mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

分岐点を曲がったチームはどこへ向かうのか?





8月24日の横浜スタジアム対カープ第3戦に勝利して5連敗を免れた日のヒーローインタビューはいつものように喜びに弾けたものではなかった。


その日までに味わってきた悔しさや自分達に対して感じた不甲斐なさの総量はその日の勝利だけで精算されるものではないことがその理由だったと思う。


お立ち台の上で、この1勝で満足することなどとてもではないができない、と言うチーム全員の気持ちを踏まえた上で、大田泰示はこう言った。


“この1勝を分岐点にしたい”


その前日までの4連敗で貯金を全て失い、ジャイアンツの後塵を拝して4位に転落したと言う誰の目にも明らかな事実以上のチーム状態の低下があったのだろう。


首位打者の座をキープして打線を引っ張り続けた宮﨑敏郎の負傷による離脱、エース今永昇太の生命線であるストレートが劣化したことによる連続炎上などもチームの拠り所を失うと言う意味で心理的なダメージは大きい。


そこには、このままズルズルとBクラスに確実に沈んで行くことを思わせるようなチーム内の不協和音や信頼の欠如があったのかも知れない。


上に挙げた大田泰示の言葉は、こうした状況の中で祈るように絞り出したものだったに違いない。




“悲観主義者は風に恨みを言う。


楽観主義者は風が変わるのを待つ。


現実主義者は、帆を動かす。”


という言葉があるが、彼らは今どのような行動を起こそうとしているのか。


その後の3試合を見て私が感じたのは、優勝と言うようなフワッとした遠い目標を夢見てプレーが硬くなり失速した7月以降のメンタルをリセットして、もう一度キャンプから開幕当初に掲げていた3つの目標を目指し、一つ一つのプレーに誠実に取り組む姿勢をチームとして統一すると言う意思だ。


(目標1)投手は80%以上の確率で3球以内にツーストライクとする


(目標2)ヒット、セーフティバント、四球など各選手がそれぞれの状況で可能な策を駆使してチーム全体の出塁率を.320以上にする


(目標3)次の塁に進む機会を見逃さず可能であればさらにその次の塁に進むことに挑む


もう一度これらの目標に真摯に取り組むこと、そして、三浦監督以下の首脳陣も含めてさらに大切なことは3つの目標を目指した結果失敗したとしても決して責めないことだ。


例えば、初球からストライクゾーンで勝負して手痛いホームランを喫することがあっても、それが低い頻度であれば許容しなくてはいけない。初球は決して甘くなってはいけない、などと言い出すと一つ目の目標はどこかへ行ってしまう。


例えば、5点差で負けている状況で、出塁するために最も確率の高い選択肢がセーフティバントだと思ったのであれば、その成功を評価しなくてはならない。そこで、焼石に水だ、などと言ってしまっては2番目の目標を掲げることに反する。


例えば、微妙なタイミングで一つ先の塁を狙ったチャレンジが失敗してアウトになっても、自重すべきだったなどと言ってはいけない。


これらの三つの目標はシーズン全体としての数万回の投球、数千回の打席や走塁の全体としての期待値を最大化するためのものである以上、一つ一つのプレーで失敗があってもブレずに継続しなくてはいけない。


その失敗が敗戦に直結するような手痛いものだったとしても。


そして、このことは我々ファンにも当てはまる。上に書いた3つの目標を目指したプレーである限り、私たちは失敗を責めるべきではない。


少なくとも私はそう心に誓った。それが私の分岐点だ。


これからは勝敗と言う結果以上に、上記の三つの目標に照らして試合内容を吟味して行こうと思う。




昨日の試合、先発投手は石田健大だったが、本人が試合後に語った通り、球数が嵩み、攻撃のリズムを作ることができなかった。


3球構成率で見ると、下位打線に対しては3球以内にツーストライクに追い込むことが出来ているのだが、上位打線、特に4番細川成也を中心とするクリーンアップにはボールが先行する打席が目立った。


石田は6回を無失点、問題の細川成也もノーヒットに抑えたが、それで結果オーライとはしないことが上記のチーム方針だろう。



その後の救援陣は山﨑康晃を除けば概ね3球でツーストライクと言う投球が出来ていたと思う。


打線は、ドラゴンズの先発が若手のエース格である髙橋宏斗であったこともあり、18点を奪った前日の試合とは打って変わって11イニング得点なしで推移した。


しかし、10安打、7四球を奪ったことにより、チーム全体としての出塁率は .347であり、目標2をしっかり達成している。


4打数1安打だった関根大気は2つのフォアボールを選んでおり、出塁率は5割。


決勝のタイムリーを放つなど6打数3安打の猛打賞だった佐野恵太、そして5打数2安打と1四球だった牧秀悟も出塁率5割。


延長12回に貴重な追加点をあげたネフタリ・ソトは6打数2安打、京田陽太は2四球でいずれも出塁率 .333だった。


2〜6番が目標2を達成したのに対して、出塁なしに終わった1番大田泰示とそれぞれ1度の出塁だった山本祐大と林琢真は目標を達成することができなかった。



目標3に関しては、延長12回表の攻撃でヒットの桑原将志を一塁に置いて一、二塁間を破るヒットで一、三塁とし、さらに二盗を決めた関根大気が目立った。


関根は佐野恵太のタイムリーで一気に2塁からホームを狙ったが、ライト細川成也のレイザービームでアウトとなった。


ギリギリのタイミングで回した田中浩康サードコーチャーに苦言を呈する解説者もいたが、分岐点を経た我々ファンはむしろ「ナイストライ」と言って、関根の積極的な走塁とそれを指示した田中コーチを賞賛するのだ。


決して脚が速いとは言えない佐野恵太がソトのタイムリーで2塁から生還したのも好走塁だったと思う。


昨日の試合は、延長12回で勝利したことよりも、ベイスターズが開幕当初の方針に立ち返り、やると決めたことをしっかりとやろうとしていることを評価したい。


今日の試合でも目先の勝ち負けではなく、シーズンを通じての目標に向けてブレずにプレーして欲しい。


そして、分岐点を曲がったチームの今後は来週火曜日からの対阪神2連戦(甲子園)で明らかになるだろう。