mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

今年もタイラー・オースティンはひたすらハードヒットする



下の図は、2018年のメジャーリーグで、打撃機会毎にシングルヒットからホームランまでの安打がそれぞれどの位の割合で出ているかを打球速度毎に整理したものだ。


打球速度がおよそl50km/hを過ぎると(MLBでは95mphつまりl52km/hを目安としているらしい)ホームランの確率が急激に上がることがわかる。ホームランのためには打球に一定以上の速さが必要であることは明らかだ。


また、シングルヒットやツーベースも同様の傾向を見せる。このことは、打球速度が上がることによって、打球が野手の間を抜く確率も上がることを意味している。


なお、低い速度のところにシングルヒットのピークがあるのはいわゆるポテンヒットやボテボテの内野安打に相当するらしい。



このブログでも何度か書いているのでご存知の方は読み飛ばしていただきたいが、打球速度が一定以上であることに加えて、打球の飛ぶ方向に上向きの適切な角度がつくとバレルと呼ばれる条件を満たし、長打の確率が飛躍的に上昇する。


以上のことから、強い打球を撃つことの優位は明らかだろう。



打球速度を決定する物理的な要因としては、ボールの反発係数や投球速度といったバッターが関与できないものもあるが、スイングスピード(及びそれに適したバットの選択)に関してはバッターの努力によって向上させることができる。


スイングスピードを決める第一の要因は筋量だ。

そして、インサイドアウトと呼ばれるバットが体に巻きつくような振り方をすることがその力を最も効率的に打球に伝えるメカニズムと言われている。


筋肉の量は除脂肪体重(体重から脂肪を差し引いた、筋肉、骨、内臓などの重さ)によって表されるが、バッターの除脂肪体重とスイング速度を整理したグラフはかなり明瞭な相関関係を示している。



だからこそ、各チームのバッター達はトレーニングに汗を流し、筋力をアップして打球速度の向上に励むこととなる。


セイバーメトリクスでは、最初に書いた「ホームランになるような一定以上(MLBの場合は152 km/h以上)の速度の打球をHard hitと呼んでおり、各打者が全打球のうちどの程度の確率でハードヒットできるかをHard %という指標で表している。


下の円グラフは、昨シーズンのNPBでHard %の高い打者ベスト20を12球団別にカウントしたものだが、打球速度アップのための筋力向上を目指したトレーニングや強い打球を撃つことのできるようなスイングの指導といったチーム戦略が読み取れるように思う。


我がベイスターズは20選手中5人を輩出しており、ハードヒットを志向したトレーニングや練習を組織的に行なっていることがうかがえる。


続いて、4人の巨人とそれぞれ二人ずつの西武、ヤクルト、オリックスといったあたりが同様の方向を目指しているチームと言えるだろうか。



続いて、この20人の打者達の内訳をもう少し詳しく見てみよう。


この図は、横軸にハードヒットの確率Hard %をそして縦軸にはフェアゾーンに入った打球が安打になる確率BABIPを表している。最初に述べたように、打球速度が速ければ野手の間を抜く確率が高まり、さらに、適切な角度がつけば長打も期待できることから、この二つの指標には相関がある。


ベイスターズからベスト20入りした5選手は、タイラー・オースティン、宮﨑敏郎、牧秀悟、佐野恵太、ネフタリ・ソトだ。確かに、彼らは強いスイングで鋭い打球を飛ばしていた印象が強く残っている。


中でも、12球団全体の中でも突出してHard %が高く、それを反映してBABIPも高いオースティン選手は一際目立つ存在だ。



彼のこの優れたパフォーマンスを支えているものはなんだろうか?


① バッティングメカニズム


昨日の記事でも書いたが、MLBでメガプロスペクトと言われつつなかなか結果が出なかったオースティン選手の指標が改善するきっかけになったのは、独立系のバッティングコンサルタント達による彼のフォームの徹底的な分析と指導だった。


彼自身こういっている。


「数年前、カリフォルニアで(MLBヒッティング・コンサルタントの)ブラッド・ボイヤーとクレイグ・ウォーレンブロックのチームにバッティングの指導を受けたんだけど、それが大きなインパクトになっていて、スイングやタイミングに関しては、それを継続しているんだ」


この甲斐あって、横浜に来る前年のメジャーでの彼のバレル率は15.9%と極めて高く、ナ・リーグのホームラン王になったピート・アロンソ(15.8%)や40ホームラン40盗塁を達成しかけたアクーニャ・ジュニア(15%)よりも高い。三振率が高かったことを割り引いても、これだけ有望な選手がよくぞ横浜に来てくれたと思う。


② 愛の除脂肪体重


上に書いたように、スイングスピードを決める大きな要因は筋力量だ。


オースティン選手は身長188cm、体重は100kgで、MLBでは決して大型とは言えなくなっているが(例えば、彼の元同僚ヤンキースのA.ジャッジ選手は201cm、体重128kg)、NPBでは破格の大きさだ。


さらに、彼のSNSを見ればわかるように、オースティン選手は一年中ずっとトレーニングばかりしているようだ。そして、しばしば、愛妻のステファニーさんと一緒にジムにいる写真が掲載されている。





昨日のオンライン取材でもこのようなことを語っていた。


「体の状態は非常にいいです。この冬から新しく柔軟性に関わるコーチを採用し、妻が構築してくれたトレーニングプログラムも併せて実施しました」


また、ステファニーさん考案のメニューで体調を整え、柔軟性を高めるエクササイズに週5日、約2時間のペースで励んできたとのことだ。


トレーニング好きのステファニーさんは約3年前から練習に参加するようになり、〝二人三脚〟の取り組みが、来日2年間で通算48本塁打という好結果につながっている。


今日26日はご夫妻の結婚三周年の記念日だったらしく、一部でネタとなっている夫婦間のやりとりをSNSにアップしていた。


「僕のクイーン、3周年記念おめでとう!


僕の人生の中で最大の功績は3年前の今日、僕と結婚してもらうために君を何とか説得したことさ。


どうやって成功させたのか、まったくわからないよ。


僕は幸運な男だし、その理由は君にあるんだ。本気だよ! 


心から愛しているよ、ステファニー」


ごちそうさま!


今年もひたすらハードヒットしてくれることを期待しています。