バウアーはスーパーヒーローではなくもっと素晴らしい別のモノだということがわかってきた
昨日のヒリヒリする様な辛勝から一夜明け、チームは福岡から新幹線で移動してそのまま京セラドームでの試合に臨んだ。
雨の影響は大丈夫だったのだろうか?
アメリカに比べれば移動距離は短いとは言え、それでもプロ野球という興行をほぼ毎日、各地で行っていくというのはつくづく大変なことだと思う。
さて、今日はトレバー・バウアーが先発する日だ。
広島戦での衝撃的な炎上から立ち直り、NPBで活躍するための工夫と努力を続けて来た彼のピッチングはもう少しでこの国でも圧倒的なものになりそうな気配を感じさせている。
今日の出来はどうだろうか?
【試合展開と成績など】
今日の打順は次の通り。
1番 大田泰示(ライト)
2番 関根大気(レフト)
3番 佐野恵太(ファースト)
4番 牧秀悟(セカンド)
5番 T. オースティン(DH)
6番 桑原将志(センター)
7番 京田陽太(ショート)
8番 伊藤光(キャッチャー)
9番 林琢真(サード)
右肋骨肋間筋炎症と診断された宮﨑敏郎はベンチ入りしたもののスタメンからは外れた。試合前にはバッティング練習をしていたそうなので、比較的軽症という事なのだろうか?
お願いだから大事にしてくださいね。
今日のお試し1番バッターは大田泰示選手。このところ素人目にも宜しくないスイングが目立つ彼を今トップバッターでスタメン起用することの真意は何なのだろう?
これでダメだったらファームで復調しつつある蝦名達夫と入れ替えるという伏線なのかも知れないとついつい勘ぐってしまう。
桑原将志は6番。彼だけは1番に起用しない、という強い意志のようなものを感じるのだが、その理由は何なのだろう。
そして、例のタイムリーエラーの後出場機会のないソト選手は今日も蚊帳の外(普通に書いたらダジャレになっていた)。
いえいえ、決して采配に文句をつけようと思っているわけではありません。
部外者には知らせない色々な事情や考えがあってこうなっているのだと思うが、それらを邪推してみるのもプロ観戦の楽しみの一つということだ。
オリックスの先発は山下舜平大投手。ベイスターズとは初対戦で、私も初シュンペイターを楽しみにしていた。
山下投手は下馬評通りの素晴らしい威力のストレートとカーブの緩急をつけたコンビネーションに加え、最近習得したと言う鋭く落ちるフォークボールを操り、初回は三者凡退の立ち上がり。
しかし、序盤は高めに浮くストレートもあり、全く手も足も出ないと言う状態ではなさそうに見えた。
攻略の糸口が垣間見えたのは2回表の攻撃。
先頭の牧秀悟が見逃せばボールでは無いかと言う高めのストレートを強振してレフトへのツーベースとすると、続くオースティンも高めのストレートを捉えてセンターフェンス直撃のタイムリーツーベースで牧が生還して1点先制。
しかし、その裏、二死二塁で痛恨のバッテリーエラーが出て失点。
恐らくはサイン違いでパスボールとなり、後逸したボールが広いファウルゾーンを転々とする間に二走が一気に生還して1-1の同点とされた。
伊藤光の捕球姿勢からすると、恐らくサインは右打者に対するフロントドアのカットボールだったのだが、バウアーはインコースにストレートを投げたため曲がらずにミットの右を素通りして行ってしまったように見えた。
さらに、4回にはバウアー投手の飛翔癖が顔を出し、頓宮選手にレフトスタンド上段に飛び込む大きなソロホームランを打たれた。これで1-2と逆転を許すこととなった。
立ち上がりにストレートを狙われた山下投手が組立てを変え変化球を多く使うようになってから中々ヒットが出なかったので、ここでの逆転は厳しいなと思っていたのだが、案ずるより産むが易し。
6回表、四球の林琢真と関根大気を一、二塁に置いて、ツーアウトから4番牧が緩い変化球に体勢を崩されながらも三遊間を破るタイムリーを放ち2-2の同点に追いついた。
そして、ここでバファローズ側に痛恨のエラーが出る。
レフトからホームへの返球をカットしたサードの廣岡選手がセカンドをオーバーランした関根大気を刺すべく送球し、これが悪送球となる。
