mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

東克樹は全ての力を使った そして何者にも屈しなかった





ホームで2連敗した後、舞台を福岡に移して行われた日本シリーズ第3戦。


横浜スタジアムの2試合は現地で観戦したが、ソフトバンクのソツのない強さばかりが目立つ内容だった。


ホークスはこれで日本シリーズ14連勝。


2018年の第2戦で広島に敗れて以来ずっと勝ち続けているというのだから、彼らの短期決戦の強さは驚異的だ。



今日の先発はベイスターズ東克樹投手、ホークスはスチュアートジュニア投手というマッチアップ。


10月12日のCSファーストステージ初戦で走塁中にハムストリングの肉離れを発症して以来、通常は4週間かかると言われていたリハビリを急ピッチで仕上げ、何とかこの日に間に合わせた。


ピッチングだけであれば問題なく、故障前と同じパフォーマンスということだが、流石に走塁にはリスクがあるためDH制の適用される福岡での第3戦まで待ったということのようだ。



打席には立たないとは言え、ピッチャーゴロやバント処理などのフィールディングはあるし、2週間近く実戦から遠ざかっているブランクもある。


心配の種は尽きないが、ここはエースを信じて任せることにしよう(と三浦さんもきっと思ったのだろう)。



故障明けの東投手ということで、彼の手術後の復帰時期に私自身が書いたものを見返していたところ、次のような文章が出てきた。


2022年2月の東克樹投手のファンに向けたメッセージ



“今年は開幕から先発ローテーションでバリバリ頑張りますので、応援宜しくお願いします”



これに対して、私の脳内の謎の大阪のオッちゃんの返しは以下の通り。




“なにを水くさいことゆうてるんや。


言われなくてもオッちゃん、坊のこと応援するに決まっとるやないか。


勝ったら泣いて喜ぶし、負けたらもっともっと声出して応援するんやで”



ということで、私は冒険の旅に出る我が子を見守るような気持ちで初回のマウンドに立った東投手にTV画面を通して静かに念を送り始めた。



1回表のベイスターズの攻撃では、先頭打者の桑原将志が外角のストレートを右に強く打ち返してツーベースヒットとすると、その後、梶原昴希のバントで三進し、牧秀悟のショートゴロの間に先制のホームを踏んだ。



その裏、東としてはこの1点のリードを何としてでも守り切りたいところだったが、森敬斗のエラーにはならないまずいプレーも二つあり、二死一、三塁で5番DHに入った近藤健介選手を迎えるというピンチ。


東投手は3球で1-2と追い込んだが、その後の低めのストレートとチェンジアップをいずれも冷静に見極められて苦しくなった。


そして、ゾーンを上げざるを得なくなったフルカウントからの外角スライダーを狙いすましたように左中間に運ばれた(やっぱり凄いバッターですね)。


あっと言う間に1-1の同点に追いつかれる。やはりホークスには敵わないのか。


しかし、東克樹は決して怯むことなく腕を振り続けた。



続く今宮選手はインコースギリギリのキレの良いストレートで空振り三振に打ちとり、何とか最少失点で切り抜けた。



その後、ベイスターズ打線はスチュアートジュニア投手の制球難につけ込んで毎回ランナーを出すが得点には至らない。


一方、東投手の方も毎回ヒットを許す苦しいマウンドが続く。


各回の先頭は打ちとったこと、そして四球ゼロで耐えたことがこの粘投をもたらしたと思う。


センター前に落ちるかと言うライナーに頭から突っ込んで捕球した桑原将志のスーパープレーにも助けられた。



試合が進んで4回のホークスの攻撃が終わる頃には、いつもの東投手のピッチングを取り戻しているように見えた。



再びベイスターズの打線に動きがあったのは5回表。


ホークスベンチは四球を連発していたスチュアートジュニア投手を早めに降板させ、代わって大津投手を2番手としてマウンドに送り込んだ。


先頭の桑原将志は、大津投手の2球目の変化球(カットボールだったように見えた)を完璧にとらえて、レフトのホームランテラスに飛び込むソロ。


ベンチ前でデスターシャを決めて、2-1と再びリードを奪うことに成功した。



その後、牧秀悟、タイラー・オースティンの連続フォアボールがあり、二死満塁で打席に入った5番筒香嘉智は大津投手の15球目を掬いあげて、あわや満塁ホームランと言う大飛球。


