった。両軍入り乱れる乱闘騒ぎの中、相川もマートンも暴行行為で退場処分となり、厳重注意と制裁金15万円が科された。また、この年2度目の退場となったマートンは1試合出場停止となった。
思わぬ騒動で、ヤクルトナインの闘志に火が付いた。その裏、内野ゴロの間に先制し、7回にはスクイズで加点し藤浪を攻略。連敗を4で止めた。
マートンのタックルはルール上問題のあるものではなかったが、ホームベース上での走者と捕手の激しい衝突による危険を防止することを目的として2016年に「コリジョンルール」が導入された。
実は、この乱闘事件の前の5月にも、チームメイトの田中雅彦がマートンのタックルを受けて鎖骨を骨折しており、相川は田中に「次やったら、俺がやり返してやるから」と約束していた。
相川亮二はチームメイトのために身を挺し、そして、ルール改正にまでつながることとなったのだ。
そして今回。またしてもベイスターズの旧親会社との確執もありヤクルトそして巨人に移籍し、「もう横浜のユニフォームを着ることはないだろう」と思っていた相川がバッテリーコーチとしてベイスターズに帰ってくることになった。
三球団で正捕手をつとめて得た知恵と技術、そしてジャイアンツでのバッテリーコーチとしての指導経験を活かしてベイスターズ捕手陣の底上げをしてくれるものと期待している。
相川コーチは三浦監督から「力になってくれ」と声をかけられ、こう言っている。
「キャッチャーだけじゃなく、いろんな部分で自分が協力できることや力になれることがあるんじゃないかと。先輩方のコーチも多いですけど、みんなで力を合わせて、優勝を目指していくというところです。」
「三浦監督は僕にとっては兄貴分。寮の時からお世話になってたんで、監督を男にするためにコーチができるというのは僕にとっても幸せ。ぜひ、力になりたいですし、結果をみんなで出したいなと思います。」
そう。相川亮二はおとこ気のある人なのだ。きっと献身的な努力で山本祐大や益子、東妻と言った若手のキャッチャーたちのレベルアップをしてくれることだろう。
これで来年の反攻に必要な力がまた一つ加わった。
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