mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

度会選手の一位指名とバウアー残留は別の話なのでしょうね





一昨日のドラフト会議において我がベイスターズはENEOSの度会隆輝選手を一位指名した。


横浜高校出身の21歳で高校時代は主に内野を守っていたが(二塁手)、社会人になってからは右翼手としての出場が多いようだ。


社会人野球に疎い私でも昨年の都市対抗で4本塁打、4割超の打率で橋戸賞、黒獅子賞、打撃賞の三冠に輝きチームを4年ぶりの優勝に導いた活躍には注目していた。


お父上が元ヤクルトの度会博文さんであることも印象に残ったしね。


最近では、CS直前のベイスターズとの練習試合に出場して1安打を放ったことも記憶に新しい。


この時はアウトになった打席でもほとんど芯で捉えた打球で、社会人のレベルの高さを痛感したが、それ以上に度会選手個人の技術の高さが光っていた。


社会人No.1のバッターということで、事前に一位指名を公表していた中日に加えてDeNAとロッテの三球団が競合すると言う人気銘柄になった。


抽選に結果はご承知の通り、くじ運の良い三浦大輔監督が見事に当たりを引き当てて交渉権獲得となった。


本人の嬉し涙を見ても明らかな通り、入団することは確実と思って良いだろう。




ところで、度会選手の一位指名は思わぬ波及効果をもたらした。


今永昇太がポスティングでMLBを目指すと言われており、トレバー・バウアーの去就が不確定、FA権を取得した石田健大の移籍も取り沙汰されている今オフの補強の目玉としては豊作と言われる即戦力投手の一位指名が本命視されていた。


にもかかわらず野手の度会選手を一位指名したという事はバウアー投手の残留にある程度自信が持てる状況になったのではないかと言う深読みをする人々が現れたのだ。


ドラフト会議の最中に「バウアー残留」がSNSのトレンドに上がると言う状況はこのような希望的観測をするベイスターズファンが多かったことを示しているのだろう。


かく言う私も一瞬そうした解釈のもとにぬか喜びをしたうちの一人である。


しかし、ドラフトから2日の間に冷静に考えてみると、どうもこれはやや短絡的な発想であり、度会選手の一位指名とバウアー投手の去就は別の話と見るべきだと思うようになった。


その理由を少し書いてみたいと思う。



【時間スケールがズレている】


ぬか喜びしていた私がフト我に返ったのは、バウアー選手の来年の去就とドラフトの一位指名とでは考えている時間スケールが随分違うのではないかと言う疑問を持った時だった。


トレバー・バウアーや今永昇太が来季もベイスターズに残ってプレイするとしても、それは1、2年のことだろうし、即戦力の投手とは言えそれほど短期間の都合でドラフトの指名選手を決めると言うのもおかしなものだ。


ドラフトで獲得する選手には少なくとも3年、本来は5〜10年と言った期間でチームの戦力を支えてくれることを望むはずだ。


即戦力と評価された先発投手が新人の年から実際に活躍する確率は期待するほど高くはないと言うことも考え合わせる必要がある。


つまり、先発ローテーションの柱となる投手の穴を埋めるのはドラフトではなく、現有勢力の底上げとFAやトレードでの実績ある投手の獲得と言う手段を考えるのが本来あるべき姿だろう。


球団フロントはバウアー選手の残留を最優先に考えてでき得る限りの努力をしてくれていると思うが、その成否が分かるのは早くても米国でウィンターミーティングの行われる12月上旬以降になるだろう。


そして、今永昇太については、MLB挑戦の時期は本人のためにも早い方が良いこと、またポスティングによる収入が得られるのは今年だけであることも考慮して球団としては容認する姿勢を見せている。


この状況下で球団の考えるべきは、まず、東克樹、大貫晋一、平良拳太郎、ハマちゃんと言ったローテーション候補がしっかりとその役目を果たすことのできるような環境を整えること。


