mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

対カープ三連敗は本当に拙攻のせいでその責任は監督にあるのか?





先週は幸先よくヤクルト相手にスイープを決めたが、その後、ホームで広島に三連敗を喫するという乱高下だったベイスターズ。


スポーツ紙やネット上の意見では残塁の山、拙攻続き、首脳陣の無策などという言葉が並んだ。


このうち残塁については、連日の二桁残塁という記録が残っている以上、はっきりしている。


しかし、拙攻や采配の問題というのは主観的な判断がからみ結果論にもなりがちなグレーエリアだと思う。


そこで、試合のない月曜日は連敗の悲しみを堪えてこの辺りを分析してみようと思う。



【拙攻とは何なのか?】


辞書を引いてみると、拙攻=スポーツ等での拙い攻撃などと書かれているが、これではあまり参考にはならない。


ここでは、一歩踏み込んで、拙攻=得点の確率の高い局面で得点を挙げることができなかった攻撃、と考えてみることにする。


結果的に得点が入らなくても、それが相手チームのファインプレーによるものだった場合にはあまり「拙攻」という語感には当てはまらないかも知れないが、後述するデータにそこまでは記載されていないため、ここではこれも拙攻の内としよう。


さて、そもそも、チャンスと言われる場面で点が入る確率はどの程度あるのだろうか?


下の表はプロ野球データパーク(https://baseball-datapark.skr.jp/arekore/run-expectancy/#google_vignette)の情報に基づき作成した、2024年シーズンのNPBにおける塁上走者別の得点確率と得点期待値である。



上に書いた「得点の確率の高い局面」というのをどのように設定するかだが、少なくとも得点確率が50%を上回っているべきだし、しかも、ハッキリと上回っているべきだと思う。


少し恣意的かも知れないが、本稿では得点確率60%以上を「得点の確率の高い局面」(黄色でハッチングした部分)と定義する。


該当するのは、無死で三塁に走者のいる場合(三塁、一、三塁、二、三塁、及び満塁)と一死二、三塁及び満塁の5つの局面だ。


無死二塁というのは大きなチャンスのように思うが、得点確率は50%を超えるものの60%には達しない。走者を三塁に進める送りバントが成功すれば一死三塁となって得点確率は66%程度に上がるのだが、やはりこの場面での送りバントは難しいということだろう。


一死一、三塁も大きなチャンスだと思っていたが、得点確率は同じく50%を超えるものの60%には達しない。これはファーストランナーがおり併殺打の確率が高いためと考えられる。


二死では状況によらず得点確率が3割を下回っており、例えば二死満塁のチャンスでも得点確率は26.9%、つまり、二死満塁のチャンスが4回あったらそのうち一回は得点できそうだ、という程度に過ぎない。


二死満塁を2回続けて無得点で終えるというのは明らかな拙攻であるように思われるが、その確率はおよそ53%つまり2回の無死満塁のチャンスのうち少なくともどちらかで得点できる確率は47%となって、50%にも達しない。


つまり、上に書いた定義に従えば、これは拙攻とは言えないのだ。


ちなみに、二死満塁を3回続けて無得点で終える確率は39%であり、3回のうち少なくとも一度は得点できる確率は61%。


従って、二死満塁を3回続けて無得点で終えたら、それは拙攻だ、と言って良いことになる。



【対広島三連敗時の「拙攻」のケーススタディ】


昨日までの3連戦で得点確率が60%を上回った局面を列挙してみよう。


第一戦(5月24日)

◯1回裏 一死満塁 (結果)山本祐大の犠牲フライで1得点

× 8回裏 一死二、三塁 (結果)筒香嘉智三振、山本祐大捕邪飛で無得点


第二戦(5月25日)

◯2回裏 無死満塁 (結果)伊藤光タイムリーヒットで1得点

◯2回裏 無死満塁 (結果)知野直人押出し四球で1得点

◯2回裏 無死満塁 (結果)中川颯タイムリーヒットで1得点

◯2回裏 無死満塁 (結果)蝦名達夫タイムリーヒットで2得点

× 2回裏 無死満塁 (結果)佐野恵太三振、筒香嘉智併殺打で無得点

◯5回裏 一死三塁 (結果)伊藤光タイムリーヒットで1得点

× 6回裏 一死三塁 (結果)佐野恵太セカンドゴロ、筒香嘉智三振で無得点


第三戦(5月26日)

× 2回裏 無死二、三塁 (結果) 林琢真三振、大貫晋一二飛、蝦名達夫遊ゴロで無得点


合計10回の「得点の確率の高い局面」があり、そのうち6回で得点を挙げている。


そう、たまたまだとは思うが得点確率はちょうど60%であり、際立って悪いというわけではないのだ。


続いて、内容を見てみると第一戦と第二戦での「拙攻」つまり得点の確率の高い局面で無得点に終わったケースは3つとも筒香嘉智に関係しており、二つは佐野恵太も打席に立っている。


個人攻撃をするつもりはないが、筒香の得点打率は .167であり(佐野は.301)、まだNPBの投手にタイミングが合っていないことが障害になっていることは容易に想像できる。


完全に後出しの理屈ではあるが、現状を考えると得点圏打率 .500のオースティンを4番に据えていればこの3つの局面でも得点できた確率は上がっただろう。


早過ぎた筒香の4番起用というのは首脳陣にも責任があったかも知れない。


もっと言えば、4番で固定していた牧秀悟の離脱が根本的な原因だったということもできる。


そして昨日のゲームの2回裏、無死二、三塁で無得点に終わった局面だが、ここは打者が直近6試合の打率が1割台の林琢真でありそもそも難しい。



スクイズという作戦もあるが、上記のデータパークによるとスクイズの成功確率は48%に過ぎず、得点確率80%の無死二、三塁であえて選択するのは難しい。


そもそも林をスタメンで起用した采配が悪いという意見もあるだろうが、大和、知野、柴田という二塁手スタメン候補の誰も直近6試合の打率が2割には達しておらず林と大差ない。


この日一軍に上げた西浦をスタメン起用という策はあったかも知れないが、ファームで打率2割台半ばという成績を過大評価することもできない。


そもそも牧秀悟が居れば、8番はショートまたは捕手の打順であり、ここでもまた彼の離脱が根本的な原因ということもできる。


以上、詳しく見てみると、牧秀悟の離脱後、まだ調整期間にある筒香嘉智を4番で起用したのは三浦監督はじめ首脳陣の采配に問題があったと言えるだろう。


そして、この判断は営業面を考慮した球団からの要請もあったかも知れない。


それ以外は明確な采配ミスとは言えないのではないか、というのが本稿の結論だ。


また、牧秀悟の不在は様々な意味でチーム編成に影響を及ぼしていると考えられる。