mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

ホンモノの東克樹がついに帰ってきた




4月6日 昨日の初勝利の歓びを噛みしめつつ今日を迎えた。


午後には横須賀でイースタンリーグの巨人戦があり、右肩三角筋の肉離れによる離脱から復帰し1軍合流間近と言われる大貫晋一が先発した。


ストレートの球速は好調時よりわずかに遅いものの、大貫らしい落ち着いた投球でランナーを出しても失点しない。


6回2/3、99球、被安打4、奪三振9、与四球3、無失点の好投で、順調であれば来週の阪神戦で1軍の復帰登板があるのではないか。


彼にしては珍しく不用意な四球がいくつかあったので、その点を修正して仕上げて来て欲しい。


そして今日の本題は横浜スタジアムで行われた読売との本カード最終戦。


ベイスターズ 4 - 0 ジャイアンツ


勝 東克樹(1勝0敗0S)


負 横川凱(0勝1敗0S)


スターティングメンバー


1番 佐野恵太 (LF)


2番 林琢真 (SS)


3番 宮﨑敏郎 (3B)


4番 牧秀悟 (2B)


5番 桑原将志 (CF)


6番 関根大気 (RF)


7番 N. ソト (1B)


8番 山本祐大 (C)


9番 東克樹 (P)


継投 


東克樹 7回、89球、被安打4、奪三振8、与四球0、失点0


伊勢大夢 1回、16球、被安打0、失点0


山﨑康晃 1回、20球、被安打1、失点0



【関根大気狙い通りの好走塁】


ベイスターズの先制点は5回裏、関根のフォアボールと山本祐大の三遊間をゴロで抜けるヒットで一死一、三塁のチャンスを作り、打席には好投を続ける東克樹が入る。


東はバントを2度ファウルにしてしまいフルカウントとなって6球目、三塁線にうまく転がる絶妙なバントをしてのけた。


サードの岡本が数歩前進して捕球し、ファーストに送球する体勢となったのと同時、いやそれよりもわずかに早いタイミングで三走の関根がスタートを切ってホームに滑りこんだ。


岡本の送球を受けてファーストベースを踏んだのはベースカバーに入っていた吉川尚輝で、彼は関根の突進にすぐ気がついてホームに素早く転送したが間一髪間に合わず、関根の足が先にホームに届いた。



三浦監督は試合後のインタビューで作戦的なことは教えられないと言っていたが、このプレー全体が予め計算されたものだったのは明らかだと思う。


ファーストの中田翔がチャージをかけているのを見て、ベンチがこのプレーを指示したのだろう。


守備側はサード岡本の捕球と一塁送球、セカンドの吉川尚輝がファーストベースに入ってこれを捕球してホームに転送し、これを捕球したキャッチャー大城がサードランナーにタッチする、と言う6つのアクションを行う必要があり、関根大気がこの間にフライング気味にスタートしてホームに滑り込むところまでが一つの戦術だったと思う。


ジャイアンツのサード、セカンド、キャッチャーの動きにはミスも遅れも全くなかったが、それでも関根の生還を阻止することは出来なかった。


VTRで見直すと、東がバントの体勢になった時点で関根は離塁して岡本のすぐ横まで出て来ており、岡本の動きをじっと見つめて最速のスタートのタイミングをはかっているのが良くわかる。


素晴らしいプレーだし、それを確実に決めた関根の走塁センスも光った。


試合後のヒーローインタビューで、関根大気は、プロ野球選手としての時間は有限だと思っているので、1日、1日、自分にできることを精一杯やって行こうと思う、と言う趣旨のことを答えていた。


彼のこのひたむきな姿勢が、関根大気と言う代わりのいない唯一無二の選手として皆の記憶に刻まれる活躍につながることを私は心から祈っている。



【楠本泰史の目覚め】


開幕戦からクリーンアップを任され、タイラー・オースティン不在の穴を埋める最有力候補と目されながら5試合ノーヒットが続いた楠本泰史は心に記するものがあったはずだ。


特に、京セラドームの阪神戦で佐藤輝明のライト前ヒットを楠本が緩慢に捕球し山なりのボールでセカンドに送球する間に佐藤がセカンドに進むと言う事件があり、このプレーでは三浦監督からかなり叱責されたことと思う。