今オフの体制変更で、小杉、大原と言う動作解析やデータ分析に長けた両コーチを昇格させたのは正にこの点を狙ってのことと思われる。


東、大貫、平良、ハマちゃんは全員が素晴らしい投球をしてチームを勝たせた実績のある投手達であり、彼らの良い時の投球を高い確率で再現できるようにアシストするのが二人のコーチの役目だ。


FAする投手の獲得は資金面で難しいかとは思うが、オリックスの山崎福也投手の獲得調査を行なっているという報道もあり、あわよくば、という姿勢は示しているようだ。



【若手野手の育成における現状は投手より厳しい】


そして、次世代を担う小園健太、深沢鳳介、森下瑠大が1、2年後にはローテーションの一角を担うことのできるようなキャリアアップを着実に行うことも同じくらい重要になる。


この点については、現在宮﨑で行われているフェニックスリーグで明るいニュースが相次いでいる。


小園健太は26日に行われた韓国選抜との試合でプロ入り後初の完投勝利を無四球で飾った。


被安打7、奪三振7、1失点だが自責は0という内容で、ストレートでファウルや空振りがとれていたこと、コースへの制球が概ねできていた点に成長の跡が見られる。


彼と同期の深沢鳳介は合計12イニングを投げて被安打9、奪三振10、与死球1、自責点1ということで、防御率0.75、WHIP 0.83、奪三振率 7.50とこちらも素晴らしい。


そして今日の阪神との試合では森下瑠大が6回1/3を投げて3失点ながら勝ち投手となった。


四球を続けて失点した点は反省材料だが、井上広大、前川右京と言った怖い打者の並ぶタイガース打線と対峙して何とか抑えたこと、同学年で一足先に一軍デビューした門別投手に投げ勝ったことは朗報だ。


さらに、昨日発表された入来祐作さんの2軍投手コーチ就任も追い風だ。


彼が経験したソフトバンク、オリックスでの投手育成のメソッドや知識は3人の若い投手たちの育成を促進する上で有用なものとなるに違いない。


来年の先発ローテーションの穴を埋めるというのは確かに悩ましいが、ベイスターズの先発投手の育成は上述したように長いタイムスパンで見れば希望が持てるものになりつつある。


そして、これはリリーフにもあてはまると言って良い。


下表は来年開幕時点で30歳以下の主要な投手たちの年齢分布をまとめたものであり、先発、リリーフともに20代中盤でローテーションあるいは一軍のブルペンにほぼ常駐する人材(黄色でハイライトした箇所に相当)が確保できている。



さらに、それよりも若い年齢層にも上述した3人の10代の投手たちや、今シーズン終盤に台頭しつつあった石川達也、宮城滝汰の2投手も揃っている。


今回のドラフトで指名した松本(凌)、石田(裕)の2投手は昨年までに上位で入団した大卒投手と高卒投手の間を埋める位置にあり、彼らが活躍してくれればさらにバランスは良くなるだろう。


一方の野手も同様に年齢分布をまとめてみた。



これまで投手主体のドラフトが多かったこともあり、こちらはあまりバランスが良いとは言えない。


捕手では松尾汐恩がリーグ全体で見てもトッププロスペクトであり、二塁手には牧秀悟がいる。


遊撃手は期待のドラフト一位森敬斗が故障等のため期待したようには育っていないと言う問題はあるものの、林琢真の入団や知野直人のショート再挑戦によってチーム戦力ダウンは避けられそうだ。


問題は何かというと、一つ目はファースト、サードで、小深田大地の伸び悩みのために目算が外れたというのが、正直な感想だ。


5年後には宮﨑敏郎は39歳、佐野恵太をファーストにコンバートした場合、彼が33歳とベテランの域に入りつつある年頃だ。


いや、宮﨑選手の休養日の打線の圧力低下を見れば、この問題は将来ではなく既にもう顕在化していると言って良いだろう。


二つ目の問題は外野手。こちらも厳しい。


昨年まで順調に見えた楠本泰史、蝦名達夫の二人が打率1割代に低迷したことによって、関根大気以降の世代で主軸と呼べる外野手が欠けているように見える。


そもそも、今季は佐野恵太が不調だったこと、タイラー・オースティンが外野手として出場した試合は結局なかったこと、年によって成績が上下する桑原将志の成績が低め安定だったこと、前半ブレイクした関根大気が後半失速したこと、などで今季のベイスターズ外野陣の打撃成績は12球団でビリから2番目と言う惨状だった。


このまま5年後を迎えたらどうなるのか?


