mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

小園健太投手への大人たちの期待



宜野湾キャンプも第三クール最終日となり、濃厚接触者と認定されたため調整がやや遅れていた高卒ドラフト1位の小園健太投手が初めてブルペンに入った。


日曜日ということもあって、期待の新人を一目見ようとブルペンの周りには多くのファンが集まったようだが、昨夜から楽しみにしていた私も画面の前で彼の入った第二グループの順番が来るのを待ち構えていたのだ。


ストレートばかり16球を伊藤光捕手が受けていたが、その後の取材で


「18歳らしくない。堂々としている」


奥川(ヤクルト)と球筋が似ている。きれいな回転。スピンが利いて、角度があった。本当に素晴らしい」


と話していた。


左足を上げた時の軸足と体幹の安定感そして踏み込んでからのダイナミックなフォームには、伊藤捕手が言うように、さすがに高校ナンバーワンと言われるだけの風格(18歳の青年に使う言葉としては少し変かも知れないが)が備わっているように見えた。


動画配信では、手前の三嶋一輝投手のボールはホームベース付近まで見せていたが、小園投手の投球は途中で画面の枠外に消えていたため彼の投げるボール自体をよく見ることはできなかった。


ちょうどその時、オーステイン選手が仲良しの三嶋投手のために打席に入ったり、森本稀哲さんによる大田泰示選手のインタビューが重なったりしていたのがやや不運だった(小園投手にではなく我々視聴者に)。


三嶋投手のボールは唸りをあげてキャッチャーミットに飛び込んでいて、オースティン選手も目を見張るようなシーンが何度かあった。昨年の秋季トレーニング以来、三嶋投手の今年にかける想いがひしひしと伝わってくる。


話を小園投手に戻そう。


今日のブルペンで投球がよく見えなかったので、代わりと言ってはなんだが、これまで彼のボールを計測したデータや身近で見た人のコメントなどをまとめてみる。





宜野湾のキャンプに参加する前、横須賀の練習施設DOCKで行われた新人合同自主トレではじめて捕手が座った状態での投球練習を行なった。


この時は、ストレートのみ30球を投じたが、球団によると、球の回転軸などを計測する機器「ラプソード」の数値で、その半数が上方向への縦の変化量を示す「ホップ成分」において50センチを上回っていたとのこと。


ホップ成分の大きいボールと言うのは、強いバックスピンがかかっているためにマグヌス効果で揚力が生じているボールのことで、バッターが思い描くような放物線を描かずあまり落ちてこない。


バッターはホームベース近くではボールを見ることができないため、リリースまでのピッチャーの肘や手首の動きとリリース直後のボールの初動を見て予測をたて、その予測に従って最適なタイミングに最適な位置でバットをボールにコンタクトしようとする。


そこで、バッターの想定以上にホップの効いたストレートが来ると、実際のボールの軌道よりも低い位置を目指して振ってしまうため空振りやポップフライになる可能性が高い。


先程の新人合同練習についての記事では、


“「ホップ成分」の高校生平均は約32センチ、NPB平均でも約44センチとされており、50センチを超える球は「火の玉ストレート」と呼ばれた藤川氏らに代表されるように「伸びる球」と評される。”


と書かれていた。


データが公表されている投手の中でホップ成分が群を抜いて大きいのは吉田輝星投手と巨人やレッドソックスで活躍した上原浩治さんで、それぞれ53cmと52cmとなっている。


小園投手は未だ高校を卒業したばかり、しかもキャンプ前の時点で投球の半数以上がホップ成分50cm以上を計測したということなので、この二人と同様の空振りの取れるような「のび」のあるストレートを投げる資質があると言って良いだろう。


先程の記事では、球の回転軸も小園投手は「(時計の針の)1時(の軸)でずっと投げられている」と明かし、純粋な縦回転に可能な限り近いバックスピンがかかっていた、と記している。


小園投手は、高3春の選抜で敗退後、直球の質向上を求めて人差し指と中指をつける握りに改良した。彼の通っていた市立和歌山高校で投手指導を担当した舩津副部長は、この変化についてこう言っている。


