いぶし銀が輝きそして泣いた夜
今日のトレバー・バウアーは風邪気味だったらしいが、そんなことは全く感じさせない完璧な立ち上がりで3回までカープ打線をパーフェクトに抑えていた。
前回の対戦では試合後半まで温存していたナックルカーブを今日は序盤から要所で使うピッチングで、ストレートは球速を抑えて制球重視だったように見えた。
カープ先発の森下投手も素晴らしい立ち上がりで、一、二回は1人のランナーも出すことができなかった。
しかし、3回裏の先頭松尾汐恩はその森下投手の3球目、高めに浮いた変化球(カットボールかな)を高々と打ち上げ、切れるかと思った打球は風でフェアゾーンに戻されてレフトスタンド中段まで届く先制ホームランとなった。
“月に向かって打て”という東映フライヤーズ飯島コーチの有名な言葉があるが、まさにそういう弾道だった。
続く京田陽太もヒットで出塁したが、バウアー選手はスリーバント失敗、さらに桑原将志はショートゴロで併殺に倒れた。
投手のバント失敗から試合の流れを相手に渡すケースがこのところ多いから気をつけないといけない、などと思っていたところ、その不安は的中した。
4回先頭の中村奨成選手はバウアー投手との相性が良いようで、前回対戦でもスリーベースを打たれていたが、今日もここでレフト前にクリーンヒットを許した。
この一打でそれまで完璧だったバウアー投手のバランスがわずかに乱れたように見えた。
菊池選手が送って一死二塁となったところで、次打者は力のあるファビアン選手。
バウアー投手は高めの変化球でファビアン選手のバットを折ったが、ボールが高かったために力でレフトの前まで運ばれた。
二走の中村選手が卒のない打球判断で難なくホームに還り1-1の同点に追いつかれる。
さらに、続く末包選手に対しては2-2と追い込み、次のボールは外角低めの素晴らしいコースへのストレート。
バウアー投手も私も決まった、と思ったが審判の手は上がらなかった。
しかし、どちらともとれる高さだったのでこれは仕方ない。
フルカウントでバウアー投手が投じたカットボールは真ん中高めに浮く失投となり、末包選手はこれを見逃さずにバットを一閃。
ライナー性の打球は低い弾道でレフトポールに当たる逆転のツーランホームラン。
これでスコアは1-3となり、2得点打線にとっては非常に重たいリードを許してしまった。
しかし、その後バウアー投手は本来の安定した投球を取り戻し、7回、8回とピンチを迎えたが、いずれも無失点で切り抜けた。
今日のバウアー投手は、
8回、124球、被安打8、奪三振8、与四球1、失点3
でQSを達成した。
次回は中5日で15日のタイガース戦ということになるだろうか。
打線も今日は粘った。
7回一死から度会隆輝のツーベースヒットを足がかりに、5番佐野恵太が森下投手のインハイのカットボールをライト前に打ち返して3-2と追いすがった。
内角高めのカットボールは左打者だと打ちにくいが、上から被せるようにして強い打球を飛ばしたのは佐野選手の技術だろう。
そして、9回裏にはクローザーの栗林投手を捉える。
再び一死から度会選手がツーベースヒットで出塁。
際どいタイミングでリクエストも結果は変わらず、という点も7回と全く同じで、デジャブのようだった。
続くオースティン選手は一塁が空いていたので勝負を避けられるかと思ったが、佐野選手も7回にタイムリーヒットを打っていたのでカープバッテリーも勝負に出たのだろう。
2-1から外角のボールをバットの先で引っ掛けるようにして引っ張った打球は三遊間を抜け、度会隆輝に代わった蝦名達夫が一気にホームまで駆け戻った。
土壇場で3-3の同点に追いついた。
試合は延長戦へ。
10回表のマウンドはホームチームの定石通りクローザーの入江大生。
先頭の菊池選手にツーベースヒットを打たれたが、その後、ファビアン選手をファウルフライ、末包選手を三振に打ちとり二死まで漕ぎつける。
そして、坂倉選手のファウルフライをサードに入った林琢真選手がカメラマン席に飛び込みながら捕球してスリーアウトチェンジ。
ライバルの森敬斗選手に比べて華やかさはない印象の林選手だったが、この捕球は気迫が全面に出た素晴らしいファインプレイだった。
10回裏、今度はベイスターズ先頭の松尾汐恩がカープ3番手の森浦投手からツーベースヒットで出塁。
続くピンチバンターの柴田竜拓は小フライを上げてしまい二塁走者を送ることが出来なかったが、ここで打席には先ほど大ファインプレイの林琢真。
サヨナラを期待したベイスターズファンは私だけではなかっただろう。
その期待に応えて、2球目の真ん中に入ったカットボールをコンパクトに打ち返し、前進守備の左中間を破るサヨナラタイムリーツーベース。
最終スコアは4-3、ベイスターズにとって今季初となるサヨナラ勝ちだった。
派手さはない印象の林琢真選手だが、ファインプレイと自身初となるサヨナラヒットでチームを救った。
同期(2022年)入団の松尾汐恩選手と共にお立ち台に上がった林琢真はご家族が観戦されていたそうで、年初にお祖父様が亡くなり、今日観戦されていたお祖母様も脚が悪く観戦は最後になるかも知れないと言ったことを話しているうちに感極まって涙が流れた。
その涙は、厳しい競争の中で毎日命懸けで試合に出ているという自信の想いを抑えられなかったということでもあっただろう。
“毎日、きょうが最後の試合だという気持ちでグラウンドに立っている。
チームに貢献できてよかった。”
有難う、林選手。
今日のあなたは本当に輝いていました。









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