度会選手は長打力も脚もある外野手であり、トップバッターの有力候補となる。


さらに、高校時代は内野手であり、前出の練習試合でベイスターズからサードを守って見せて欲しいと言うリクエストを出していたことからも、宮﨑の後継という可能性も含まれている。


こうして整理してみると、度会選手の獲得は5年後のチーム状況を考えればベストの一手だったと思えてくる。


冒頭に書いた通り、度会選手の一位指名とバウアー投手の去就は別の話なのだろう。



しかし、注意して欲しい。


私はトレバー・バウアーが居なくなるとは言っていない。


彼のプレースタイル、いやYouTuberとしての活躍まで含めた彼のライフスタイルはベイスターズでこそ一番輝く。


彼自身そのことがよく分かっているし、彼が最も重視するのはその点なのだ。


Looking forward to seeing you again soon at the stadium!


Till then, enjoy whatever you do, Trevor.



回り出した東克樹と山本祐大の未来が





うっかり忘れていたが、東克樹投手と山本祐大捕手は2017年ドラフトで入団した同期である。


東投手は立命館大学卒(卒論のテーマは「球場によってマウンドからホームベースを見た時の角度と距離における視覚的心理の変化」)で1995年生まれ。


山本捕手は高校卒業後、内定していた大学進学をとりやめてBCリーグ滋賀ユナイテッドから入団した1998年生まれということで、学年で言うと3つ離れていることになる。


東克樹はドラフト1位でベイスターズが一本釣りに成功した逸材。一方の山本祐大はドラフト9位で、その年の支配下登録選手の中で一番最後(82番目)の指名だった。



入団時の東投手のコメント。


“プロ野球界ではかなり小柄な部類だと思うんですけど、小柄な体格でも活躍できるということを証明して、小さな子どもたちの憧れとなれるような投手になりたいです”


“1年目で10勝というところと、10年以上プレーするということで、目標は「二桁」の2文字に設定しました”


山本捕手のコメントは、やや扱いが小さく、


“1軍でレギュラーになり、横浜スタジアムのホームベースを守れるようになりたい”


と言うもの。


思えば、これが二人のプロ野球選手としての原点だった。



【2018年】


この年の春季キャンプで遠投をする東克樹のフォームとボールの強さをテレビで観て、これは凄い新人が入って来たものだと思ったことを良く覚えている。


私のこうした予感は得てして外れることが多いのだが、東投手に限っては第一印象通りの活躍を新人の年から見せてくれた。


4月に巨人戦で2勝を挙げると、5月には甲子園で初完封勝利。


6月までに6勝を挙げ、監督推薦でオールスターにも出場した。


結局、この年は規定投球回に達してチームNo.1の11勝(5敗)を挙げ、防御率もリーグ2位の2.45と言う素晴らしい成績をおさめてその年の新人王に輝いた。



一方の山本祐大は新人合同自主トレをインフルエンザで欠場するなど出遅れたが、5月に途中出場で初マスクを被り、8月の広島戦で代打として初打席を迎えた。


この時はツーランホームランを放ち、初打席初安打がホームランと言う非常に幸先の良いスタートをきった。


しかし、その後、未成年にも関わらず飲酒していた事実が発覚して謹慎となり、結局この年はこの一打席のみで終了。


打率10割、出塁率10割、長打率4.00でOPSは理論的最大値である5.00を記録すると言う瞬間最大風速としては最強の成績を残した。



【2019年】


順風満帆だった東克樹のキャリアに暗雲が立ち込めたのはこの年だった。


自主トレの時期から左肘の炎症のため思うような練習ができず、ファームでの調整が続いた。


5月に1軍に復帰したが、得意にしていた読売戦で3回8失点と炎上するなど、この年は4勝2敗と言う悔しい結果に終わった。そして、彼の肘はこの間も悲鳴を挙げていたのだろうと思う。