試合後のインタビューで三浦監督も楠本は強い想いがあったと思う、と語っていた。


今日の彼の見せ場は7回裏


二死一、二塁で好投を続けて来た東克樹の代打として打席に入った楠本は、ジャイアンツの2番手、右サイドスローの船迫投手の3球目がややシュート回転しながらベルトの高さに浮いて来たのを見逃さずバットを一閃。


腰が少し一塁方向に傾く彼独特の美しいスイングから放った打球は大きな弧を描いてライトスタンド中段に吸い込まれて行った。



船迫投手の失投だったとは思う。しかし、このチャンスに代打で登場してこの唯一のチャンスをモノにできたのは楠本泰史の素晴らしい集中力と打撃技術だったことは間違いない。


ヒーローインタビューでは、ファンの皆さんの歓声がボールをスタンドの運んでくれた、と控えめなことを言っていたが、これをきっかけに本来のバッティングを見せてくれることを期待したい。


彼の調子が上がってくれば、5番ライトで起用したくなるが、そうすると関根大気をスタメンで使えなくなると言うジレンマがある。


不調のソトを下げて佐野恵太をファーストに入れ、関根大気と楠本泰史を2人とも外野で使うと言う選択肢もあるが、ソトが復調してくれた場合のリターンの大きさを考えるとそれも難しい。


思い切ってソトをファームで調整させるか?うーん


こればかりは3人の状態を一番良く把握している首脳陣に任せるしかないだろう。


【久しぶりに見たホンモノの東克樹】


2018年の春季キャンプでひときわ目を引くほど強いボールでは遠投のキャッチボールをしている小柄な新人投手がいた。


私が東克樹のプレーを見た最初の瞬間だった。これまで見て来た多くの優れた新人投手たちの誰とも異なる強い光を放っていた。


そして、その年のシーズンが開幕すると、小柄でしかも童顔の彼がその印象とは真逆の力強いストレートと一級品のスライダーやチェンジアップで読売や阪神のおじさん達をバタバタと打ちとって行く姿を見るのは痛快そのものだった。


結局、東克樹は2018年シーズンに11勝を挙げる大活躍で新人王に輝いた。


その年はエース今永昇太が絶不調だったが、今永と東の2人が好調で揃う年がベイスターズの優勝する年になるだろう、と信じていた。


しかし、東克樹の成功物語の第二章は皮肉なものとなった。


肘の故障で新人年の輝きは失われ、騙し騙しかわす様なピッチングを見ることが多くなって行った。


そして、2020年2月にとうとうトミージョン手術を受け、そこから長いリハビリが始まる。


手術後、時間が経つにつれ、肘自体の不安は無くなって行ったようだが、もう一つの問題があった。


手術前の彼の投球フォームはアーム式と呼ばれるもので、肘の負担がかなり大きい。


以前と同様のフォームで投げ続ければ、手術と長いリハビリの末に手に入れた新しい靭帯も早晩同じようにボロボロになってしまう。


肘に負担のかからないフォームで以前と同等以上の出力が得られる投げ方を見つけるための試行錯誤にはリハビリ以上に時間がかかったのではないか?


しかし、私たちは今日、その完成形に近い姿を見ることができたと思う。


今日の東克樹のストレートはほぼ全てが140キロ台後半、最速148km/hと言うものだったが、その数字以上に威力があることはバッターの反応でわかる。


そして、低めの素晴らしいコースに制球されたボールも多かった。


生き物のように伸びてくる低目の強くて速いストレート。



2回表のジャイアンツの攻撃で先頭の岡本和真にヒットを打たれた直後、中田翔にフルカウントから投げた6球目の膝下のストレートは本当に素晴らしかった。


あの中田翔がまともにスイングできず、しどろもどろになってしまうほどだった。


とうとうホンモノの東克樹が帰って来た。