これが犠牲フライとなって3点目を挙げた。セカンドランナーの牧秀悟がそのまま二塁に留まった理由は謎だが、まあ良いか。


結局、東は7回、105球を投げ切って被安打10、与四球0、失点1という、ヒットは打たれても要所は締めるエースらしい粘りの投球を見せてくれた。


日本シリーズで2桁安打を浴びながら勝利投手になるのはジャイアンツの桑田真澄さん以来30年ぶりのことらしい。


その後、8回表には二死一塁でここまでノーヒットの戸柱恭孝がホークス5番手の杉山投手から右中間を破るタイムリーツーベースヒットでダメ押しの4点目を挙げた。



一走は四球の宮﨑敏郎の代走林琢真だったが、打球判断も良く素晴らしい走塁だった。三浦監督の采配もソツがなかった(いつもの代走から守備固めの流れと言う説もあるが)。


これでホークスに2018年以来となる日本シリーズでの敗戦を味合わせることができ、勝敗は1-2と少し押し戻すことができた。


明日の先発はアンソニー・ケイ。


ここで連勝できれば、2勝2敗のタイに持ち込むことができる。


そして、土曜日に横浜に戻って第六戦を行う資格が生じるのだ。


頑張れ、ケイ!


負けんなよ


梶谷隆幸の引退と2017年の忘れ物





クライマックスシリーズが終わってから、このブログのアクセス解析を見ていると、過去の記事がかなり読まれていることに気がついた。


それは2017年の日本シリーズでベイスターズがソフトバンクと戦った時の記憶について書いたもので、ご存知の通り、結果は2勝4敗で日本一の夢は破れた(詳しくは以下の記事をご覧ください)。


https://mizuyashiki.muragon.com/entry/55.html


改めてこのシリーズの展開、特に3連敗の後に2連勝して迎えた第6戦の試合進行を見直してみると、当時のベイスターズの勢いとそれが一瞬にして押し戻されたあの瞬間の記憶が蘇る。


大阪夏の陣で敗色濃厚となった豊臣方の真田幸村が少数の手勢を率いて徳川家康の本陣まで迫り、家康自身も討ち取られることを観念したという最終盤の戦闘で、彼は辛くも脱出し、その後幸村は敗れて死んだ。



2017年日本シリーズ第6戦、9回裏二死まで3-2とリードしており、この試合に勝って3敗の5分で最終戦に向かうと誰もが思ったあの瞬間、山﨑康晃の投じたツーシームは内川選手にすくい上げられ、レフトスタンドに吸い込まれて行った。



あの無力感はなんだったのだろう。


勝負の分かれ目は紙一重だったと思うが、あの時、山﨑康晃はどうして打たれてしまったのだろうか?


ついでに言うと、彼の飛翔癖はひょっとするとあの時から始まったのかも知れない。


日本シリーズ進出を決めた試合後のビールかけでも、コメントを求められた山﨑康晃は「僕らには2017年の忘れものがあるので、それを取りに行かないと」と言っていた。


彼にとっての2017年の忘れものというのは、あの日の内川選手との対戦だったに違いない。


恐らく彼はあの時の自分の投球と内川選手のバッティングを誰よりも鮮明に記憶し、何度も反芻してきたことだろう。


彼は繰り返し問いかけたその質問に答えを出すことができたのだろうか?