山本祐大はイースタンリーグの試合で頭部に死球を受けるなどもあり出遅れたが、7月にシーズン2度目の一軍登録を勝ち取ると、8月のヤクルト戦で延長12回裏二死満塁で代打として打席に立ち、見事にサヨナラヒットを放つ勝負強さも見せた。



この年は結局12試合に出場し、12打数4安打と言う成績だった。



【2020年】


東投手の左肘は限界だった。


春季キャンプ中に靭帯の損傷が明らかとなり、2月20日にトミージョン手術を受けた。


ここから彼の長いリハビリが始まることになる。


山本祐大にとっても、この年は雌伏の時だった。


1軍での出場はわずかに2試合。ノーヒットのままシーズンを終えた。


しかし、イースタンリーグでは捕手としてチーム最多出場を果たし、打率も2割台後半と良好だった。


また、持ち前の強肩を活かしてリーグトップとなる盗塁阻止率 .691を記録するなど、プロのキャッチャーとしての基礎が出来上がった年だったと思う。



【2021年】


ようやくリハビリを終えた東投手はこの年のシーズン戦最終盤、9月28日のヤクルト戦で767日ぶりに1軍の復帰登板を果たした。


この夜、私は本ブログの二つ目となる記事「東克樹と私の心のヨロイ」を書いた。


一部引用してみよう。


“東投手が去年の2月20日に左肘のトミージョン手術を受けてから、私はずっと待っていた。


今年になってキャッチボールを始めたというニュースを見た。


その後も時々Twitterを覗いて近況を知った。


4月21日 手術後はじめて捕手をすわらせて投球しました。

4月24日 捕手の方にすわっていただいて初めて変化球を投げました。

5月9日 初めて打者に投球しました。

7月11日 ようやく実戦(二軍戦)に復帰しました。


徐々に復活しつつあることを知り嬉しかった。


捕手をすわらせて、から捕手の方に座っていただいて、に変わったことも嬉しかった。投球以外にも成長しているのだろうと思った。


そして今日、東は767日ぶりに一軍のマウンドに立った。


青木への2球目は外角低めへのスライダーだったと思う。


そんなに甘いボールには見えなかったが、青木が一枚上だった。流し打ちの打球は風にものってレフトスタンドに吸い込まれて行った。


満塁ホームランだ。


ここで東は降板。これが767日ぶりの彼の晴れ舞台だった。


この短い時間の出来事は、私の心のヨロイを突き抜けて、子供の頃と変わらないむき出しの自分自身に突き刺さった。


立ち直るには、いつものように、2時間程度の有酸素運動で汗をかき、プロ野球スピリッツでかたきをとり、そして酒なども飲むことが必要だろうと思う。


しかし、私には、このショックよりもずっと大きな喜びがある。


そうだ。東克樹がとうとう帰って来たのだ”



この年の彼の成績は1勝2敗だったが、投球内容は復活を予感させるものだった。


翌年の活躍を誰もが期待していたが、現実はそんなに甘くないことを思い知らされることになる。


山本祐大はこの年自己最多となる51試合に出場し、リード、盗塁阻止ともに捕手としての実力アップを印象付けたが、バッティングは不調で、打率 .131と低迷した。


この年のオフにレーシック手術を受けたのも、打撃成績を憂慮してのことだったのかも知れない。


【2022年】


最有力候補だった今永昇太が開幕直前に左前腕部の肉離れで離脱したため、やや消去法的に東克樹が開幕投手となったが、その試合では指のマメをつぶすアクシデントで途中降板し、そのまま敗戦投手となった。


