mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

宮崎敏郎は1000試合かけて何を積み上げてきたのか





田中将大投手の好投で抑え込まれた昨日の試合でも宮﨑敏郎だけはソロホームランを放ち一矢報いていた。


思い起こせば、主軸に故障が相次ぎ「宮﨑個人軍」と言われていたあの夏、そして伝説となった3者連続ホームランで逆転サヨナラ勝ちした8月のカープ戦など彼は常に打線の中心にあってチームを鼓舞し続けた。


その宮﨑が今日の試合で1000試合出場という節目を迎えた。


まずはその試合を簡単に振り返ってみよう。



【試合展開】


ベイスターズ 11 - 3 イーグルス


勝 東克樹 5勝 2敗 0S

負 瀧中瞭太2勝 3敗 0S


本塁打 関根大気 3号(7回表ソロ)


初回のイーグルスの攻撃では、牧秀悟がセカンドゴロをファンブルしてしまいノーアウトの走者を出すと、盗塁、送りバントで一死三塁というピンチを迎える。


ここで、東克樹が4番フランコ選手に投じた4球目は真ん中高めに浮くストレート。まあ、失投と言うべきボールだっただろう。


これをセンター前に打ち返されて1点先制された。


昨日に続いて嫌な点の取られ方だったが、直後の攻撃で打線が繋がった。


一死からタイラー・オースティンが瀧中投手のスローカーブを待ち構えてレフト線を破るツーベースで出塁すると、続くネフタリ・ソトも同じアプローチでレフト線を破るツーベースを放ち1-1の同点。


さらに、続く桑原将志もレフトへのライナー性のヒットを放ったが、これを小深田が後逸して2-1と逆転すると同時に桑原はサードまで進んだ。


それにしても、昨日の記事で桑原が8番にいる理由というのを書いた翌日に彼の打順を7番に上げるとは。


得点圏での期待度が戸柱>桑原>山本祐大ということでこの打順になったとしか思えない。まあいいか。



続く京田陽太も低めのボールを上手く打ってセンター前に運び、この回3点目が入った。


3回にも一死一、三塁からオースティンが今シーズン初打点となるタイムリー内野安打で4-1。

さらに、一死満塁となって桑原将志がレフトへの犠牲フライで一点追加。5-1と引き離すことに成功した。


続く4回にも無死満塁で宮崎敏郎がフルカウントからレフトへのタイムリーヒットで6-1。


なおも無死満塁のチャンスで4番牧秀悟は2-0のバッティングチャンスにセンターへの2点タイムリーヒットを放ち、8-1と試合を決めた。


この後、一死満塁の場面で桑原が2打席連続となる犠牲フライで9点目。久しぶりの猛打爆発でベイスターズが完全に試合の流れをつかんだ。


その頃、東克樹は初回のフランコへのストレートの失投を修正し、3回までに5三振を奪うなど立ち直りを見せており、さらに打線の援護を受けて余裕ができたのか、打たせてとるピッチングで6回までイーグルスにチャンスを与えなかった。



7回には京田の代打でヒットを放った大和を一塁において、二死から関根大気が今シーズン第3号となるホームラン(うち一本はランニングホームラン)をライトスタンドに放り込み11-1とした。


助さん、格さん、もういいでしょう。フォッ、フォッ、フォッ。



東は7回裏に一死満塁のピンチを迎えたが、そこから伊藤、黒川を打ちとって無失点で切り抜け、HQSで先発の役目を全うした。


7回、108球、被安打5、奪三振7、与死球1、失点1(自責0)


2番手で登板した石川達也はセンター桑原のファンブルとその後の転倒で1点、さらに自身のワイルドピッチでもう1点失い、最終的なスコアは11-3となったが、まあ良いでしょう。


石川はサウスポーらしいキレの良いストレートをクロスファイヤー気味に決めるなど、投球自体は決して悪くなかったと思う。


終わってみれば、17安打、11得点の猛攻で交流戦最初のカードを勝ち越し、阪神が敗れたために久しぶりに首位とのゲーム差を5に縮めた。


関根と牧が猛打賞。牧は6打数4安打2打点の固め打ちで、打点部門のリーグ単独1位(打点34)となった。


そして、オースティンと桑原がマルチヒット。特にオースティンがほぼ二年ぶりに期待できる状態になってきたことが嬉しい。



【宮﨑敏郎の1000試合】


宮﨑敏郎は佐賀県唐津市出身で、地元の県立厳木(きゅうらぎ)高校から日本文理大学に進学し、九州大学野球リーグで2度の首位打者、3度のMVPとベストナインを獲得している。


その後、社会人野球では10社以上で採用見送りとなったが、最終的にセガサミーに入社し、そこでセカンドを守り主に3番打者として活躍した。


あまり注目される機会のなかった宮﨑の野球人生の転機となったのは、2012年の都市対抗野球大会に東京第三代表セガサミーの一員として出場した際、初戦の日本通運戦で8回に逆転満塁ホームランを打ったことだった。


