mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

悔しがるチーム文化の誕生と連敗脱出




自分も含めたチームの不甲斐ないプレーに対してトレバー・バウアーが何度も怒りの叫び声をあげ、最後のバッターとなった戸柱恭孝がヘッドスライディングしたファーストベース上でずっと立ち上がらず悔しさからヘルメットを叩きつけた昨日の試合。


そして、あの試合が転機になってチームが変わるのかどうか、私も含め、多くのファンが注視していた今日の試合。


結論から言うと、ベイスターズの元気で明るいチームカラーはそのままだが、それに加えて、必死のプレーが失敗に終わった時にハッキリと悔しがる自己表現がチームに根付きつつあるように思う。


バウアーが激昂して自らの怒りをそのままグラウンド上で表現した際、彼のチームメイト達は文化の違いを感じて戸惑っただろうと思う。


しかし、それと同時に、必死に戦って悔しい結果に終わった時、その悔しさをストレートに表現することで今までとは違う力がチーム全員に加わることを感じたのではないだろうか?


言い換えれば、ベイスターズの選手たちは、怒りと悔しさと言うこれまで自分の中に閉じ込めていた心情を解放する術を知ったように思う。



【スタメンと前半の試合展開】


昨日の試合中に右脚の強いハリで途中交代した桑原将志は思っていたよりも軽症だったようで、抹消されることはなく、試合前の練習に参加してダッシュや打撃練習などをこなしていた。


しかし、流石にスタメンからは外れた。


1番 関根大気(センター)

2番 京田陽太(ショート)

3番 佐野恵太(レフト)

4番 牧秀悟(セカンド)

5番 N. ソト(ファースト)

6番 楠本泰史(ライト)

7番 柴田竜拓(サード)

8番 山本祐大(キャッチャー)

9番 東克樹(ピッチャー)


このところ好調の大和選手の代わりに京田陽太がショートに入り、打撃の調子が上向いていると言う噂の柴田竜拓が今日もベンチスタートの宮﨑敏郎の代わりにサードとしてスタメン起用された。


先発の東克樹は前回登板の際の好調を維持している様で、初回、先頭の大島洋平にヒットを許したが、続く岡林勇希の打席で三振ゲッツーに抑えると、その後は低めに制球された最速149km/hのストレートとキレの良いスライダー、2種類のチェンジアップと最近覚えたツーシームでドラゴンズ打線に付け入る隙を与えなかった。



試合が動いたのは2回裏。


二死から楠本、柴田の連続フォアボールで一、二塁のチャンスを迎えると続く山本祐大がドラゴンズ先発の涌井投手のシュートあるいはツーシームが内角高めに浮いたところを振り抜いた。


どん詰まりの打球だったが、それが幸いしてセカンドの後方にポトリと落ちるタイムリーヒットとなり1点を先制した。


さらに、3回裏にも先頭の関根大気がヒットで出塁し、その後、京田陽太の送りバントなどで二死二塁となったところで打席に入った4番牧秀悟がこれまた詰まった打球をライト前に落として2点目を挙げた。



涌井投手からすると、不運なポテンヒット2本で2-0とリードされたと言う印象だっただろう。


東克樹が好投を続け、試合は2-0のまま5回まで終えた。


涌井投手はスライダーが抜けることもあり、本調子ではなかったと思うが、さすがの投球術でベイスターズ打線も4回、5回と無得点で抑えられた。


このまま2-0で終盤に進み、リリーフ勝負になるかと思われた前半戦だった。



【後半に入って試合は動き東克樹は悔しがった】


6回表の中日の攻撃。東克樹は2打席連続ヒットの大島選手をセカンドゴロに抑えたが、一死後に岡林選手にセンター前ヒットを許した。


そして、続く3番石川昴弥選手への2球目のツーシームが高めに浮き、ほとんど変化しない棒球となった。


石川選手はこの失投を逃さず捉え、同点ツーランホームランをレフトスタンドに放り込んだ。


あっという間に2-2の同点となり、試合の行方は全く分からなくなってしまった。


この時、東克樹は両手を膝について少ししゃがみ込んだが、その後、珍しく感情を露わにして左の拳でグラブを強く叩きなにごとかを吠えた。


彼とチームが必死に築いてきた2点のリードをたった1球のコントロールミスによって失ったことの悔しさを一瞬だが全身で表現した。


これは、冒頭に書いたベイスターズのチームカラーに昨日から付け加わった新たなスパイスだ。


少量だが、料理全体の印象を大きく変える重要なアクセントであり、チーム全体に波及効果を及ぼす。


その直後、6回裏の攻撃で先頭打者となった牧秀悟は東の悔しさを受け継ぎ、2-2からの5球目となる涌井投手のシンカーを捉えてフェンス直撃のツーベースで出塁。


そして、続くソトはチームバッティングに徹することでチームメートの気持ちに応える。


初球、明らかに進塁打を狙って高めのスライダーを右方向に叩きつけ、牧をサードに進めた。


さらに、6番楠本泰史が2-2から涌井投手の投じた低めの変化球をジャストミートし、犠牲フライには十分な飛球をセンターに運んだ。



同点に追いつかれた直後の攻撃で3-2と突き放すことに成功したベイスターズは、昨日の試合から復調気配が鮮明となったリリーフ陣、ウェンデルケン投手と山﨑康晃がヒットを許さず8回、9回を抑えてそのままゲームセット。


山﨑康晃はこれで今季18セーブ目となり、ライデル・マルチネスと並んでリーグトップとなった。



ホームランや決勝タイムリーなどは無い地味な試合展開だが、ミス無くしっかりと勝ち切り、連敗を4でストップさせた。


チームの勝ち頭である東克樹は8勝目。


こちらもジャイアンツの戸郷翔征と並んでハーラーダービーのトップに立った。



決勝点を挙げた楠本泰史の言葉が今のチーム全員の気持ちを代表している。


“その前のイニングでホームランを打たれたんですけど、その時克樹がマウンド上でめちゃくちゃ悔しそうにグローブ叩いてたのを見ていたので、なんとしてでも絶対牧をホームに返すんだという思いで打席に入りました。


前のソトさんも右方向に打ってくれて、何とか塁を進めてくれた打席だったので、みんなの思いを背負って絶対に事を起こしてやるんだと思って代打のつもりで打席に入りました”


冒頭に書いた「必死に戦って悔しい結果に終わった時、その悔しさをストレートに表現することで今までとは違う力がチーム全員に加わる」と言うのはこれのことだったのだろう。


ひょっとすると、トレバー・バウアーが率直過ぎるほどすなおに表現した「悔しさ」がこれまでベイスターズにはやや希薄あるいは表に出ていなかった必死の力としてチームに別次元の強さをもたらすのではないかと感じた。