「指のかかりがよくなった。練習試合で球審を務めることもあって、投げ始めは打者のベルトくらいの高さだった球が胸元まで伸びてくるようなことが増えた。低めの球も沈まなくなった」


彼自身の創意工夫で身につけたこの質の良いストレートはこれからプロ野球で戦っていく上で彼の大きな財産であり拠り所にもなるだろう。



スピンレート等のデータだけではない。

小園投手のピッチングやキャッチボールを間近で見た大人たちは嬉しい驚きを感じたようだ。彼らのコメントをまとめてみよう。



三浦大輔監督


新人合同練習でのピッチングを見て、


「迫力のあるボールを投げていた。(高田商高から入団し1試合に登板した)俺の1年目とは比べ物にならない。ものが違う」


異例の高卒新人投手の一軍キャンプ参加を決めたことについては、


「1軍の雰囲気を肌で感じてもらう。自分のチームの1軍で投げている投手の球を見て、この先輩たちを抜かしていかないといけないというのを見せるためにも」


ブルペンに入る小園投手へのアドバイス


「ブルペンは試す場所なので、いい球を投げようとするなよ」


そして今日


「高卒ルーキーの球ではない。将来、どんなすごい投手になるんだろうと期待を抱かせる」



斎藤隆コーチ


宜野湾キャンプでのキャッチボールを見て、


「今まで見た中で一番良かったので、ちょっとコーチとしてだけではなく野球人としてあのボールを見ちゃうと妙な感覚が湧いてきますね。それぐらい彼は素晴らしいボールを持っていると思います。18歳であの球はなかなか投げられないですよ」


「(ヤクルトの)奥川を見た時の感じに似ているんですけど、それプラス力感みたいなモノもある」


「これからどっちの方向に行くか。(安定感のあるまとまったピッチャーではなく)パワー系の道を歩んでいく可能性もあるように思う。」



松坂大輔さん


宜野湾キャンプで小園投手のキャッチボールを見て、


「小園投手は高校生の時から注目していました。昨年、西武のスカウトの方に『小園君、いいですよね』と話したこともありますし、今年の新人投手の中で自分のイチ推しです。高卒1年目ですが、開幕から即戦力としてチームの力になれると思っています。」


「キャッチボールを見ましたが、ボールの「高さ」がいい。低く鋭いボールを投げる。実際の投球に生かすことのできるキャッチボールです。左足を上げた時のバランス、重心の掛け方もいいですね。一球一球の意識が高い、新人とは思えないキャッチボールでした。」


「小園投手から質問もされました。自分自身も99年、開幕ローテーションに入らせてもらいましたが、1年目は分からないことばかり。今年は彼にとって全てがいい経験になると思いますし、その経験を2年目以降につなげてほしいですね。」


ちなみに、この時の小園投手と松坂さんのやりとりは次のようなものだった。


小園投手「松坂さんがマウンドで一番意識していることはなんですか?」  


松坂氏「自分の悪い癖で、練習で悪かったことをそのまま試合のマウンドに持っていってしまうことがありました。一番してはいけないのは、それを試合まで引きずってしまうこと。試合のマウンドに上がったらとにかく打者に集中する。それが大事だと思います。」

小園「練習やブルペンでの確認事項、一番大事にしていることは?」  


松坂氏「僕はバランスや、ボールを投げるタイミングを常に意識していました。(小園投手の)キャッチボールを見ていたら、それを確認しながら投げているんだろうな、というのが見て取れたので、そのままブルペンでもその意識で投げられたらいいと思います」


小園「高卒で入団。プロ1年目は何を心掛けていましたか?」  


松坂氏「1年目でとにかく分からないことだらけで、やってみないと分からない。僕は桑田(現巨人投手チーフコーチ)さんに言われたんですけど、『1年目はとにかくガムシャラにやりなさい』と。それだけを肝に銘じて1年間過ごしました。」




マーク・トウェインさん


小園投手の生まれるずいぶん前に、


「20年後に失望するのは、やったことよりもやらなかったことだ。


綱を解き、船を出し、帆で風を捕らえよ。


探検し、夢を見て、発見するのだ。」