9回裏に同点に追いつかれたベイスターズは11回裏川島選手のタイムリーヒットでサヨナラ負けを喫し、日本シリーズは劇的な幕切れとなった訳だが、あの時、ライトの前進守備の位置から必死の本塁送球も及ばずセカンドランナーの生還を許してしまったのは梶谷隆幸だった。


梶谷はその後肩の手術をすることになり、その故障を見抜いていたソフトバンクベンチがタイミングはアウトのランナーをあえてホームに突入させたのだろう。


ホーム手前でワンバウンドしたカジの送球は意外なほど大きく跳ねてキャッチャーは捕球できず決勝点が入った。



あの時のキャッチャーは、その後FAでソフトバンクに移籍した嶺井選手だった。


山﨑康晃と並んで悔しさを呑み込んで過ごした筈の梶谷隆幸が引退することが今日発表された。


誰もが認める身体能力と抜群のセンスを持つ走攻守に秀でた選手だったが、度重なる怪我に泣かされ、FAでジャイアンツに移籍してからは思うような活躍ができなかった。


私は以前、横浜スタジアムのエキサイティングシートでグラウンドと同じ高さで観戦していた際に梶谷選手がライトライナーをダイビングキャッチするところを真横から見たことがあり、彼の身体が完全に水平になっていることに驚かされたことがある。


ダイビングキャッチって本当にあんなに飛ぶんだ、と思った。


彼の移籍後にベイスターズファンになった方は彼の元チームメイトである高森勇旗さんが文春コラムに書かれた「走れカジ、俺の夢を乗せて」をお読み戴きたい。


https://bunshun.jp/articles/-/9267


何度読んでも泣かせる文章だ。


一軍のスターを夢見て朝から深夜まで練習に励む選手たちのひたむきさとカジの不器用な優しさが溢れていて、私はこのコラムはプロ野球関連の文章の中でも最良のものの一つだと思っている。


そのカジが引退か。


同学年で仲の良い宮﨑敏郎も随分と想うところがあるだろう。


梶谷隆幸に加えて、当時の主力だったホセ・ロペス、須田幸太や井納投手も引退し、致命的なエラーを犯してしまった倉本選手は戦力外からくふうハヤテへ。


あの時の正捕手格だった嶺井選手に至っては、今回はホークスの一員として出場することになる。


あの時のメンバーで残っているのは山﨑康晃、筒香嘉智、戸柱恭孝、そして宮﨑敏郎の4人だ。


彼らはその後台頭してきた若い世代の選手たちと力を合わせて2017年の忘れものを取り戻すことができるのだろうか。


そして私は、かつての暗黒時代が終わり、DeNAベイスターズとしての新たな道を歩み始めた2012年からの日々がもう既に歴史と呼べるほどの長さになっていることに気がつき、驚きと少しばかりの嬉しさを感じている。


森敬斗の森敬斗による森敬斗のためのCS最終戦に勝って日本シリーズへ





ベイスターズファンの皆さんおめでとうございます!



昨夜の試合が終わってから私のところにも沢山のお祝いメッセージを送って戴いた。


皮肉な先輩からは、“こんな弱いチームを何十年も応援していて馬鹿なんじゃないかと思っていましたが、馬鹿だからこそ何倍も嬉しいってこともあるのですね“という弄りもあった。


そうなんです。馬鹿の方が喜びは大きいんです。




1982年の夏、私は友人とローマに居た。


その年のワールドカップでイタリア代表が3度目の優勝を果たしたのだが、その翌日、コロッセオ付近の路上で突然乗用車が停止し、運転していたオジさんが降りてきて道の真ん中で立ち止まり天に向かって祈りを捧げはじめた。


恐らく彼は前夜から何度目かの歓喜のピークを迎え、こみ上げる喜びを抑えることができず、道の真ん中でも祈りを捧げたのだろう。


その時はそういうものかと思ったが、昨日から今日にかけての私も同じような精神状態だった。


ああ、生きていて良かった。


神様ありがとう。



昨日の試合、1回裏に森敬斗の送球ミスで失点という見覚えのある展開から逆転勝ちという最後を予測していた人は少なかったと思う(多くのベイスターズファンが祈ってはいたが)。


森選手の魅力の一つは積極的な守備だと思うのだが、それは時折見せる無理な体勢からの送球ミスと表裏一体の関係でもある。


そして、タイラー・オースティンの一塁守備は下手と言うわけではないのだが、ショートバウンドの送球を捕球するのは苦手のようだ。この二人が今日のようなエラーをおかすのは今季何度か見た気がする。



