mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

トレバー・バウアーの記者会見を深読みする





去る10月16日月曜日に横須賀にあるDeNAの球団施設Dockにおいてトレバー・バウアーが記者会見を開いた。


主題は彼が来季所属する球団の条件などについて。


この会見以前から、性暴力に関する件が和解金等を支払うことなく不起訴となり、彼の無実が法的に立証されたことを受け、MLBへの復帰の道が開けたと言う趣旨の報道や書き込みが多く見られた。


一方では、投球時の粘着性物質使用に関する紛争等で彼とMLB上層部との間には埋め難い溝があり、本件が決着したからと言って直ちにMLBのチームが彼にオファーを出すとは限らないと言う識者の言葉も伝えられている。


彼の今季の年俸は契約途中で彼を放出したドジャースから30億円、ベイスターズから4億円プラス出来高ということだが、このうちドジャース分は来季以降ゼロとなるため、彼の所属する球団が全額を負担する必要がある。


NPBに残ってベイスターズあるいは他の球団に所属する場合でも年俸10億円程度は必要なのではないか、と言うのがこれまた識者の見解である。


シーズン途中から彼が言っていた通り、日本、韓国、米国のどこでプレイしているかは全く分からないと言うのが現状だと思う。


私は、彼がこのタイミングで記者会見という手段で来季所属球団の条件を公表したことに大いに興味があり、その点に注目して彼が何を考えているのかを理解しようと試みた。


野球に対する深い愛情を持ち賢い彼のことだから、この会見についても背後にしっかりと検討された戦略があってのことだと思うのだ。



【誰に伝えたかったのか】


来季の所属球団に彼が求める条件と言うのはまさに契約に関する事項であり、本来は彼を獲得しようとする各球団の編成担当者と共有すべきものだ。


しかし、そうであれば今後の交渉を通じてそれぞれの球団に伝えれば良い訳で、あえて記者会見と言う手段を使う必要はない。


強いて挙げれば、同じことを各球団に伝える手間を省く、NPBのみならずMLBや韓国の球団にも伝えられることを狙う、と言うことが考えられる。


このうち、各球団とのコミュニケーションの手間を省くため、と言うのはそもそも代理人の仕事でありちょっと考えにくい。なんだったら同じ内容の書類を送付するのでも良いではないか。


MLBや韓国の球団も同じことで、他の選手と同様に、公表せずに可能性のある球団に代理人が様々な方法でコンタクトすることができる。


こうして考えてみると、やはりバウアー選手の狙いは、本来は各球団と共有すれば良い彼の要求を一般の人々と広く共有することだったのだろう。



恐らくは、来季の所属球団の選定プロセスの透明性を高め、結果的に彼がどこに所属することになろうとも、どう言った基準や価値観で彼がその意思決定を行ったのかを我々が理解できるような仕組みを作ることが狙いなのだと思われる。


もう一つ考えるべきことは、彼のこの狙いは彼自身のYouTubeチャンネルを通じても実行可能だと言うことだ。


毎週定期的にアップしている彼自身の動画でこの内容を伝えることは簡単であるにもかかわらず、そうしなかったのは何故だろうか?


これまでの彼のパブリックリレーションのあり方を振り返ってみると、内容と対象に応じて情報を伝える手段を区別しているように思う。


彼自身の興味があるコンテンツを彼自身のファンと共有する場合はYouTube、彼のファンと言ういわば内輪にとどまらず広く社会に発信したい内容は記者会見を通じて、と言うように。


そう考えると、彼は「来季の所属球団の選定基準や価値観」を彼のファンに加えてNPBやMLB等のファン全体(ここには彼に対するアンチの人々も含まれる(特に米国))、さらには社会全体に向けて伝えたかったのだろうと思う。


さらに深読みすると、何故Dockだったのか、も気になる。


他球団も対象になる話なので、彼自身が各紙に連絡して第三者的な場所を用意することもできるはずだ。


もし彼がそうしていたらどのように受け止められただろうか?


