mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

横浜の星たちがホンモノの星になった日





11月3日、横浜の街からトンカツ弁当が消えた。


ソフトバンクホークスとの日本シリーズは5試合を終えた時点でベイスターズの3勝2敗。


初戦と第二戦を連敗し、ストレート負けという最悪の結末を予感するほど彼我の戦力差を痛感させられたが、その後、舞台をアウェーの福岡に移してから「人が変わった」かのような3連勝で一気に王手をかけた。


第六戦の予定されていた2日土曜日は警報級の降雨で中止、翌3日に順延された。


そして、その日、冒頭に書いたように横浜の街からトンカツ弁当が消えたのだ。


私は息子と二人で現地観戦の予定であり、縁起を担いて「カツで勝つ」と決めていた。


そこで、昼頃にトンカツ弁当を予約しようと思い馬車道の老舗トンカツ屋さんをはじめ、何軒かに電話をしたのだが、どこでも同じような返答。


”今日は野球を観に行かれる方のご注文が殺到していて、もうご準備できません”


結局、石川町に最近できた蒲田の名店の支店でなんとか予約することができたのだが、私は、横浜の街全体がベイスターズの日本一を祈ってトンカツに殺到していることを知り、その集団的なパワーの底知れない勢いを感じた。


今日は行けるような気がする。


長い暗黒期を経てすっかりネガティブな物言いが癖になってしまったこの可哀想なファンの一人ですら、試合前から何故か自信のようなものが湧いてきていた。


それほど、日本シリーズ後半のベイスターズには勢いがあった。




ホークスの先発は有原投手、初回は二人のランナーを出すもののタイラー・オースティンを併殺打にうちとり無失点で終えたが、初戦のような盤石な状態には見えなかった。


そして、2回裏、先頭の筒香嘉智が2-1からゾーンに残ったチェンジアップをドンピシャのタイミングで振り抜き、今までに何度も観た「打った瞬間にスタンド総立ち」の素晴らしい打球が美しい放物線を描いてバックスクリーン右に吸い込まれていった。



先制ソロホームラン。


これまでの5試合はいずれもビジターチームが勝っているが、先制したチームが全て勝っていると言うデータもある。


さあ、ホームチームが先制すると言うこのシリーズ初の事態はどっちに転ぶのだろうか?


などと考えているうちに一死から戸柱がヒットで出塁し、続く森敬斗が有原投手のインコースのボールを引っ張ってライト右を破るツーベースヒット。



森選手のこのヒットも試合の流れを大きくベイスターズに引き寄せる一打だった。


そして、二死二、三塁となって打順はトップバッター、絶好調の桑原将志に回る。


桑原は2球目を引っ張ってゴロで三遊間を抜けるタイムリーヒット。



二死だったために打った瞬間に飛び出していた森敬斗が一気にサードを回ってホームにまで還り、一挙3点を挙げた。


この回の攻撃はホークスの選手や首脳陣を焦らせるには十分な効果があったと思う。


さらに、3回にもヒット一本と二つの四死球で満塁として、森敬斗がフルカウントから押し出しで追加点を奪った。


前の打席のツーベースが有原投手を警戒させたのは間違いないだろう。


森敬斗もパリーグの最多勝投手に警戒されるほどのバッターになったのか、と思うと感無量だった。


ベイスターズ先発の大貫晋一は先週の登板時のフワフワした感じはなく、ストレートのキレが明らかに優っていた。


パワーピッチというタイプの投手ではないのだが、山川選手の打席で初球にスプリットを見せておき、最後はストレートで空振り三振を奪った投球などは球威で勝負している印象だった。


4回に今宮選手のヒットの直後、徐々に調子を上げていた柳田選手にセンターへのツーランホームランを打たれて2点を失ったが、この大事な試合で先発としての役目を十分に果たしてくれたと思う。


そして、もう一つポイントに挙げたいのが、4-2と追い上げられて少し嫌なムードになったところで登板したハマちゃんのピッチング。


この日のハマちゃんは投球練習の時から気合が入りまくっていて、最速149キロのストレートを中心に力でグイグイ押すピッチングを見せてくれた。


代打のダウンズ選手に捉えられた打球がサード正面のライナーになると言う幸運もあり、三者凡退で流れを再びベイスターズに引き寄せた。


ベンチに戻る際にエスコバー投手やバウアー投手がやっていたように両手を広げて観客を煽るような仕草を見せたのも、チームとファンを勇気づけてくれた。



この好投が5回裏の7得点をもたらし、6回以降の坂本裕哉(回またぎ)、伊勢大夢(三者凡退)、森原康平(三者凡退)と言う完璧な救援リレーにつながったと言って良いだろう。


それにしても、ビッグイニングとなった5回裏の攻撃は凄まじかった。


5回裏、ホークスベンチは中4日で第三戦先発のスチュアートJr.投手をマウンドへ送った。


私は内心、しめた、と思った。


このブログでも何度か書いているが、今回のポストシーズンでは、先発の柱と言われる投手(タイガースの村上投手やジャイアンツの菅野投手)をリリーバーとして起用し、ことごとく失敗しているのだ。


そして、スチュアートJr.投手は一死満塁のピンチを招き、桑原将志への押し出しの四球と梶原昴希のタイムリーヒットで2点を失い降板。


続いてマウンドに上がった岩井投手はベイスターズの松本凉人投手と名城大で同期だった新人で、優秀なピッチャーだが日本シリーズの満塁のピンチはいかにも荷が重い。


牧秀悟はセカンドライナーに打ちとったが、好調の筒香嘉智に低めのストレートを左中間に運ばれ、これがフェンス直撃、走者一掃の3点タイムリーツーベースとなって試合は完全に決まった。



さらに、宮﨑敏郎にもタイムリーツーベースが出て11-2という大きな点差がついた。


日本シリーズでここまでワンサイドの試合になるのも珍しいように思う。


勝負は紙一重だが、一度転がり始めた雪玉はどんどん大きくなっていくものだ。


“助さん、格さん、もういいでしょう。ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ”



まさかこのセリフを日本シリーズの横浜スタジアムで口にできるとは。



森原康平が最後のバッター柳田選手を三振に打ちとり戸柱恭孝と抱き合うと、ベンチやブルペンから全選手がグラウンドになだれのように押し寄せ、歓喜の輪が広がった。


26年と言う本当に長い時間ずっと待ち望んでいたことが目の前で実際に起きている。


三浦監督が両手の人差し指を上げる権藤さんと同じポーズで5回宙に舞った。



指一本はV1という意味なのだろうが、来年優勝できたら2本になるのか、ダブルピースみたいじゃないか、などと自問自答していたが、図らずも涙ぐんでしまった。


あの長かった暗黒時代からずっといつかこの日が来ると信じていた、と言いたいところだが、それは少し嘘になる。


いつか日本一になれると確信を持てるようなことは何もなく、ただひたすらにこんな日が来ることを祈り続けてきただけだ。


私はそこそこの年数を生きてきたが、生まれて初めて、もう死んでもいいと思うほど嬉しいことがあると知った。


ベイスターズの選手や監督、コーチそしてチームスタッフや球団関係者の皆さん、そして全国300万人(当社調べ)と言われるベイスターズファンの皆さん、おめでとうございます。


横浜優勝 (*^◯^*)