復活までのそれぞれの道(3) 絶対に戻ってくる 三嶋一輝の場合
10月26日
【今日のフェニックスリーグ】
今日もイレブンスポーツでフェニックスリーグの配信があった。
ベイスターズの先発は徳山壮磨投手。
相手が独立リーグ選抜という点を考慮に入れても、5回、85球を投げて、被安打1、与四球2、奪三振8、失点0というのはまずまずの結果と言って良いだろう。
全ての投球についてスピードガン表示があったわけではないが、ストレートは148km/hまで出ており、スライダーやチェンジアップの変化球もそれなりにコントロールできていた。
大阪桐蔭から早大という野球エリートの経歴で即戦力の期待を背負ってドラフト2位で入団した彼としては、新人年に1軍での登板機会がなかったことは不本意だったと思う。
しかし、まだまだ道は長い。
この悔しい思いが糧となって来年以降飛躍する可能性は十分にあるし、そのために今日のような機会を使って首脳陣にアピールしていくことが必要だろう。
今月のドラフトで2位指名されたトヨタ自動車の吉野光樹投手は一つ年上だが、右の先発候補という意味では競合する存在になるだろう。
完成度が高いと言われる吉野投手の評価が気になるところだろうが、だからこそ、徳山投手の持ち味を磨いて1軍でも武器と呼べるレベルにまで高めて欲しい。
打線は今日も活発とは言えず、6安打で2得点。
森敬斗と勝俣温史がそれぞれ2安打を放ったが、どちらもポテンヒットという感じのもので捉えたあたりではなかった。むしろ、梶原昴希のツーベースとと山本祐大のレフト前ヒットの方が芯で捉えたクリーンヒットだった。
大砲候補の細川成也と小深田大地はノーヒット。チャンスの場面で変化球を空振り三振という残念な打席が目立った。
独立リーグの投手相手に情けないというコメントもありそうだが、独立リーグの各チームから選抜された投手たちはなかなか良いボールを投げており、イースタンリーグの投手とそれほど大きな差があるわけでは無いように私には見えた。
フェニックスリーグもあと数試合を残すのみとなったが、勝敗は別として、参加している各選手はそれぞれの課題に取り組みレベルアップする機会とすることができているのだろうか?
どうも大人しいというか元気がないと言うか、これまでのところ若手らしい躍動が見られないような印象がある。序盤の勝又選手のように、輝くような活躍を見せて欲しいものだ。
【三嶋一輝投手のこれまで】
一昨日あたりから、故障等で離脱している選手たちの現在位置と復帰に向けた取り組みについて書いているが、今日は三嶋一輝投手を取り上げたい。
三嶋投手はダイナミックなフォームから投げ込む最速156km/hのストレートと縦横のキレの良いスライダー、フォークボールやチェンジアップで好調時には打者を支配するようなピッチングのできるリリーバーだ。
入団当初は先発だったがその後リリーバーに転向し、2019年頃から勝ちパターンを務めるようになった。
2020年後半は不調の山﨑康晃に代わってクローザーとして3勝0敗18セーブ、防御率1.59と素晴らしい成績を残している。
しかし、2021年には特に巨人戦に打ち込まれる場面(もっと言えば亀井義行選手)が目立ち、成績を落として9月にはセットアッパーに配置転換された。
そして、2022年になっても三嶋投手の苦難は続いた。今度は広島の西川龍馬選手に魅入られたように打ち込まれるシーンなど、試合終盤で逆転された記憶も残っている。
恐らく、昨年あたりから違和感を感じていたのではないだろうか?
この頃の状況や思いについて彼自身が語ったことがある。
”この順位(2021年シーズン最下位)を含めて、大事な時期に踏ん張れなかった、とずっと思っていた。
僕自身も初めてクローザーの場面で逆転されたり、同点を守れなかったり。
五つの負けが付いている。9年間で一番悔しい思いをした。
一番泣いたし、寝られなかったことも多かった。
この前は、投球練習中に何でそこに投げられないんだ、と。
悔しくて、情けなくて。
そんな経験は初めてだったし、人前で弱い姿は出したくない。
1人の時は泣いたり、暴れたり。そこで吐き出して切り替えていた。”
”投球練習中に何でそこに投げられないんだ、と。悔しくて、情けなくて”と言う部分は、彼の身体が彼自身の意図とは違って思うように動いてくれないもどかしさのようなものを表現しているように思う。
【胸椎黄色靱帯骨化症とは?】
これも彼の患った国指定の難病である”胸椎黄色靱帯骨化症”が原因なのではないだろうか?