我々は、バウアー選手はもうベイスターズには所属していないと感じたことだろう。恐らくは退団することを前提に新たな所属先を探すプロセスを始めたと解釈していたことと思う。


しかし、彼はそうはしなかった。


今後の各球団のオファーがどうなるかは全く分からないが、DeNA所属選手として、ベイスターズに残留すると言う可能性を持ちつつ、幅広く可能性を探ると言うのが現在のスタンスだろう。



【何を伝えたのか】


記者会見で彼が語った「来季の所属球団に求めること」は以下の三つ。


(1) 優勝を狙えるチームであること


(2) 彼自身が個人タイトルを狙うことに協力してくれること


(3) 彼のプレイを多くのファンが楽しんでくれる環境があること


いずれも彼が日頃から口にしていることであり、特に違和感はない。


(1)に関して言うと、常勝軍団を求めているのではなく、優勝争いに参加する確率が高い球団であることに注意すべきだ。つまり、NPBで言うと阪神やオリックスだけが候補ではなく、彼らのライバルになる球団はこれに該当することになる。


(2)は彼の中4日(あるいは3日)の投球間隔を認めてくれる球団ということを意味する。


これは実は簡単なことではなく、先発ローテーション全体を彼を軸として組み立て、他の投手は週によって中7日になったり登板機会を飛ばすと言ったスケジューリングを行うことが必要になる。


もちろん、その見返りとして、その球団は頼りになるイニングイーターを手に入れることができるわけだが、そもそも、先発ローテーションが充実しているチームはイニングイーター自体不要な訳で、そうなると阪神やオリックスはちょっと考えにくくなるように思う。


言い換えれば、(1)と(2)の条件を両立させることのできる球団は、先発ローテーションが充足していないにも関わらず優勝争いを演じることのできるチームということになるので、NPBで言うとソフトバンク、DeNA、読売あたりに絞られるように思う。


世間ではソフトバンク有利という声もあるが、ソフトバンクは(2)を受けれるのが容易ではないと言う「球団関係者」のコメントも伝えられている。


読売は既にメンデス投手とグリフィン投手という左腕外国人2人の残留を既定路線にしていると伝えられており、外国人選手枠の問題も考えた上でバウアー選手を軸にした先発ローテーションを組むということになるので、彼らを投げ抹消のような使い方で起用し、さらに外国人打者や外国人リリーバーにも制約をかけることが必要になるのでさらに難度が高い。


一方のDeNAは交流戦あたりからバウアー選手を中4日で回すことを前提とした先発ローテーションを組んでおり、(2)に関しては実績がある。この点は大きなアドバンテージと言って良いだろう。


(3)は人気球団であることに加えて、ベンチやロッカーまで彼が撮影することを許可すると言う条件も含まれているだろう。この点もベイスターズは問題ないが、試合映像の使用に関してはパリーグの方が融通が効きそうだ。



さて、彼が会見で挙げた三つの条件と並んで、彼が挙げなかったことにも注目する必要がある。


具体的には、金額や動作解析等の設備だ。


このうち動作解析やデータ分析については自前の機器とスタッフで十分に対応できるために条件とはしなかったと語っている。


また、金額についてはMLBとNPBの間で差があることを考慮して挙げなかったとする記事もあった。


少し穿った考えかもしれないが、最終的に所属球団が決まった時点で、結局はお金の問題だったんでしょ、と言うありがちな批判に対して先手を打ったと言う面もあるだろう。


こうして三つの条件を公表した以上は、これらが満足される球団であることを大前提として、その中で金銭面も含めて総合的に判断したと言う説明をするだろうし、彼は実際にそうやって決めるだろうと思う。



【彼が期待する効果は何か】


冒頭に述べたように、今回の記者会見はバウアー選手が自発的に行った戦略的なコミュニケーションであり、必ずその目的がある。


最後にその目的について考えられることを書き出してみよう。


(ベイスターズに対して期待する効果)