都市対抗で逆転満塁ホームランを打った時の宮﨑敏郎


ジャイアンツOBの長嶋茂雄さんはセガサミーの会長と親交が深く、ちょうどこの日東京ドームに観戦に来ていて、宮崎のこのバッティングに大いに感銘を受けたようだ。


真ん中高めのストレートだったと思うけれど、満塁の場面で一発で決められるのは素晴らしい、という趣旨のことを当時仰っていたと思う。


この日から小柄だが非常に高い打撃技術を持ちミート力もあるということでプロ野球界からも注目されるようになり、2012年のドラフト6位でベイスターズに指名され、入団した。


入団以降はもはや伝説化している「よそ見事件」などもあり、守備難が指摘されたこともあったが、放っておくといつまででも練習していると言われる彼らしく精進を重ねて不動のサードレギュラーの地位を確立した。


2017年には .323で首位打者のタイトルを獲得し、その後も、2018年、2020年、2021年、2022年と5シーズンにわたって3割以上の打席を記録している。


ここまでの通算成績は次のとおり。


打率 .305、安打1070、二塁打203、三塁打4、本塁打128、OPS .834


誰もが認めるとおり、彼の打撃技術は球界トップクラスで、しかも、小学生の頃からほとんどフォームは変わっていないという。


このブログでも何度か書いているが、彼がクルリと一回転して内角のボールを引っ張ると、打球は決してきれずに真っ直ぐにレフトスタンドに向かって飛んでいく。


横浜スタジアムで私のよく観戦する席はレフトのポールとホームベースを結んだ線の延長線上にあるため、同様の打球をしっかりと見届けることができるのだが、あのコースのボールを打ってどこまでも真っ直ぐ飛ばすことができるのは、球界広しとはいえ宮﨑敏郎だけだ。


その秘密が少しだけわかるような記事(宮﨑選手自身が自分のフォームを解説したもの)を見つけたので紹介しておきたい。


https://www.nikkansports.com/baseball/news/202209180000071.html?mode=all



”僕は小学生のころから、基本的に同じような打ち方をしています。体が小さかったんですが、人よりも遠くに飛ばしたいという思いが原点。自分の中で、ボールを捉えた瞬間に一番力が入るのが、今のフォームです。


「ここに当たればここに飛んでいく」「ここに当たればこっちに飛んでいく」っていう感覚を探りながらやっていく中で、たどりついたんだと思います。


僕のフォームは少し複雑に見えるかもしれませんが、意識していることはシンプルです。最終的に大事にしているのは左足。なので、まずは下半身の動きから見ていきます。


(1)では両足のつま先に力を入れて、しっかり地面をかむイメージです。右足にも左足にも力が入っていますが、(重心の意識は)右に8、左に2くらいです。


動きだしの(2)では、右半身に力をためている状態なんですが、左足にめちゃくちゃ力が入ってます。見た目では分からないかもしれませんが、どちらかというと、軸足の右足よりも、左足の方を意識しています。


そして、左足に力を入れながら、来るボールに対して探ってるっていう感覚が(3)。左足を地面につくタイミングを探っている感じです。そのまま、(8)くらいまで左足に力を入れてる状態。インパクトの(9)くらいまでは左足しか意識していません。力を入れている部分は、バットを出し始める(7)からインパクトの(9)の間は、左足の親指だけ。前方向への力を逃さないようにしっかり受け止めるイメージです。


次に上半身です。構えの(1)では、腕をなるべく体に近づけた状態にしています。内→外へは対応ができますが、逆の外→内は難しい。(8)、(9)で自然体で回るために、グリップも含めて腕を体の近くに、という意識です。


どちらかというとバットの重みを使って打ちたいタイプ。なので(1)~(6)までは、腕に一切力を入れていません。グリップは(3)で1度落とし、そこから上げてきていますが、この動きも力は入っていません。(4)でバットのヘッドが(投手寄りに)入ってくるのも、バットの重みを使いたい意識の表れだと思います。


バットの握り方も左右とも第2関節までで包むような感じで、持ってるという感覚はないです。写真では見づらいかもしれませんが、グリップエンドから0・5ミリくらい空けて短く持っていて、操作性も意識しています。少し短く持つことで、左肘が抜けて手首を返さずに打てるので。


(5)くらいが、いわゆるトップの状態ですが、他の選手に比べてトップのタイミングは遅いかもしれません。これは「早めに作りすぎない」ことを意識しているからです。(トップを)早く作って待っておく状態になると、全部が止まってしまうような気がして、ボールに差し込まれる一番の原因になると思うので。感覚的にはゆったり、ゆっくりです。


左足を大事にしているのも、この感覚からです。軸足の右足に意識が寄ってしまうと「待つ」方向に行きがちになってしまいます。待たない状態にすることが、僕のフォームのベースになっています。”


この文章を読んでも、彼が手首を返さずに強くスイングすることを非常に重要視していることがわかる。恐らく、これが彼の「切れない飛球」の極意なのだろう。そして、その修得は非常に難しい。


生涯横浜を宣言した宮﨑敏郎の活躍はこれからもまだ続いて行くことだろう。


そして我々ファンも”生涯宮﨑”を宣言して引退後も含めて彼を応援し、そのプレーを記憶に留めていくのだ。