mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

「勝つ投手」になった東克樹の粘りの完封で6連勝





「凄い投手」と言うカテゴリーがある。


彼らは球威で打者を支配し、三振の山を築く。


「速い投手」と言うカテゴリーもある。


彼らはともかくストレートが速い。彼らの投じる球体の高速移動は物理現象として魅力的であり、プロ野球というスポーツの花形の一つである。


「上手い投手」と呼ばれる人たちもいる。


彼らは打者との駆け引きに長けており、球種やコースに関する打者の読みの裏をかき、タイミングを外して本来のバッティングをさせない。


東克樹と言う投手は、これら三つの要素をそれぞれ少しずつ持っているように感じるが、どれにも当てはまらない。


トミージョン手術後の長いリハビリを経て、昨シーズン、最多勝と最高勝率のタイトルを獲得し復活した彼は「勝つ投手」になったのだ。


「勝つ投手」というのは、登板する日の自分の調子や身体の状況そして相手チームの打線の状態や戦略を鋭敏に感じ取り、ゲームの中の全ての局面で「勝つ」ために最善の方法を考え、それを実行できる投手だ。


「勝つ投手」になった東克樹は、相手チームの分析や対策が強化された中で毎日勝つために最善の方法を常に考え、実践している。


今日の東投手は、ブルペンで「どうしようか」と思うほど調子が悪かったそうだ。


初回こそ三者凡退で抑えたが、2回から4回まで毎回三塁にまで走者を進められるピンチの連続だった。


球威、コントロールともにいつもの投球には及ばず、好調とは言えないライオンズ打線に5回までに5安打、1四球を許した。


気のせいか腕の振りがいつもより鈍く、ストレートで空振りが奪えない。


変化球のキレと制球ももう一つでバットに当てられてしまう。


毎回のピンチにも三振をとることは出来ず、「上手い」ピッチングでなんとかタイミングを外し外野フライなどでアウトを重ねた。


まさに我慢のピッチングだった。


しかし、転機は6回に訪れた。


昨シーズンの投球内容の好転も腕の角度を変え、サイドスロー気味に下げたことから始まったが、今日の修正も同じポイントだったらしい。



今シーズン、カットボールを横に鋭く曲げるために腕の振りがやや縦に戻っていたことに気がついた彼は、今日の試合の6回にマウンドに上がり5球の投球練習で腕の位置を下げる修正を行なったとのこと。


最適解を見つけそれを実行に移すことができる、まさに私の考える「勝つ投手」の本領発揮だった。


その後、6〜9回の4イニングは被安打2、与四球0、奪三振2で危なげなく乗り切った。



「どうしようか」と思うほどの不調からスタートして、今シーズン初めての完封勝利をつかみ取った東克樹の「勝つ投手」としての安定感は球威や制球に優れていた昨シーズンよりもさらに高まっているようにすら感じる。




さて、打線の方は、「裕大のおかげ」でお馴染みの山本祐大捕手が2回二死からソロホームランで先制して東投手を盛り立てた。


そこまで支配的な投球を続けていたライオンズ先発のエース高橋光成投手のカットボールが真ん中に入ったのを見逃さず、バットに乗せてレフトスタンド最前列まで運んだ。



やや失投気味のボールだったが、追い込まれてから反応できた彼のバッティングは単に好調というだけではなくホンモノになったと思って良いだろう。


3回には森敬斗と蝦名達夫のいずれも詰まった当たりのヒットで掴んだ一死一、三塁のチャンスで度会隆輝のサード右への鋭い当たりにサードランナーの森がホームへ突っ込んだ。


タイミングはアウトだったが、サードからの送球がファースト側にずれた上に森敬斗が右に回り込んでホームからは遠い右手でベースに触れるというアクロバティックな動きでキャッチャーのタッチをかわして生還した。



ライオンズベンチからリクエスト要求があったが判定は変わらず2点目が認められた。


記録上はサードのフィルダースチョイスだが、相手のエラーではなく森敬斗のファインプレイとして讃えられるべき追加点だったと思う。


さらに、5回にも森敬斗のレフト線のヒットと悪送球で一死三塁となり、再び度会隆輝が今度は高橋光成の153キロのストレートを見事に弾き返してセンター前に抜けるタイムリーヒット。


これで新人選手の5試合連続適時打という球団記録を作ったことになる。



度会は再昇格後には選球眼も向上し、逸る気持ちを抑えて打つべきボールをしっかり見定めることができるようになった。


まだ守備には課題も多いが、チームに勢いをつける存在として上位で使っていって欲しい。


そもそも投手豊作と言われた昨年秋のドラフトで競合覚悟で一位指名した時から、今シーズンは彼と心中するくらいの覚悟で使っていく腹を括っていたはずなのだ。


これで3-0とリードを拡げ、一方、既に書いたように、この直後、東克樹は自身のピッチングを修正する方法を掴んだことからベイスターズの優位はかなりはっきりしてきた。


その中で、7回にダメ押しとなる4点目が入った。


走塁中にハムストリングを痛めた蝦名に代わった桑原将志が先頭打者としてレフトオーバーのツーベースで出塁し、その後、タイラー・オースティンのタイムリーヒットで生還した。


ホームへの送球の間にオースティンはセカンドまで進塁したが、その際に膝を打ったようだ。



いつものことではあるが、ハラハラさせられる。


試合後の三浦さんのコメントでは大丈夫とのことだが、少しでも不安があれば大事をとってリーグ戦再開時に万全の状態でいることを最優先に考えて欲しい。


今日で6連勝。先週の4連敗で6まで膨らんだ借金を完済し、交流戦もリーグ戦も3位にポジションを上げた。


思えばこの連勝は先週の日曜日に新人の石田祐太郎投手が強力ソフトバンク打線に果敢に挑んで掴んだ初勝利から始まっている。


交流戦最後の試合となった明日のライオンズ戦の先発はその石田投手。


童顔の彼の「野球が楽しくてしょうがない」という大きな笑顔をまた見せてくれることを期待しよう。


頑張れ石田、負けんなよ!