CSファイナル初戦完封勝ち 無欲の戦いを続けよう
クライマックスシリーズが始まってから、ベイスターズの監督や選手たちのコメントに注目している。
ポストシーズンはトーナメント戦であり、そこを勝ち抜いたゴールは日本一ということになるわけだが、“必ず勝って次のステージへ”とか、“負傷離脱した誰それのためにも絶対勝つ”と言った勝利への強い想いを感じさせる言葉を誰一人として使わない。
聞こえて来るのは、“最高の舞台で野球ができる喜びを感じる”、“目の前の試合をチーム一丸となって戦う”などとというコメントだ。
絶対に勝つというゴール設定はせず、最高の舞台を楽しみながらチームが一つになって戦うというプロセスについての目標設定をする点が面白い。
考えてみれば、野球の勝敗は相手あってのことなので、勝つか負けるかは時の運という要素がかなりある。
従って、絶対に勝つ、というゴールは実は理不尽なものなのだ。
相手チームがどの様な戦術をとるか、そしてどれほど素晴らしいプレーをするかを支配することはできない(相手の長所を消すような作戦はある程度可能ではあるが)。
それに対して、最高の舞台を楽しみながら野球をすること、意識を統一してチーム一丸となること、と言った目標は自分たちだけの意識や努力で達成することができる。
勝負は時の運だからこそ、“最高の舞台を楽しみながらチームが一つになって戦う”ことに全力を尽くし、その結果の勝敗は天に任せる。
こう言うメンタルをチーム全員で持つと申し合わせることで、選手たちは救われるのではないだろうか?
今回のクライマックスシリーズでのベイスターズはこの様な「戦術的な無欲」という良い状態を保つことができているように思う。
普段とは違う重要な試合で普段通りの野球をすることの難しさは良く知っている。
昨年までのベイスターズはこうした試合で最も緊張して力んでしまうチームの一つだったからだ。
この精神面での変化(成長と信じたい)はどこから来たのだろうか?
一つには、数年前から着任した遠藤メンタルコーチの苦労がやっと身を結びつつあるということがあるだろうし、もう一つには主力の故障・離脱で絶対勝つという理不尽な思い込みから解き放たれ易くなったということもあるだろう。
三浦さんは“絶対勝ちます”風のことを言いがちな監督だったが、彼自身の成長が一番大きいのかも知れない。
昨日のファイナルシリーズ初戦でも、試合間隔が空き、王者として必勝を誓うジャイアンツの選手たちに硬さがあったのに対して、ベイスターズの選手たちの普段通りのプレー(withoutダメダメなエラー)が印象的だった。
思えば初回のジャイアンツの攻撃で四球を二つ出した先発ケイ投手は、今までであれば岡本和真への5球目アウトハイのストレートがボール判定されたところでキレてしまっていただろう。
しかし、彼は自らに言い聞かせて後続を打ちとり、無失点で切り抜けた。
この回の攻防は試合の重要な分岐点だったと思う。
そして4回表の攻撃、先頭の佐野恵太に対して戸郷ー大城バッテリーは高めの緩いカーブを2球続けてツーストライクとし、3球目はストレートで差し込むという定石の裏をかいてフォークボールを選択した。
しかし、これが落ちずにストライクゾーンに残ってしまう失投。
好調の佐野選手はこの失投を見逃さず、フルスイングで捉えてライト中段まで運ぶ先制ソロホームランとした。
佐野恵太の柔軟な対応には、緊張や力みは全く感じられなかった。
一方、戸郷投手のフォークは、力みのせいか、明らかに抜けておらず、半速球となってしまっている。
ここにもメンタルの違いがあったように思えた。
さらに、7回表一死一、三塁で代打筒香嘉智の場面。
ジャイアンツも2番手の高梨投手にスイッチして、左対左でサイドスロー気味のあの大きなスライダーを打つのは難しそうだ、という場面でも両者のメンタルの違いが結果に影響したように思えた。
内角のシュートを2球続けてカウント1-1、これでインコースを意識させておいて今度は外角のスライダーを2球でカウント2-2。
ここまでは筒香選手が打てる気配は全くなかった。
次の5球目、一、三塁の場面でフォアボールは避けたい高梨投手は3-2にしたくないために最後のスライダーをゾーンに入れたいという未練があったと思う。
対する筒香選手は晴れの舞台でたった一度の打席などということは全く気にせず、チームのために何とかバットの先で拾って単打で追加点という意識を持っていたはずだ。
結果は筒香選手の食らいつくような流し打ち(こんな彼のバッティングは初めて見た。これから味のあるベテランとして活躍する予感がした)でタイムリー。
その後、森原康平の離脱という非常事態でセットアッパーに抜擢された堀岡投手と代役クローザーの伊勢投手の好投で2-0のままベイスターズが逃げ切った。
これでジャイアンツのアドバンテージを消し、1勝1敗のタイとなった。
今日の先発は菅野投手と大貫投手のマッチアップ。
相変わらず劣勢の戦いが続くが、私の希望はただ一つ。
ここまでと同じく、“最高の舞台を楽しみながらチームが一つになって戦う”ことだけを目標にして、無欲に普通のプレーを続けて欲しい。
その結果、勝敗がどうであろうとも、我々ファンは胸を張り、ウチのチームは良く頑張った、と誇りに思うことだろう。
イヤ、絶対にそうしよう!
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