その後も調子が上がらず、コロナによる離脱などもあって1勝6敗と言う不本意なシーズンを過ごした。


チームは2位でCSに進出したが、中継ぎとしてブルペン待機していた東克樹の出番は最後まで無く、敗退後は悔し涙を流したと言う報道があったと記憶している。


山本祐大はフェルナンド・ロメロ投手とバッテリーを組んで3月29日にチーム初勝利を挙げた。


また、4月には上茶谷大河投手のマダックスをお膳立てするなど、リード面では成長が見られたが、打率は1割スレスレのレベルで推移し、後半はファームで過ごすこととなった。


前年のオフにレーシック手術を受けて視力は改善していたはずだが、この年の彼のバッティングフォームは無駄な動きが多く、スイングも弱かったと思う。


この頃の私は、若手の研究者の論文にダメ出しする時に、「山本祐大のバッティングみたいに軸がブレブレじゃあないか」などと言っていたのをフト思い出した。



【2023年】


そして今シーズン、東克樹と山本祐大の二人はバッテリーを組んでセリーグの強打者たちに立ち向かうことになった。


東投手はオープン戦序盤は打ち込まれることが多かったが、開幕直前に突如復調し、4月6日の初先発となった読売戦で7回無失点で勝利投手となった。


同月30日の中日戦では自身初のマダックスを達成するなど前半戦だけで8勝を挙げ、5年ぶりとなるオールスター出場を果たした。


後半戦も勢いは止まらず、遠藤一彦さんの持つ球団記録と並ぶ12連勝を飾って16勝(3敗)の最多勝、さらには最優秀勝率のタイトルを手にした。


9月、10月の月間MVPも初受賞。


シーズン最終戦となった10月4日の読売戦では8回1失点で敗戦投手となり、CS初戦も8回2失点でチームを勝たせることができなかったが、ここは来季の目標として取っておこう。


そして、この二人に最高の栄誉の知らせが届いたのは10月24日。





“この賞を頂くことができ非常に嬉しく思います。


2人でしっかりとコミュニケーションを取って打者と向き合ってきた結果がこのような形になったので凄く祐大に感謝したいですし、祐大のおかげです!”


“このような素晴らしい賞を受賞でき、本当にうれしく思います。


ほとんど実績のない自分を信頼して投げてくれた東さんのおかげですし、東さんが自分を成長させてくれました。


またバッテリーだけではなく、守ってくれている野手の方々あってこその受賞なので、チームメイトの皆さまにも本当に感謝しています。


これからもチームの勝利に貢献していけるよう、全力で頑張っていきます“



東克樹投手、山本祐大捕手、最優秀バッテリー賞受賞、おめでとうございます。


二人とも良いことばかりの野球人生ではなかったけれど、結果が出ない時も一途に励んできた努力の賜物だと思います。


来年は相手チームも研究してくることと思いますが、さらにその上を行く工夫で益々活躍されることを心からお祈りしています。

来季のスローガンは「横浜変新」に決定か?





CS第二戦に敗れた日の夜から発熱して数日間寝込んでしまった。


周囲からは、「可哀想に。やっぱりかなりショックだったんだね」などと言われたが、ナニ、偶々そうなっただけサ。


体調も回復したので、これから今季の反省と来季に向けた課題などをボツボツ書いて行こう、と思っていたタイミングで三浦監督の以下のような談話が報道された。


“来季に向けていろいろ考えている中でね、いろいろあります。(課題は)一個じゃないです”


“来季に向けてチームとして同じことはできないとしても、うちのところでいろいろ改善していかないといけないところもありますし、変えていかないといけないところもある。自分自身も変えていかないといけないし、いろんなものを変えていかないといけない”


“今のままじゃいけないから、それしかないですよ。全員が思ってるんじゃないですか、全員が思わないと駄目ですよ”


この談話に対して、「変えると言っても、何を変えるのかがわからず抽象的だ。これではダメだ。具体的にどうするつもりなのかを言って欲しい」と言ったコメントがインターネット上で散見される。


