mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

筒香嘉智が伝える想い “一生残る、一瞬のために”





“一生残る、一瞬にために” これは2019年シーズン終盤戦のベイスターズのスローガンだった。


同時に動画も配信されていたので記憶に残っていらっしゃる方も多いと思う。


当時のベイスターズのスローガンはラミレス前監督が英語で作ったものが多かったが、この時は、当時の主将筒香嘉智が選手会長石田健大と一緒に考え出した選手主導のものだった。



2019年9月初め、ベイスターズはペナントレースの2位につけており、首位ジャイアンツに1.5ゲーム差まで肉薄していた。


その時に選手たちが自らを鼓舞するために作ったのがこのスローガンで、当時の資料を見ると、次のような言葉が続いている。


“ここに立てているのは俺たちだけだろ?


立ちたくても立てない


信じてくれているみんなのために。


残り一カ月、俺たちにしかできないことをやろう”


立ちたくても立てない、信じてくれているみんな、と言うのは酷暑の横須賀で練習に励むファームの選手たちや声を枯らして応援した我々ファンのことだろう。


この時売り出されたTシャツの背中には控えやファームも含め全ての選手の名前が印刷されており、それぞれのファンは一番下の白いスペースに自分の名前を書き足して着用するようにデザインされていた。



ご承知の通り、この年も、結局ベイスターズは優勝には届かず、タイガースとのクライマックスシリーズにも敗れて筒香は退団、MLBでの活躍を目指して米国に渡った。


しかし、この“一生残るこの一瞬に、俺たちだけができることを全力でやる”と言う想いは筒香嘉智という野球人の根っこに常にある。


今日の試合で、NPBでの1000本目の安打となったスリーランホームランで勝負を決めた時にも、彼の頭の中にはこの言葉があったに違いない。


そして、この想いは、初回に満塁ホームランを打った現主将の牧秀悟にも、初先発で初勝利を挙げた石田祐太郎や初タイムリーの井上絢登と言った新人選手たちにも受け継がれて行くことだろう。


完膚なきまでに叩きのめされた初戦、エース東克樹の粘投とタイラーオースティンの同点スリーランで追い縋ったものの最後は力負けした第二戦に続いて、今日の第三戦は百戦錬磨のソフトバンク和田投手とドラフト5位新入団の石田祐太郎という無理めのマッチアップで始まった。


初回、ものすごく緊張していたという石田投手だったが、最速149キロのストレートなどをコースに投げ込み、1、2番を連続三振に打ちとった。


その後、栗原、山川に連打を浴び、近藤健介を四球で歩かせて二死満塁のピンチを背負ったが、柳町選手をファーストゴロに抑えて無失点で終えた。



その裏の攻撃は蝦名のラッキーな内野安打で始まり、梶原のヒットとオースティンの四球で無死満塁となると、打席には4番牧秀悟。


このところ攻守に精彩を欠いていた牧は昨日の試合後に田代コーチらに付き合ってもらって特打を行なっていたらしい。


きっと心に期すものがあったのだろう。


1-0から和田投手に投げ込んだストレートが甘いコースに来ると、これを見逃さずに強振した。


打った瞬間にそれとわかる打球はレフトスタンド上段にまで飛んでいく満塁ホームラン。



4-0となり、中央大学の後輩でもある石田投手の初勝利をサポートする最高の援護点となった。


2回以降も石田投手はストライクゾーンで堂々と勝負し続け、強力なホークス打線を5安打、1四球、1失点で抑えて5回まで投げきり、勝利投手の権利を得て降板した。


石田投手はイースタンの試合でもキレのあるボールをコーナーに投げ込み好投を続けていたが、6回以降に球威の低下と制球の乱れが少しづつ見られ失点するケースもあったので、今日の継投は良いタイミングだったと思う。


継投に入った直後の6回裏には一死二塁で同じく新人(ドラフト6位)の井上絢登が豪快なスイングでライトオーバーのタイムリーツーベースで加点し、5-1とリードを広げた。


ソフトバンク打線の圧力は、しかし、第1戦、第2戦と同様に凄まじく、その後、3番手で登板した徳山壮磨がエラーも絡んで2点を失い、5-3と差が縮まる。


その裏のことだった。


2失点のきっかけとなったエラーを犯した(記録上はエラーだが、ヒットでも良かったかも知れない)オースティンのヒットから始まる一死一、二塁のチャンスで打席に入った筒香が1-0で4番手藤井投手の投げ込んだインローのストレートを見事に捉え、これも打った瞬間という弾道がライトスタンドに吸い込まれて行った。



これで8-3となりほぼ試合は決まった。


8回のウィック、9回の森原康平ともに一点ずつ失い、最終的には8-5と3点差となったので最後まで気の抜けない勝利ではあった。


昨日の炎上に続いて森原は生命線のストレートの球威が不足していたが、勝てば報われる。


筒香、牧、新人の石田と井上、そして苦労してセットアッパーの位置についたウィックやクローザーの重圧を抱える森原。


彼らにとって、そして全てのプロ野球選手にとって、現役の選手としてプレーできるのは一生の中では限られた時間に過ぎない。


だから、筒香嘉智はあどけなさの残る顔立ちの石田祐太郎はじめ、みんなに伝えたいのだ。




一生残る、一瞬のために