mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

東克樹の涙は感謝か歓喜か





横浜スタジアムでドラゴンズに3連勝して東京ドームに乗り込んだベイスターズ。


ここで勢いを止める訳には行かない、と我々ファンも思っていたが、選手たちの気持ちはその何倍も強かったに違いない。


これまで、その強い気持ちが身体を硬くしてしまい、本来の自分達のプレーができないことも多かったが、先週の阪神戦3連敗で一旦死んだチームは一皮むけて上のレベルに上がったように思う。


先発の東克樹も野手たちも平常心と気合いとを上手く同居させて戦っていた。


東克樹は力強いストレートとキレの良い変化球(スライダー、カットボール、チェンジアップ、カーブ、ツーシーム)でしっかりとゾーン内で勝負できていた。


一回に吉川尚輝、4回には坂本勇人にそれぞれツーベースヒットを打たれたが、それ以外は一度も出塁を許さず、4回までジャイアンツ打線を無失点で抑えた。



対するジャイアンツの横川投手も好調で、22歳とは思えない落ち着いたマウンド捌きと精妙にコントロールされた多彩な変化球そして球速以上に速く感じるストレートでベイスターズ打線を押し込んでいった。


良い投手だ。


以前の対戦でも打てなかった記憶が蘇る。


試合が動いたのは5回裏。一死走者なしから秋広選手の強烈なファーストゴロをソトが逆シングル(古いね)で捕球しようとしたがグラブが弾かれてしまい、牧がカバーしたがファーストベースカバーに入った東との呼吸が合わず出塁を許す。


記録はソトのエラーだったが、ファースト強襲のヒットと言っても良いような打球だった。


続く高卒ドラフト1位の浅野選手はインコースの厳しいコースで完全に打ちとったどん詰まりの打球だったが、それが幸いしてレフト前にポトリと落ちるヒット。


さらに、横川投手の三塁側への送りバントが絶妙な位置に転がってオールセーフ。


一死満塁のピンチとなった。


ここで打順は一番に返って長野選手への4球目のストレートはアウトコースだったがベルト付近に浮いてしまいライトへの犠牲フライを打たれた。


ジャイアンツが1点先制。


ベイスターズは7回表に一死から牧が右中間を破るツーベースで出塁し、続くソトが横川投手の速球を引っ張ってレフト左への強烈な当たりを放つと、牧がセカンドから生還して1-1の同点に追いついた。



横川投手は8回も登板して無失点に抑える。自己最多となる114球は自信になったことだろう。


その裏、東は横川の代打梶谷隆幸を、宮﨑の好守もあってサードゴロに打ちとったが、続く長野選手への初球、カーブが高めに浮いたところを1発で仕留められ、勝ち越しのソロホームランをレフトスタンドに運ばれた。


8回裏で再度リードを許すこの一打は展開的に余りにも厳しい。


東もそのように感じたのだろう。打たれた直後に両手を膝について落胆の色を隠せない。



その後も吉川尚輝にファースト内野安打を許し、さらに二盗を決められ、このままズルズル行ってしまうかと思われたが、なんとか立て直して後続を絶った。


この時、牧秀悟がマウンドに歩み寄り声をかけていた。


“いいボールが行ってますよ。粘りましょう。”


という言葉を東に伝えたらしい。


フェンスに激突しつつファウルフライを捕球した宮﨑の執念のプレーでこの回を終えたことも書いておきたい。



しかし、ドラマはこれで終わりではない。


1-2のビハインドで迎えた9回表、ジャイアンツのマウンドには抑えの中川皓太投手が上がり、先頭の桑原将志はレフトへのファウルフライに倒れた。


このまま店仕舞いかと思われた一死走者なしから、宮﨑敏郎が詰まった打球でセンター前にうまく落とした。代走は林琢真。


そして、4番牧秀悟が打席に入ると、中川投手の初球、インコース直球をドンピシャのタイミングで振り抜いた。


打った途端、と言うのは正にこのことだろう。



牧はゆっくりと歩き始め、バットを横にうっちゃる。


そして打球はほんの数分前まで試合を決めたヒーローだったレフト長野選手のはるか上空を飛び越え、スタンド最上段のさらに上にある看板を直撃する特大のホームランとなった。


3-2と逆転し、この試合で初めてリードを奪った。


TV画面では、ベンチ内の東克樹のこの間の動きが鮮明に映されていた。


気落ちして目を伏せているところから、恐らく打球音を聞いて顔を上げ、打球を目で追う。


途中で逆転ホームランであることを確信すると、ベンチから駆け出してきて踊り上がり、歓びを爆発させた。



そして、大粒の涙を流して号泣した。


“牧が一周してる間にどんどん涙が込み上げてきて。


頼れる4番が1発を打ってくれたんで、報われたな、と。


粘り強く頑張ってきて、良かったなと思った。”



この後、中川投手は降板したが、代わった菊池投手から大田泰示にも一発が出て、4-2と2点のリードを奪った。


この追加点も大きかった。


9回裏には、微笑みのクローザー森原康平が登板し、ヒット2本を許したが、どことなく淡々とした風情で最後の打者長野(!)をライトファウルフライに抑えてゲームセット(フェンス直前で蝦名よく取った)。


今シーズンのベストゲームの一つであることは間違いないだろう。


阪神は今日も勝って8連勝。はるか彼方にいるようだが、焦る必要はない。


目の前の試合一つ一つを全力で戦い、できるだけ多くに勝ち星を上げることに集中しよう。


横浜反撃!