1月の自主トレ中から歩行に違和感を覚え、腰の精密検査を受けるも原因は不明。春季キャンプ、開幕序盤と左脚に思うように力が入らない状態が続いた。かばって投げていた右肩に張りが出て5月に登録抹消。
ここに至って、胸椎黄色靱帯骨化症と言う病名が明らかとなった。
この病気は初耳だったので少し調べてみた。その結果をQ&Aの形式でまとめてみよう(詳しくは日本脊髄外科学会のHP参照 http://www.neurospine.jp/original26.html)
Q1. 胸椎黄色靱帯ってなんですか?
ヒトの神経には、脳からの命令を手足に伝える役目を担っている運動神経と、手足や体の各部からの知覚情報(熱い・痛いなどの感覚)を脳に伝える知覚神経があります。
これらの神経は人体の中心部では背骨の中の空間(脊柱管とよばれます)に保護されるような形で存在しています。この部分の神経は脊髄と名付けられています。
胸部の脊髄を入れている脊柱管は12個の胸椎という骨から成り立っており、これらは幾つかの靱帯組織により連結されています。これらの靱帯のなかで、脊髄の背側にあって胸椎を縦につないでいるものが黄色靱帯と呼ばれる靱帯です。
Q2. 胸椎黄色靱帯が骨化するってどういうことですか?どう言う問題があるのですか?
黄色靱帯骨化症とはこの靱帯が通常の何倍もの厚さになり、なおかつ骨の様に硬くなり(靱帯の骨化)、徐々に脊髄を圧迫してくる病気です。何故、この様に靱帯が骨化するのかについては、残念ながら原因は分かっていません。
靭帯の骨化によって脊髄が圧迫されることで、脳からの命令を手足に伝える役目を担っている運動神経などに障害が生じて、徐々に下半身に痺れがでたり、歩行が不自由になるなどの症状が現れます。
Q4.どう言う手術をするのですか?
背中の真ん中の皮膚を切開し、手術用顕微鏡を使いながら周囲を傷つけないように注意しつつ胸椎の後方部分の骨を削除し、脊髄を圧迫している骨化病巣(厚くなり骨化した靭帯)を削除摘出します。
Q5. 手術後に競技に復帰する見通しは?
手術後は、胸椎コルセットを装着する事もありますが、翌日には起床して歩行器を用いての歩行を開始します。
数日は背部の痛みがありますが、過度の安静は薦められません。通常では術後10-14日目に退院となります。
術後の通院は、3-12ヶ月程度必要となる事が多いです。仕事や学業への復帰は術前の症状にもよりますが、通常は術後1-2ヶ月が一応の目安です。
【三嶋一輝の現在地とこれから】
三嶋一輝が手術を受けたのは8月29日。そしてその二日後の試合でお立ち台に上がった山﨑康晃が次のように語った。
”三嶋さんが一生懸命闘っている中で、一日も早く復帰できるように僕たちも頑張っていく。三嶋さんにもエールを送っていただければ助かります”
この言葉は、ダブルストッパーとして切磋琢磨していたライバルで同志の三嶋一輝に対する彼自身の強い気持ちの表れだろうし、ブルペン全員の願いでもある。
その後、彼は9月22日から横須賀のDOCKでリハビリを開始し、10月14日から始まった秋季練習では、初日から三嶋一輝の元気な顔を見ることができた。
もちろん未だリハビリの途中ではあるが、三浦監督と笑顔で話し、ダッシュやキャッチボールなどを行ったようだ。
三浦監督も“久しぶりに話をしましたし、リハビリも順調にきているということで、表情も明るかったですね”と話しており、ここまでのところ経過は順調であるようだ。
三嶋投手自身のコメント。
“入院前にも電話をもらっていて、手術をして『お疲れさま』という言葉と、三浦さん自身も一回、(病気で)戦線から離れることがあったけど、そこからまた人としても選手としても強くなれるから、ここからがすごく大事だぞ、という言葉をいただいた。
会えたこともすごくよかったし、さらに前を向いて、しっかりその病気と闘って、勝ってマウンドに投げるまでを想定できました”
頑張れ三嶋!
マウンドに帰って来る日をいつまででも待っている。
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