ベイスターズについては、(2)と(3)の条件を満足できることが実績として示されている。


争点になるのは(1)の優勝を狙えるチームというところだと思うが、実は彼がこの会見をベイスターズのCS敗退直後、来季に向けての体制刷新の時期に行ったことは、公の場を借りてチームの課題に本腰で取り組むことを球団フロントに求めた、という意味合いが強いように思う。


実際、投手コーチ、オフェンスコーチともにデータアナリスト達と緊密に連携して定量的な裏付けのある作戦を現場に伝えることのできる小杉コーチや大原コーチあるいはつる岡コーチなどの昇進が既に報じられている。


こうした動きから見ても今回の会見でバウアー選手がベイスターズに期待した効果は、個人成績が優れているにも関わらず勝利に繋げられなかった首脳陣へのフロントの本気のテコ入れ及び編成上のアンバランスの是正であり、それは既に発揮されつつあるように思う。


ところで、ベイスターズの関係者は彼が今回語った三つの条件を我々同様16日に初めて聞いたのだろうか?自前の施設Dockを使って行うのに?


それは考えにくい。


彼らは事前にこの3箇条を聞いて、既に動き初めていたと考えるべきだ。


また、会見後、バウアー選手の残留のために南場オーナーのSNSに多くのファンが直訴するメールを送っているらしい。この面でも彼の狙いは効力を発揮しつつある。



(2) NPBの他の球団に対して期待する効果


端的に言えば、お金だけではない、と言うこと。


特に(2)に関しては、他の投手や外国人選手への波及効果をもつこの条項を受け入れられるように球団内のコンセンサスを取り付けてから話を持って行かなくてはならないと各球団担当者が認識することが彼の期待する効果だと思う。


そして、(2)が容易ではないというソフトバンクの「球団関係者」のコメントなどは、それが本当だとすれば、バウアー選手の期待する方向で推移しているように思われる。


(3)MLBの各球団に対して期待する効果


金額を条件として挙げなかった大きな理由は、資金力の差でNPB以上の金額を提示すれば喜んで米国に戻ってくるという訳ではないことを知らしめたかったからだろう。


(1)の条件がある限り、MLBの弱小球団がお金を積んでもダメということになる。


バウアー選手自身はMLBで再び活躍したいという気持ちは勿論あると思うが、MLBでさえあればシッポを振って戻ってくるということはない、と明確にすることで彼のプライドを示したかったのだろうと思う。



以上を総合的に考えてみると、


・彼の今回の提言を受けて首脳陣や選手の補強に球団が本気でテコ入れして名実ともに優勝を狙えるチームにする


・バウアー選手が満足できる最低限の資金を確保する


と言う二つのハードルがクリア出来れば、彼の来季の所属先として我がベイスターズが最も有力だ、と私は結論づけたい。


これが単なる身贔屓な主張かどうかはいずれ明らかになるだろう。


勝つために準備する意欲を最大にすることがこれからの課題だ





今年のCSファーストステージではカープの周到さが際立っていた。


昨日の第1戦、2-1とベイスターズ1点リードで迎えた8回裏。


ベイスターズ先発の東克樹が好投を続ける中で唯一投げにくそうにしていたデビッドソンをフルカウントから四球で歩かせると、広島ベンチは迷わず羽月隆太郎を代走に送る。


しかし、ここで二盗は仕掛けない。


左腕の東克樹が目で牽制し、強肩の山本祐大も十分に警戒していたからだ。


打席の矢野選手は1球で送りバントを決めて一死二塁。


次打者の菊池涼介のところで三盗をするのは兼ねてからの手筈通りだったのだろう。


羽月選手は「1球目から行くと決めていました。怖さは全くなかったです」と試合後にコメントしていた。


走者一塁では警戒厳重だが、二塁に進むとDeNAバッテリーと二塁手、遊撃手は牽制球などの警戒を怠りバッターに集中するようになる、と言うことがデータアナリスト達から伝えられていたのだろう。