そうですね。これだけだと計画や戦略はさっぱりわからない。


しかし、私としては、三浦さんが感じている「変わらなくてはいけない」という変革と進歩への渇望を現時点では評価したい。


むしろ、安易に「阪神にあってウチになかったもの、四球と盗塁を増やす」などと短絡的なことを性急に言い出さなくて良かった、とも思っている。



【自分自身も変えていかないといけないし、いろんなものを変えていかないといけない】


皆さんご存知の通り、三浦さんはホエールズ〜ベイスターズ一筋、投手として24年間にわたって現役を続けてこられた。


従って、私は、彼がプロ野球については酸いも甘いも、表も裏も全て分かっている、と思い込みがちだったが、良く考えてみるとそうでも無いのかも知れないと思うようになった。


理由は単純。


先発投手は中6日で登板するので、ベンチの中つまり現場でゲームに参加するのは6試合に1回だけということだ。


実際、24年間で三浦大輔投手が登板した試合数は535、つまり年平均で22試合程度ということになる。これは野手のレギュラーと比べると随分少ない。


ちなみに、今年3年目だった牧秀悟のこれまでの出場試合数は既に415に達しており、来年には三浦さんの24年間の総数を上回ることになるだろう。


他方、野球と言うスポーツの焦点であるピッチャー対バッターの勝負については、1試合に4打席程度しか経験しない打者に対して先発投手は実に多くの場数を踏んでいる。


三浦大輔投手が24年間に対戦した打者の数はのべ13,657人。



つまり、三浦さんは現役時代にピッチャー対バッターの勝負という局地戦を13,657回経験する一方、9回まで一貫したゲームの流れとしては535回しか経験していないことになる。


このバランスは野手あるいは中継ぎ投手達とは大きく異なっている。


そのせいか、三浦さんの采配やチームのマネジメントを見ていると、どうも、野球の試合と言うものを個別の「勝負」に分解してみる傾向があるように思う。


打たれた投手や凡退した打者を同様の場面で「やり返せ」と言う気持ちで起用したり、回またぎの投手をあわよくばと念じて続投させたり、と言う試合の流れよりも個別の勝負を重視するような采配が多い。



こうした采配は「勝負勘に欠ける」などと言われているが、上述した彼の経歴のために試合全体を通しての経験が不足しており、しかも野球のゲームを個別の勝負に分解して考える傾向があることを反映しているように私は感じている。


言い方を変えれば、三浦さんは、ピッチャー対バッターの勝負という局地戦の繰り返しではない9イニングのゲーム全体の流れと言うものを監督に就任した2021年から改めて勉強しているところなのではないだろうか?


失礼を承知で言えば、監督として未成熟だと思う。


いや、良い方に目を向ければ、まだ伸び代がある、と言うべきか。


今シーズンの終盤からCSにかけて、三浦さんのコメントで変わったな、と思うことがあった。


以前は、出来なかったのは選手の責任という認識の発言がしばしば見られたが、最近は、出来ない選手を起用した(あるいは選手のできないことをやらせた)自分の責任と言う趣旨のことをおっしゃる様になった。


この点については賛否両論あると思うが、私は、三浦さんの監督としての成長だと評価している。


だって、出来なかったら選手のせいと思っている人が、監督としてレベルアップする筈はないじゃあ無いですか。


三浦さんがこの辺りのことを踏まえて「自分自身も変えていかないといけない」と語っているのだとすれば、我々ファンとしては彼を信じて応援し、背中を押すべきだと思う。



【生き残る種とは変化に最もよく適応したものである】


“生き残る種とは、最も強いものではない。


最も知的なものでもない。


それは、変化に最もよく適応したものである”


