mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

歴史的な大逆転勝利の舞台にはいつも筒香がいた






晴天の横浜スタジアム、しかし、そこには今日の試合展開を象徴するような強風が吹き荒れていた。


ベイスターズの先発は、4月30日の中日戦で初勝利を挙げてから右肘に違和感があり一旦登録を抹消されていた中川颯投手。


中10日の登板間隔をとったのは念のためということだが、肘の問題は多少なりとも影響があったのかも知れない。


アンダースローらしい浮き上がるようなボールの軌道と精妙なコントロールが生命線の投手だが、打たれたのは高めにやや甘く入ったボールが多かったように思う。


もともとフライボールの多い投手なので、今日のハマスタの強風は彼にとっては不利な条件だった。


打ちとった飛球が風に流され、内野と外野の中間にポトリと落ちるアンラッキーな(阪神側から見るとラッキーな)ヒットもいくつかあった(ベイスターズの内外野の連携にも大いに問題があった)。


詰まらせた当たりがことごとく内野のアンラッキーなヒットとなり、2回に3失点。


その裏、佐野恵太のツーベースなどで2点を返し、2-3と追いすがったが、3回にも先頭の前川選手が死球で出塁すると、そこから、三連打で2点を失い、さらに二死満塁から近本選手に自身初となる満塁ホームランを打たれて9点目を失った。


3回で2-9という大差のビハインド。


これで早くも試合は決まった、両チームのファンのほとんどはそう思ったはずだ。


しかし、あきらめが悪いことをウリにしている我がベイスターズの選手たちはそうではなかったらしい。


3回で降板した中川投手の後を引き継いだ坂本裕哉、三嶋一輝、徳山壮磨、山﨑康晃の4投手が4回から8回までタイガースの攻撃を無失点で凌いだ。


彼らの好投から徐々にベイスターズのペースに転換していったことは間違いない。


そして、攻撃陣は粘り強く得点を重ねていった。


まず、4回裏に佐藤輝明選手の悪送球で出塁した牧秀悟をファーストに置いて佐野と山本の連打で満塁とすると京田陽太の内野ゴロの間に牧が生還して3-9。


京田は2回に続いて2本の内野ゴロで2打点を挙げたことになる。


そして5回、二死一、二塁から佐野のセンター前タイムリーヒットでもう1点。


山本祐大がフォアボールを選び二死満塁となって打席には京田。


タイガース先発の伊藤将司投手の初球、ベルトの高さに甘く入ったストレートを振り抜いた打球は風にも乗ってライトの頭上を越えるツーベースヒット。



タイガースの中継がやや乱れたこともあり、これが走者一掃の3点タイムリーヒットとなった。


京田はこれで本日ホームラン無しの1安打ながら5打点という珍しい記録となった。


不思議とランナーが溜まって打席が回って来るという巡り合わせもあったが、このところ急にクラッチヒッターに変貌した感があることも確かだ。


一旦はあきらめていた試合がこれで7-9と一気に混戦モードへと変わって行き、タイガースベンチは堪らず勝利投手の権利獲得を目前にしていた伊藤投手を降板させた。


好投手の伊藤将司選手が序盤に9点の援護をもらっておきながら5回を投げきれずに降板することになるとは。


いつになく高めに浮く失投が目についたのも確かだが、それを見逃さずに仕留めていったベイスターズ打線の爆発力にも驚いた。


しかし、この時点では、私はまだ「追いつかない程度の反撃」という懐かしいフレーズを思い出している状況だった。


実際、6回には先頭の代打伊藤光がツーベースヒットで出塁したにも関わらず、蝦名、関根、筒香が凡退して全く進めることができず、7回にも一死一、三塁のチャンスを併殺で潰してしまっていた。


このまま阪神が逃げ切るのか、と思っていた8回裏。ここで3段目のロケットに着火された。


マウンドにはタイガースの不動のセットアッパー岩崎優投手、一死一塁で打席に入ったのはブレイクしかかっている蝦名達夫だった。


一球目、岩崎投手のリリースポイントが低い独特の軌道を描くストレートが低め一杯に決まると、これは打てないわという感じだったが、その後はいつになくボールがバラけている印象。


前打者の桑原将志にはストレートのフォアボールを出しており、いつもの岩崎投手とは明らかに様子が異なっていた。


そして2-1からの4球目、外角高めのストレートに負けないように強く振り抜いた蝦名の打球はバックスクリーン横に飛び込む同点ツーランホームランとなった。


蝦名選手にとってはこれが2年ぶりのホームランということで喜びもひとしお。


ガッツポーズをしながらダイヤモンドを一周すると、狂喜乱舞のベイスターズベンチに満面の笑みで駆け戻っていった。



その後、関根がショートゴロで倒れ二死走者なしとなったが、筒香嘉智が打席に向かうとスタジアム全体がホームランを期待してどよめいた。


この期待にこれまで何度となく応えてきた筒香選手。


特に、2-9の劣勢から追いついた今日は、5月6日の復帰初戦で逆転スリーランを放り込んだ鮮明な記憶もあってスタンドのボルテージは最高潮に達していた。


初球はまたしても低め一杯のストレート。


2球目は切れ味鋭いスライダーが決まって0-2と追い込まれた。


そして3球目にバッテリーが選択したのはスライダー。


キャッチャーの梅野選手はアウトコースのボール気味のところに構えていたが、制球に苦しんでいた岩崎投手の投じたボールは真ん中高めに浮いた。


この失投を逃すことなく、一発で捉えた筒香選手の打球は高々と舞い上がり、右中間スタンド中段に吸い込まれていった。



10-9、とうとう逆転した。そして岩崎投手は降板。


勢いのついた打線は未だ止まらない。


続く牧秀悟もフルカウントから代わった岡留投手の甘いスライダーを捉え、静まり返るレフトスタンド上段まで運ぶソロホームラン。



これで11-9とベイスターズのリードは2点に変わった。


9回には森原康平が登場して三者凡退に打ちとりゲームセットとなったが、牧秀悟のホームランによる追加点は森原にとってとても大きな援護点になったと思う。


ベイスターズが7点差以上を逆転したのはこれで11度目ということだが、この11という数字は12球団でトップとのこと(二桁なのはベイスターズのみ)。


直近は2019年のカープ戦で、梶谷とソトが打ちまくって延長戦で逆転した記憶があるが、この時もベンチで仲間たちを鼓舞する筒香嘉智の姿が印象的だった。


そう言えば、もはや伝説となっている2017年8月のホームラン3本での逆転サヨナラ勝ちも筒香のツーランから始まったんだっけ。


あの時は3日続けてサヨナラ勝ちというすごい勢いだった。


筒香嘉智が帰国しベイスターズに戻ってきてから、ベンチの中はあの頃のようにあきらめることを知らない勢いで盛り上がっているのではないだろうか。


それが筒香の存在感だし、ベンチに座っているだけでも醸し出されるリーダーシップなのだろう。


そうだ、筒香とともに、あのワクワクするようなベイスターズの野球が戻ってきたのだ。


明日からは、また、何点負けていても声を上げて彼らを応援することにしよう。


筒香は我々ファンも鼓舞してくれているのだ。