「怖さは全くなかった」と言うのは東が最初からセカンドに牽制球を投げることは絶対に無いという確信があったからに相違ない。


ノーマークのまま初球から走って完全にセーフ。



山本祐大が三塁へ送球すらできないほど完全に意表をついた攻撃だった。


さらに3球目に菊池涼介がスクイズ。


予想外の三盗を決められてバッテリーが動揺していることを見越した一手はものの見事に決まった。


打者が東克樹と相性の良い菊池選手だったこともバッテリーやDeNAベンチがスクイズに対して無警戒になってしまった要因の一つであるように思う。


ここまでの一連の攻撃は予め綿密に計画された一種のサインプレーとも言うべきものだったと思う。


スクイズの直前にわざとサードコーチャーと走者の羽月選手が話し合っていたのも巧妙なトリックだったのかも知れない。


秘すべきスクイズの直前にこれ見よがしに次のプレイの確認をすることは絶対にない、と誰でも思う筈だから。


デビッドソンの四球の後わずか4球しかもノーヒットで2-2の同点となる失点を喫したことは東-山本バッテリーにとってもDeNAベンチにとってもショックだったと思う。


この攻撃で流れが大きく傾き、初戦の逆転サヨナラ、さらには第二戦でのカープの勝利につながる道筋が出来たと言っても過言ではないだろう。


今日の第二戦でもカープの攻撃には周到さを感じた。


初回の攻撃で先頭の菊池涼介が9球粘ってレフトフライ、続く野間峻祥も8球粘ってライトフライ。


そして次の西川龍馬も粘り、8球目を今度はライトスタンドに叩き込む先制のソロホームランを放った。



恐らく、今永昇太は立ち上がりに制球がやや不安定になり球数を多く投げさせると甘いボールが来るというデータがあったのだろう。


明らかに意図を感じる各打者の粘りだった。


以前、トレバー・バウアーがカープと2度目に対戦した際にめった打ちにあって大炎上したことがあった。


これは癖を盗まれていたせいだと思うが、それでも、それを手がかりに完璧に打ち崩すと言う結果を出すためには相当に周到な準備をしていたに違いない。


それ以来、カープには優秀なデータアナリストの方がいて、しかも現場のコーチや選手たちと緊密に連携が取れていると感じることが多い。


その集大成が今回のクライマックスシリーズだ。



勝敗を大きく分けたものは、勝つための準備の差だったと思う。


ベイスターズの采配について色々な意見があることは承知している。


初戦の桑原のバスター、林の盗塁、蝦名の前進守備、今日の大田泰示のバント、ポストシーズンで同点という緊迫した局面での上茶谷の回跨ぎなど。


私は、こうした采配だけを取り上げて是非を議論すべきではないと考えている。


本番の生きたボールに対する桑原のバスターや大田泰示の送りバントはどの程度準備していたものだったのか?


CSという負荷の大きい舞台での回跨ぎについて上茶谷はメンタルも含めた準備をしていたのか?


つまり、意図する戦術を成功させるための周到な準備の有無に注目すべきだと思うのだ。



少し脇道にそれるが、女子ソフトボール界で永く日本のエースに君臨されている上野由岐子さんの話をしよう。


2004年のアテネオリンピックで米国に敗れて銅メダルに終わった直後、上野さんが日本のソフトボール界では当時誰も投げていなかったシュートを習得した。


上野さんがシュートを我がものにし、しかもそれが試合で威力を発揮する「使える」ボールだと知った当時の宇津木監督が考えたことは、このボールをギリギリまで秘匿すると言うことだった。


