mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

福敬登投手 おめでとうございます




私がプロ野球というスポーツに魅了され、一年の半分近くの期間、毎日心血を注いで観戦するのはそれが真剣勝負の場だからだ。


私たちは皆仕事の場などで“たたかって”いるとも言える訳だが、プロ野球の世界ほどハッキリと勝負がつくことはほとんどない。


だからこそ、残酷なまでに勝者と敗者の明暗を際立たせる勝負と言うものに熱中するし、そこで勝つために異常なほどの熱意を持って練習し技術を研ぎ澄ます選手たちを応援する。


しかし、それだけでは無い。


勝負の厳しさだけが重要な訳では無いのだ。


プロ野球にはスポーツマンシップがある。


厳しく残酷な勝負の世界だからこそ、フェアプレイに努め、ライバルを思いやる気持ちは一際鮮やかに輝く。



今日の試合は0-1で完封負けした。


同じ週に2度も0-1の完封負けを喫すると言うのはあまり記憶にないが、まあ良い。


今日の試合のハイライトは勝ち負けとは別のところにあった。




話は先月の初めにさかのぼる。


復帰を果たしハマスタでヒーローインタビューを受けたあの日、三嶋一輝は試合後、ドラゴンズファンの陣取るレフトスタンドにファンサービスのボールを投げ込んだ。


そこには「福投手もきっと大丈夫」というメッセージが直筆で書き込まれており話題になった。


三嶋投手と同じ「胸椎黄色靭帯骨化症」の手術をし、復帰を目指してがんばっていた福敬登投手を応援するファンに向けてのエールだった。


“本当はヒーローインタビューで言いたかったんですけど、勝ったチームの選手がそういうことを言うのを嫌がる人もいると思ったので、ボールに書いたんですよ。



福からは、同学年の福谷(浩司)を通じて連絡をもらったんですけど、僕が経験して知るかぎりのことは伝えました。


本当、この病気のつらさって、なってしまった当人にしかわからない。


だから福のことは気になるし、彼のためにも、またこの病気で苦しんでいる人たちが見ているんだって思って、僕はがんばりたいんですよね”


そして今月、復帰登板を果たし勝ち投手となった福敬登はドラゴンズファンのいるスタンドに「もう大丈夫」と書いたボールを投げ込んだ。



さて、今日の試合だ。


ドラゴンズの先発小笠原投手は好調でなかなか付け入る隙を与えない。


こちらも好投するガゼルマン投手が石川選手に打たれたソロホームランの1点だけに抑え、0-1のまま試合は終盤へと進んだ。


8回表、ドラゴンズ2番手の祖父江投手から代打の楠本泰史がフェンス直撃のツーベースを放ち、無死二塁のチャンスとなった。


続く代打の山本祐大は送りバントを失敗したが、未だ一死二塁とチャンスが続く場面で福投手がマウンドに上がった。


そして、手術前よりもパワーアップしているのでは無いかと言う素晴らしい投球で佐野恵太と関根大気を連続三振に打ちとりベイスターズ最後のチャンスの芽を摘んだ。




試合後、ヒーローインタビューでお立ち台に上がった福投手は、「ドラゴンズファンの皆さん、ちょっとすみません」と断ってから次のように切り出した。


“今も残ってくださるDeNAファンの皆様、皆様のおかげで、並びに三嶋選手のおかげで僕はここまで投げられるようになりました。


本当にありがとうございました”


そして、彼は帽子をとって深く一礼した。


場内からは敵味方を問わず、割れんばかりの拍手が送られた。


“三嶋さんのおかげで僕はここにいると本当に思っています。


それから、ドラゴンズファンの声援の力が、ああいう厳しい場面でも自分のパフォーマンスが出せたのだと本当に思っています“


試合後にスタンドへ投げ込む記念球には「三嶋さんのおかげです。本当にありがとうございます」と書き込み、3球のうち1球をレフトスタンドのDeNAファンへ届けた。


福選手のコメント。


”ああやって僕が(ボールを)投げ込みにいって、DeNAファンの皆さんが拍手してくれた。


ああいうムーブメントが起きたことで「もっと頑張ろう」と思えました“


今日は勝ち負けよりも、三嶋一輝と福敬登の二人の間の友情とスポーツマンシップの方が大事なことのように思えた。


ああ、やっぱり野球っていいなあ。


末筆ながら、今日はこの二人にMLBのレジェンドのこの言葉を送りたい。




“決してあきらめない人に勝つのは難しい“


ベーブ・ルース