mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

サヨナラホームランの宮﨑敏郎はどの球種を待っていたのか?





3月30日に今季初勝利を挙げた後、調整登板のファームの試合で右肩に違和感を覚えた平良拳太郎は、結局、一軍復帰までにほぼ3ヶ月を要した。


しかし、先週のファームの試合では6回をパーフェクトに抑えており、肩への負担が少なく球速も増したという新しい投球フォームに自信を持つことができたようだ。


その平良投手の立ち上がり、左打者のインコースへのストレートがシュート回転して真ん中に入るリスク、そしてシンカーがゾーンに決まらないという問題点を抱えながら何とか初回を無失点で切り抜けた。


3番ヘルナンデス、4番岡本という怖い右打者に対して得意の「外の出し入れ」で連続三振を奪うことができたのが大きい。



しかし、2回先頭の大城選手には、これまでの相性の悪さもあって投げにくそうだった。


最初の2球をインハイのストレートで入るというのがバッテリーのプランだったが、いずれもボールだったことで苦しくなった。


結局、2-1からのスライダーが真ん中高めに浮いてしまい、大城選手にライトスタンドまで運ばれた。ジャイアンツが1点先制。


しかし、今日は1番センターでスタメン出場の桑原将志が3回一死からジャイアンツ先発の井上投手の2球目を捉えてレフトスタンド最前列に飛び込む同点ソロホームランですぐさま追いついた。



桑原は第一打席でも左中間を破るツーベースヒットを放っており、気温の上昇とともに好調期に入っているようだ。


さらに、4回にも、今日はスタメンに名前を連ねた佐野恵太が一死一塁で彼らしい身体を鋭く回転させるスイングで井上投手のカットボールが高めに浮いたところを捉え、ツーランホームラン。


5回にも二死三塁でタイラー・オースティンがジャイアンツ2番手の赤星投手の外角のボールを逆らわずに打ち返して右中間を破るタイムリーツーベース。



これで4-1となって試合の流れを掴み、故障明けの平良投手は勝ち投手の権利を持って降板。継投に入った。


最近めきめきと力をつけている若手のリリーバーたちは皆よく投げた。


中川虎大と坂本裕哉は6回と7回を無失点で抑える。


しかし、やはり継投というのは難しいものだ。


8回を任されたウィック投手がツーベース、タイムリーヒット、同点ツーランホームランと打者3人で3点を失い、一死もとれずに降板。


ウィック投手は炎上すると止まらない印象があるが、打たれ始めるとボールが真ん中に集まり、投球リズムも単調になってしまうようだ。


今日もツーランホームランの岡本和真に投げ込んだストレートは真ん中やや低めでタイミングが完全に打者のスイングとシンクロしていた。


ドンピシャ、という言葉の説明動画として使いたいようなビューティフルなホームランだった。


ウィック投手の後を託された徳山壮磨は、しかし、落ち着いてよく投げた。


キレのあるストレートを中心に、大城、岸田、立岡をいずれも内野ゴロに仕留めて逆転は許さなかった。


その後も、森原康平、京山将弥がそれぞれ1人づつランナーを出しながらも無失点でしのぎ、迎えた10回裏。


一死走者なしで打席に入った宮﨑敏郎はジャイアンツの6番手ケラー投手とは相性が良い。


初球のストレートを見逃して0-1とされた後、高めの外角スプリットとインコースわずかに外れるストレートをしっかり見切って3-1とした。


このボールに手を出さなかった事で、打者有利のカウントを作ることができた。


そして、5球目。ジャイアンツバッテリーの選択したのはカーブだったが、これが真ん中高めに浮く失投となった。


宮﨑はこれを見逃さず巻き込むようなスイングで捉え、全く曲がらない低い弾道のライナーがレフトスタンド中段のジャイアンツ応援席に突き刺さった。



サヨナラホームランだ。


有難う宮﨑!


救われたウィック、2年ぶりの勝利を掴んだ京山、それから全てのベイスターズファンが彼に感謝した瞬間だった。


今期はじめてのサヨナラ勝ちで、ホームに還ってきた宮﨑はチームメイト全員に祝福され、いつもの水かけが行われる。



何度見ても良い光景だ。


宮﨑のバッティングは、これまたドンピシャのタイミング。ケラー投手のカーブにヤマをはっていて、それが高めに浮いたところをすかさず捉えたように見えた。


実際、ラジオ放送で解説していた山﨑武司さんも高めの変化球を待っていたようだ、と仰っていた。


しかし、その後、プロ野球ニュースを見ていると、解説の松中さんは「宮﨑はストレート狙いでしたね。そして、カーブが来たので反応で打った。足をドンとステップしてから一旦止まって、それからバットが出てくる、タメがあった」と指摘していた。


私はそのタメにはあまり注意していなかったが、あそこで果して本当にカーブを待つということがあるのだろうか、という疑問は持っていたので動画で確認してみた。


注意深く見直してみると、宮﨑の左足は早いタイミングで着地しており、それからわずかに時間差があって上半身が始動していることがわかる。


松中さんの言う通り、宮﨑は一瞬我慢してからスイングを始めているのだ。


ちなみに、宮﨑は4月27日の対戦でもケラー投手からソロホームランを打っている。


この時の球種はストレート。


1球目の外角低めのストレートを見逃して、次にほぼ同じコースだが少し甘めに入ったストレートを捉えてレフトスタンド最前列に放り込んだ。


この時のバッティングと今日のフォームを比べて見ると、左足の着地のタイミングは全く同じ。


しかし、前回の対戦の時はそのままスイングが始まっているのに対して、今日は上に書いたように少し遅れてバットが出てくる。


この比較から見ても、やはり松中さんの仰っていることが正しいように思う。


ストレートを待って、そのタイミングで左足を下ろし、そこで変化球であることを察知した宮﨑敏郎は瞬時にスイングの始動を遅らせて間を取り、真ん中高めに浮いたカーブを完璧に捉えた。


彼はこれで今期ケラー投手に対して2打数2安打2ホームランというとんでもない対戦成績となった。


それにしても、打者がこれほどの反応を瞬時に行い、打ち損じることなくボールをスタンドに運ぶことができるようになるまでには、一体どれほどの練習と何千回の真剣勝負をする必要があるのだろうか?


私は、天才と言われる宮﨑敏郎のその膨大な努力に再び感謝したくなった。


宮﨑、有難う!