上野さんはこの監督の指示を守り、それからの4年間国内外の試合でシュートを一度も投げることなく2008年の北京オリンピックを迎えた。


そして彼女はこの大会でも最後の日まではシュートを投げなかった。


上野さんが公式戦で初めてシュートを投げたのは予選ラウンドを終えた後、この大会で米国との2度目の対戦となる決勝戦だった。


米国チームは全く予想していなかった上野投手のシュートボールと初めて対戦して驚愕し、事前に描いていたゲームプランは霧散して敗れた。


日本女子ソフトボール界初めての金メダルはこうして獲得されたと言うことだ。


上野さんが密かに研鑽し監督がそれを秘匿したこの4年の間の眠り爆弾のような周到な準備には本当に頭が下がる。



今回のクライマックスシリーズでカープにあってベイスターズになかったものは、こうした勝つための周到な準備とそれを支える執念だったと私は思う。


これから来年2月のキャンプインまで野球のない長い日々が続くことになるが、ベイスターズの監督、コーチ、選手たち、そして他の多くのスタッフの方々が今日の敗戰を糧にして「勝つために準備する意欲」を12球団で最高と言えるレベルにまで高めてくれることを祈って止まない。



“「勝つ意欲」はたいして重要ではない。そんなものは誰もが持ち合わせている。


重要なのは、勝つために準備する意欲である”


ボビー・ナイト(将軍と呼ばれた米国のバスケットボール名コーチ)


CSファーストステージはベイスターズが勝ち上がると信じるべき7つの理由





10月4日のシーズン最終戦を悔しい結果で終えてからはや9日。


「さあこれからクライマックスシリーズだ」と言う勇ましい気分で過ごして来たが、フト気がつけばマツダスタジアムでのファーストステージ初戦は明日に迫っている。


我がベイスターズはここでカープに2勝しタイガースの待つ甲子園に乗り込んでファイナルステージを闘うことはできるのだろうか?


答えから先に言っちゃいますと、


できるんですよ、奥さん。


今日はその理由を7つほど挙げて自信を確信に変えてしまおうと思う。



【理由その1:セリーグ投手二冠の東克樹がいる】


今シーズンの東克樹はトミージョン手術から完全に復活した、いや以前にも増して輝かしい成績を残したと言うべきだろう。


本来の球威、キレ、制球力に加えて、打者との駆け引きと言う点でもひとかわ剥けた大人の投手になった。本人も繰り返し言っているように、この点については「祐大のおかげ」という側面もあるのだろう。


球団タイ記録となった12連勝は最終戦で途切れたが、その試合も完投してわずか1失点。


三浦監督が「東に負けがついてしまって申し訳なかった」と言った通り、2位のかかった痺れる最終戦で先発としての役割を十分に果たした。



あれから中9日でCS初戦のマウンドに立つことになるが、不安を覚える要素は何一つない。


今シーズン、マツダスタジアムでは3回登板して2勝0敗、QS率100%、防御率1.23、被打率 .190、WHIP 0.68と言う素晴らしい成績を残している。


明日も必ず試合を作ってくれることだろう。


注意すべきは1発の被弾。


ジャイアンツとの最終戦では、次打者は投手で一塁が空いていたにもかかわらず吉川尚輝と敢えて勝負してコントロールミスから痛恨の失点を喫した。


この時の教訓を活かしてバッテリーの意思疎通を徹底し、丁寧にリスク回避してくれれば何も問題はないはずだ。



【理由その2:日本の左のエース今永昇太が復調してきた】


「7月25日以降勝ち星から遠ざかっている」という表現が枕詞のようになった感のある今永昇太だが、10日にENEOSと行った練習試合では彼本来の投球を取り戻したように見えた。


彼の投球が不安定になったそもそものきっかけは、8月1日のカープ戦の途中で足が攣り緊急降板したことだった。


この試合の後、彼は投球フォームを少し変えて足の負担を軽減することを試みたようだが、この変更によってピッチング時の身体のバランスに微妙な変化が起きたのだろう。


しかし酷暑は既に終焉し、彼本来のフォームで思う存分に投げることができる状態に戻りつつあるのでは無いだろうか?