そもそもアウトを取れるタイミングではなかったため、この送球は他の野手誰もが想定していなかった。
廣岡選手の送球は右中間を真っ二つに破り、フェンス際まで転がっていった。
これを見逃さなかった関根が生還し、さらに打者走者に牧秀悟も一気にホームまで駆け抜けて結果的には走者一掃と言う形になった。
これでベイスターズは4-2と再逆転に成功。
結局、バウアーは7回まで投げきり、108球、被安打5、被本塁打1、9奪三振、与四球4、失点2(自責1)のHQSで勝利投手となった。
いつもより四球が多く、そこが本人としては納得いっていないようだが、堂々たる内容だ。
ヒーローインタビューで、今日はホームランを一本しか打たれなかった、と言って笑いをとっていたように、飛翔癖も徐々にだが改善されているようだ。
その後、両チームともリリーバーたちが頑張り、4-2のまま試合終了となって、ベイスターズがカード初戦を勝利で飾った。
ベイスターズは、8回に2番手伊勢大夢、9回にはクローザーの山﨑康晃が登板し、それぞれ1安打ずつ打たれたものの、昨日の手痛い失敗から早くも立ち直る姿を見せてくれたのは何より。
ベイスターズ 4 - 2 バファローズ
勝 T. バウアー 3勝2敗0S
負 山下舜平太 5勝1敗0S
s 山﨑康晃 0勝3敗15S
本塁打 頓宮裕真 2号(4回裏ソロ)
今日は牧秀悟がマルチヒットで打率を .288まで上げた。
打点も一つ増やして38となり、タイガースの大山選手と並んでリーグトップタイとなった。
オースティンも打点1を挙げ、久々に頼りになる本来のオースティンの姿が戻って来たようだ。
【トレバー・バウアーは予想していたのと全く違ったが、ある意味もっと素晴らしかった】
サイ・ヤング賞投手で最速100マイル(160キロ)のストレートと変化量の大きい多彩な変化球を操る奪三振率の高いピッチャーということで、来日直後には、NPBで無双するのが確定的と言うような報道が多かった。
私もこの報道が示唆する様な超人的な投球で三振の山を築いていくものと思っていたが、巨人戦以降、驚くほど良いボールが驚くほど簡単に打たれる衝撃的なシーンを現地で観た時、バウアーと言う投手は事前の報道の様なスーパーヒーローの様な人ではないのだ、という事が分かった。
そして、彼自身のYouTubeを見ると、打たれた後は激しく落ち込み、「僕はリーグで最低のピッチャーです」、「頭にボールが当たって死んでしまえばよかった」、「暗闇の中でただじっと座っていたい」などと悲観的なことを呟いている。
そして、彼の定めた24時間ルールに従い、丸一日経ったら全てのネガティブな思いは消し去って、前を向いて練習を始める。
彼の練習はどこか理科の実験のようで、見たことの無い不思議な器具で筋力トレーニングの効果を確認したり、変化球の場合のそれぞれの指の位置や力の入れ方などを投球データと画像解析を見比べながら微調整して行くなどの独自の工夫に満ちている。
彼はMLBでも試行錯誤しながらこうして強打者達と戦って行くための武器を手に入れていったのだろう、と言うことが容易に想像できるのだ。
そして、彼は今、NPBと言う打者の体格やスイングそして野球の戦術や環境も異なるこの異国で適応し、良い成績をおさめるために懸命の努力を続けている。
こうした彼の本質は、YouTubeで彼自身が語った次の言葉に凝縮されているように思う。
「僕は身体能力に優れたアスリートではなくオタクです。そして、オタクの僕が工夫し努力してアスリート達よりも良い成績を残すことができることを実証するために野球をやっています」
こうした彼の取り組みは非常に人間的なもののように思えるし、当初予想していたスーパーヒーローのような超人的投球で日本の打者達をねじ伏せるパフォーマンスよりも興味深く、応援したくなるように私は感じる。
私は、これからもこの素晴らしいオタクの懸命な工夫と努力を見届けて行くことが楽しみでならない。
このブログへのコメントは muragonにログインするか、
SNSアカウントを使用してください。