と言うチャールズ・ダーウィンの言葉はあまりにも有名だが、プロ野球の世界にも当てはまると私は思っている。


好打者を並べた強力打線、好投手の居並ぶ先発ローテーションと安定したブルペン、意識の高い選手たちが高度に連携したチームワーク、と言ったチームの傑出した強みは、それが他チームに認知された瞬間から攻略の対象になると考えるべきだ。


従って、こうした強みがどれほど傑出したものであったとしても、敵チームの対策に則して変化していくと言う柔軟な適応性が無ければ遠からず攻略され無用の長物となってしまう。


もしも三浦さんがこうした意味合いで変わっていくことを宣言したのであれば、私は喜ぶべきことだと思う。


監督就任以来、三浦さんは各選手の評価を一旦下すとそれを中々変えず、彼の頭の中にある序列あるいは格に応じて固定的に選手を使い続けることが多かった。


私は、チームの戦術や目指す姿については一度決めたらブレべきではないが、それを実現する個々のプレイヤーの選択については、適材適所で使用する引き出しの豊富さと好不調に応じて入れ替えられる選手層の厚さに裏付けられた柔軟性が必要だと常々思っている。


成長過程にある三浦監督が、徹底すべきところと柔軟に対処すべきところとを大げさに言えば逆転させる程「変える」と言うのであれば、私としては拍手を送りたい。



【そして新しい石の板も壊しなさい】


今年のペナントレースが阪神の独走で終わったこと、そして主力選手に比較的若いプレイヤーが多いことから、プロ野球解説者の中にも、タイガースが優勢であることはしばらく変わらず、これから阪神の黄金時代が来るだろうとおっしゃる方がいる。


しかし、こうした意見は現代のプロ野球の変化あるいは進化するスピードを過小評価するものであるように私には思える。


四球を含めた出塁率を重視した攻撃を一つの特徴とする今年のタイガースの型に対して、他チームのアナリストたちの分析と対抗策の研究は既に始まっている筈だ。


阪神タイガースがこうした他チームの工夫や改良にもかかわらず来季も連覇するためには、彼ら自身が一度作り上げた今年のチームを一旦壊して、秋季及び春季のキャンプで進化形に組み立て直すことが必要と思われる。


我がベイスターズについても、今季の阪神の強さと自分達の課題を分析して、2023年の勢力分布の中で優勝できるようにチームを改善するのでは勝算はない。


来季の各チームの戦略や投打の技術革新の可能性を分析・予想し、その結果に基づいて2024年に勝てるチームを作って行く必要がある。


そのためにはベイスターズがリーグをリードするような新しいアイディアを考案し、それを盛り込んだ戦略やチーム編成として形にして行くことが不可欠だ。


こうした工夫や戦略立案に関してはデータアナリスト達の果たす役割が重要であり、そのためには、1軍のコーチなどの現場にアナリスト達としっかり連携できる人材が必要となる。


先日発表された小杉コーチ、大原コーチ、つる岡コーチの昇格はこうした方向性とも合致するものであるように思われる。


“古い石の板を壊しなさい。そして、新しい石の板も壊しなさい”と言ったのはニーチェだったか。


今年の阪神タイガースは昨年までのセリーグを席巻していた野球と言う古い石の板を壊した。


しかし、彼らの野球は今や新しい石の板となっており、今度は誰かがそれをまた壊すことになるのだ。


それが我々の愛するチームであることを祈ろう。


28日からはじまるオリックスと阪神の日本シリーズは、新しい石の板の壊し方、そしてその先にある来年の新たな戦い方のアイディアを得る上で示唆に富んだものになると期待している。


三浦さんの「変わらなくてはいけない」と言う渇望を具体的なプランにしていく作業は、日本シリーズの見取り稽古から始まるような気がするのだ。




その分析とプランニングを踏まえて、ベイスターズは変わることになるだろう。


ただ変わるだけではなく、アイディアを盛り込んだ新しい形になる筈だ。


今年のスローガンを横浜挑戦を一字替えて横浜頂戦にした三浦さんのネーミングセンスに敢えて寄せて、来季のスローガンの予想は


“横浜変新“


としておこう。