ラミレス前監督がSNSで語っていたように、この時期はMLBのスカウトたちが彼の視察に来ており、意識してメジャー仕様の投球を行なっていたと言うこともあったかも知れない。


しかし、この場合もCSでは本来の投球に戻すだろう。


そうであれば、東克樹と同様に信頼して第二戦を任せることができる。


彼も間違いなく試合を作ってくれることだろう。



【理由その3:トレバー・バウアーが帰ってきた】


右腸腰筋の損傷で一時は今季終了かと思われたトレバー・バウアーが驚異のスピードで回復し、実戦形式の打撃投手としての登板を既に三度こなしている。


三浦監督によれば、故障箇所をかばうような仕草は全く見られず、ストレートの球速(最速152km/h)とホームベース上での強さ、多彩な変化球のキレなど全ての点で故障前の状態を取り戻したとのこと。


本人のコメントも心強い。


“最終的には三浦監督の判断になると思うので、先発で行けと言われるのか、中継ぎで行けと言われるのかわかりませんが、行けと言われたところでしっかりと結果を残したいと思います”


“自分自身、試合で負けることは本当に嫌いですし、プレーオフで負けるのはなおさら嫌です”



昨日の投球ではやや制球に苦労したようだが、中4日で最終調整を行い仕上げて来てくれるはずだ。


自身のYouTubeでも「ヒーローは最後に帰ってくる」と語っていたバウアー投手は持てる力の全てを出し切ってチームの勝利に尽力してくれるだろう。


そのことを疑う余地は全く無い。


サイ・ヤング賞投手が全身全霊を込めて投げるんですぜ、もし第3戦にもつれ込んだらきっと勝ってくれますよ。



【理由その4:外国人リリーバーが力でねじ伏せる】


先発の三本柱はいずれも完投能力のある投手だが、CSでは7回程度を目処に最初から全力で飛ばして行くことだろう。


そうなると、山﨑康晃が不振から降格し、森原康平も下半身のハリで離脱中ということで8回、9回を任せる勝ちパターンのリリーバーが1番の懸念材料だろう。


三浦監督はCSにおけるクローザーとしてジェフリー・ウェンデルケン投手を指名している。


元々、山﨑康晃に代わるクローザーを指名する際に森原投手とウェンデルケン投手の2択になったように、指標の上でもウェンデルケンにはクローザーを務めるだけの資質がある。


MLBでの経験と実績もあり、今シーズンを通じて勝ちパターンを務めたことで日本の野球にも慣れた筈だ。


経緯から言うと消去法で誕生したクローザーと見られるかも知れないが、山﨑康晃、森原康平、ウェンデルケンの3人が心身共に万全でNPB仕様の投球ができるようになった場合、ベストな選択は本来ウェンデルケンだったと私は思う。



彼は必ずやってくれる。


そして、今季は序盤から不調の期間が長かったエドウィン・エスコバーが終盤戦に状態を上げて来ている。


9月の防御率は1点台前半であり、球速も155km/hを上回ることが多い。


さらに、スライダーとチェンジアップの制球が改善している点に注目したい。


序盤戦では広島戦で炎上することもあったが、今は状況が違う。


ストレートの状態が戻り変化球の精度が上がって緩急をつけられるようになったエスコバー投手に対して左の好打者の多いカープ打線は苦労するだろう。


この二人を中心に、今季躍進した上茶谷大河、新鋭の石川達也と宮城滝汰、そして復調しつつある山﨑康晃と三嶋一輝と言った実績のあるリリーバーたちがブルペンを強力なものとしてくれるはずだ。



