mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

上茶谷大河は自分の野球のふるさとに帰ることにしたのだ

12月25日の神奈川新聞に次のような記事が出た。


“腹をくくって、原点に立ち返る。


横浜DeNAの上茶谷大河投手(25)は大学時代の投球フォームに戻して来季に挑む。


現在のフォームに比べて故障のリスクが高いとされるが、「けがをしないで0勝か、けがをしやすくても勝つかなら、リスクを選びたい」


と並々ならぬ覚悟だ。”



以前も書いたように上茶谷が回帰しようとしているダブルプレーンは肩を中心とした二の腕の回転する面と肘を中心にした前腕の回転する面が一致しないフォームである。


怪我が多いことに加えて、肩と肘の回転運動を効率的に指先に伝えにくいと言う問題もある。ピッチングメカニズム理論的には良い面が無いのだ。


そして彼は、「けがをしないフォームで0勝で終わるのか、けがをしやすいフォームで勝つのか。どっちを選ぶのかというと、僕はリスクを選びたい」と言っている。


実はこのコメントが一番気になっていた。私の限られた人生経験から言うと、二者択一の問題設定というのはだいたい人が追い込まれている時に想うもので、正解はどちらでも無いということが多いのだ。


怪我のリスクが小さくしかも勝てるフォームを探してもらいたい。


心理カウンセラーの植西聰さんもこう言っている。


しなくてもいい二者択一をしてしまったために、あなたは、人生の楽しみの半分しか味わっていないのかもしれない。


しかし、昨日の神奈川新聞の記事には、続けて次のような記述もあった。


“暗中模索のまま秋季トレーニングを迎えた上茶谷に道筋を示したのは、コーチングアドバイザーの小谷正勝氏(76)だった。「学生の時のフォームで投げなさい」。その言葉をすぐに受け入れたという。”


この部分を読んで、ピッチングメカニズムにも詳しい小谷さんが上茶谷投手にあえてダブルプレーンに戻ることを薦めた理由が分かったように思う。


小谷さんと言えば、選手の個性や状態に合わせた指導に定評があり、故関根潤三監督からは、「僕が認める野球人の一人が小谷正勝。ピッチングコーチとしてはピカイチで、指導の引き出しがいくらでもあるところがすごい。引き出しが多いから、いろんな選手に『右向け右』をさせられる。しかも、指導がわかりやすい。その選手が一番理解できる言葉で話すから、選手にとってこんなありがたいことはない」と言われている。


小谷さんは日刊スポーツで「小谷の指導論」と言う連載を行っており、今年の初めに三浦監督との対談で山﨑康晃について次の様に語っていた。


“小谷 一番プライドを壊さないで、導いてやるには「野球のふるさと」に帰ることだな。何で良くなったのかを考えるんだ。野球を始めた時から振り返って、これだと思った瞬間がある。それが原点。俺は小学生のころ、お宮の石灯籠に向かって投げたら、なぜかうまいこと投げられた。


三浦 僕の場合は子どものころ、おやじが商売してて、店の裏の細い路地でのピッチング、キャッチボールですね。道幅が1メートルあるかないかのところ。それがコントロールが良くなった原点かなと思います。


小谷 人間の視野、感覚ってすごい。三浦は路地がはまったんだな。細くて、変なところに投げたら当たっちゃうから、コントロールのコツをつかんだ。


三浦 プロに入っても、プレートの幅からバッター、キャッチャーのイメージまではつきやすかった。


小谷 山崎にもそういう話を聞かせてやった方がいいと思う。“



小谷さんは上茶谷投手のフォームの改良のゴールがダブルプレーンだと言っているのではなく、恐らく、彼の野球のふるさとが大学時代のダブルプレーンだったら、まずはそこに戻って自分がこれだと思った瞬間を思い出すことを薦めているのだと思う。


そして、上茶谷投手が自分の良さを思い出したら、そこからまた合理的で怪我のないフォームを一緒に探して行こうと言っているように思えてならない。


それなら良いだろう。


上茶谷投手もすぐに受け入れたと言うことなので、小谷さんを信じて「右向け右」するのが良い。先月から感じていた彼についての不安が消えて、楽しみだと思う気持ちが湧いてきた。


これが私の故里だ

さやかに風も吹いている

    心置なく泣かれよと

    年増婦の低い声もする


ああ おまえはなにをして来たのだと……

吹き来る風が私に云う  (中原中也 帰郷より)