その後、4回裏には先発のアンソニー・ケイが先頭の坂本選手にツーベースを許し、犠牲フライで三進した後、戸郷選手にスクイズを決められて0-2とリードを拡げられた。


3連勝の後、2連敗して流れがジャイアンツに傾いていたことから、このまま完封負けで終わるのかと言う嫌な予感がしていた。


しかし、その嫌な予感はミスからしっかり切り替えた森敬斗のバットでかき消された。


5回表、今日は7番に入った先頭の梶原昴希が戸郷投手の投じたインコース低めのボールを上手く引っ張って一二塁間を抜くゴロのヒットで出塁。


続く森敬斗は2-0から戸郷投手がやや不用意に投げ込んだ真ん中高めのストレートを振り抜いた。


打球は右中間を深々と破り、梶原は1塁から長駆ホームへ、森敬斗も俊足を飛ばして三塁に達した。





なおも無死三塁のチャンスでベイスターズベンチは代打マイク・フォードのカードを切る。


これが見事に当たって、フォードはフルカウントから戸郷投手のフォークを叩いてゴロで二遊間を抜ける連続タイムリー。


一気に2-2と同点に追いついた。


これで雰囲気がガラリと変わり、3試合ぶりに試合の流れがベイスターズに傾く。


総力戦で勝ちに行くジャイアンツは8回から菅野投手をマウンドへ送ったが、私は逆にこれで行けるかも知れないと思った。


ファーストステージの阪神村上投手もそうだったし、シーズン最終盤でリリーフに回ったビーズリー投手もそうだったが、先発からリリーフにまわった彼らは何故か回またぎの後に打たれるのだ。


私の都合の良い予感は珍しく当たった。


9回表、先頭の森敬斗がライト前ヒットで出塁。


代打柴田がバントで送り、続く桑原将志のサードゴロの間に森敬斗はサードまで進んだ。


彼のこの走塁で勝った、といっても過言ではない。


サードの坂本選手は捕球後、二走の森を目で制し、離塁していた森もセカンドに戻る素振りを見せたのだが、坂本が一塁に送球した瞬間、踵を返してサードに猛然とダッシュしたのだ。


ファーストの岡本選手が間髪おかずにサードに送球したが森敬斗の足が一瞬早くセーフ。


そして、二死三塁で打席に入った牧秀悟が1-1から外角のスライダーを引っ張り込んで三遊間を抜けるタイムリーヒットでとうとう逆転。


決して良い当たりではなく、いわゆるコースヒットというやつだったが値千金の逆転打となった。森敬斗がサードまで進んでいたからこそタイムリーとなったのだ。





9回のこの逆転劇を招いたのは7回から回またぎで無失点に抑えた伊勢大夢の好投だった。



7回も8回も得点圏に走者を進められたが勝負どころで落ち着いて三振をとるピッチングは彼自身の成長を見せつけるものだった。


そして、9回裏の森原康平は素晴らしかった。


最速153キロのストレートと鋭く落ちるフォークボールで門脇、丸、そしてラスボス岡本和真を三者凡退に打ちとりゲームセット。



ライデル・マルティネスと良い時の栗林良吏を混ぜて合体させたようなピッチングだった(こうやって書くとトムブラウンのネタのようだと言うことに今気がついた。ライデル、ライデル、ライデル、栗林、合体、、、)




さあ、あとは日本シリーズで今シーズンの総決算となる戦いに挑むばかりだ。


ソフトバンクの貯金42に対してベイスターズはわずかに2と言う大差があることから、下馬評では圧倒的にホークス有利となっている。


なあに、クライマックスシリーズのファーストステージは阪神有利、ファイナルステージは俄然ジャイアンツ有利、などと言われていたのだから、短期決戦はやってみないと分からないのだ。


勿論、ホークスに対して4連敗で終わると言う結末もあり得るし、3勝3敗で最終戦までもつれ込む展開だってあり得る。


3位からの下剋上で出場する日本シリーズなのだから怖いものなど何もない。


挑戦者として思い切り自分たちの野球をやり切ってもらいたい。


現時点ではっきりしていることはただ一つ。


今年のNPBで最後の最後まで野球をやっているチームの一つがベイスターズだと言うことだ。


だから皆さん、最後まで思う存分に楽しもうぜ。