【理由その5:大田泰示が故郷に錦を飾るに決まっている】


大田泰示は東海大相模からジャイアンツに入団したが、出身地は広島県福山市だ。


彼自身が「空気は合っていると思うので、ポジティブに考えて頑張りたい」と言っている通り、今季マツダスタジアムでは17打数8安打の打率 .471と良く打っている。


初戦で先発する予定の床田投手に対しても10打数5安打と相性が良い。


「勢いがあり、相手に恐怖感を与えられるチームが勝ち上がる。僕たちには勢いと若さがある」


と語っている大田泰示がCSでの打線のキープレイヤーになると私は予想している。



恐らく1、2番で起用される林琢真と関根大気が出塁して3番大田がさらにチャンスを拡大したところ、例えば初回の一死二、三塁で牧秀悟、宮﨑敏郎に繋げると言うのがベイスターズの目指すべき攻撃パターンだろう。


主将でもある佐野恵太が有鈎骨骨折で離脱しているのはたしかに痛い。


しかし、warなどの総合的な指標で見る限り、守備や走塁も含めた総合力での彼の貢献は今季に限っては必ずしも大きくない。


守備、走塁まで含めると、レフト関根、ライト大田の布陣の方がチーム力としては高まる結果となった、と後日言うことが出来るように災い転じて福となすことも決して不可能ではないのだ。



【理由その6:首位打者宮﨑俊郎と打点王兼最多安打の牧秀悟は打棒爆発の時を待っている】


今季の宮﨑敏郎は適宜休みをとりながらの起用で2度目の首位打者を獲得すると言う快挙を成し遂げた。


その宮﨑選手の出勤パターンについて、私はある傾向があったと見ている。


簡単に言うと、休養明けに良く打つのだ。


そして出場が続いて疲れが溜まってくるとゆっくりとだが状態が落ちてくる。


この傾向を考えると、10日程度の休みがあってから迎えるCSでは彼の打棒が爆発する可能性が高いと私はにらんでいる。


さらに先のことを言うと、CS後は約1週間を空けて日本シリーズということで、ここで再度の爆発もあり得るだろう。



もう一人の主役である牧秀悟はシーズン終盤にやや調子を落としていたが、彼の場合も疲れということがあるだろう。


春先のWBC出場から始まり、シーズンを通してセカンド4番という非常に負荷の強い役割を全うした。


この10日程度の休みは彼にとっても有用だったはずだ。


CSではリフレッシュした彼の活躍を見ることができるに違いない。知らんけど



【理由その7:セリーグのCSファーストステージは6年連続して3位が勝ち上がっている】


下の表は過去15回行われたCSでファーストステージの勝者をまとめたものだが、シーズンで2位だったチームが勝ち上がったのが6回に対して3位だったチームが勝利した回数は9回に上る。



そう、実は3位の方が成績が良いのです。


さらに言うと、直近6年間では全てシーズン3位のチームがファーストステージを勝ち上がっているのだ。


ファンの多いホーム開催となる2位チームの方が有利なはずだと思うのだが、実際にはそうなっていない。


2位チームの方がプレッシャーがかかる、あるいは受けに回ってしまう、といった理由が何かしらあるのだろうとは思うが本当のところは分からない。


もう一つ付け加えると、三浦監督は昨年に続いて2度目のCS出場ということになる。


そして、シーズン最終盤では、いわゆるマシンガン継投など明らかに短期決戦を想定してリミッターを外した戦術を試していた。


こうした準備は2度目にして初めて可能になることだと思う。


就任初年度のカープ新井監督に対して、この2年目のアドバンテージを活かして優位に試合を進めて行くことができれば敵地での勝ち上がりの可能性はさらに高くなる。




何ごとも7つ理由が挙げられるようなことは実現する、と言われている(私の祖父の遺言)。


と言うことで、同じく3位でCSに進出した2017年と同じように、勝ち上がって日本シリーズで横浜スタジアムに帰ってくることを期待しよう。


宮﨑敏郎のコメント。


「自分たちの野球をしてしっかり勝ち進んで、ハマスタに帰ってきたいと思います。頑張ります」


そうだ、頑張れベイスターズ。


負けんなよ