mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

クローザーが太る理由と伊勢大夢のこれから





師走に入り、ベイスターズでも各選手の契約更改のニュースが次々と報道されている。


ドラフトも侍ジャパンの出場したアジアプロ野球チャンピオンシップ2023も終わり、FA宣言した山﨑福也投手の争奪戦も決着が着いた今、それほど大きなニュースがないこともあるだろう。


昨日はブルペンの柱の1人である伊勢大夢投手の契約更改が行われ、年俸が1億円の大台にのったことが公表された。


大活躍だった昨年に比べると、4勝6敗、33ホールド、2セーブ、防御率3.22と言う成績はやや物足りないが、58試合に登板して緊迫した場面でチームを支えた功績は相変わらず大きい。



しかしながら、昨日の記事で私が彼の成績や年俸以上に注目したポイントがある。


“んっ?なんだかちょっと太ったんじゃないか?”


思い返せば、山﨑康晃投手の膨張についても、最初はこんな感じの印象だった。


伊勢もこれから順調に膨らんで行くことになるのだろうか。


そう言えば、今シーズンもマウンド上で、あれっ?ちょっとお腹が出てきたような気がする、と思ったことが数回あった。


下の写真は森唯斗投手と山﨑康晃投手を例としてクローザーの膨張プロセスを可視化したものだが、彼ら2人に限らずクローザーをはじめとした勝ちパターンと言われるリリーバー達は歳を経るにつれ太る傾向がある。






そもそも、クローザー達は何故太るのか、そして伊勢大夢はこれからどうなって行くのだろうか?



【クローザーが太る理由】


山﨑康晃投手が不調になると、痩せろ、と言うファンあるいはOBの解説者の方々の声がしばしば聞かれるようになる。


アスリートとは思えない、あるいは太り過ぎて身体のキレがない、と言うのがこうした意見の背景にあるのだが、私は常々違和感を持っていた。


我々一般人の正月太りとは訳が違うのだ。


プロ野球選手である彼らは意図を持って自分の身体をデザインしているはずであり、体重の増加は大半が筋肉量の増加だろう。


そもそも、アスリートらしい体型とは何だろうか?


下の陸上選手の写真は、マラソンランナーと砲丸投げの選手である。






どちらの選手もそれぞれの分野で力のある選手であり、当たり前のことだが一流のアスリートである。砲丸投げの選手は一般に言われる「デブ」とは全く違うのだ。


長距離走者は持久系を中心としつつラストスパートの瞬発力をもたらす筋肉をつけ、そしてパワーウェイトレシオを考慮した最適化が行われている。


一方の砲丸投げの選手は7キロ強の砲丸を遠くまで飛ばすと言う目的のために瞬発力を重視した筋肉をつけており、投擲時の反動に備える意味では体重はある程度あった方が良い。


この例ほど極端ではないが、プロ野球選手もポジションや役割によって合理的となる体格は異なるはずだ。


俊足と広い守備範囲が求められるセンターやショートのアベレージヒッターはパワーウェイトレシオを高く保つ必要があるだろうし、ホームランバッターは砲丸投げの選手のように瞬発力を重視してボールを遠くに飛ばすための筋肉をつけることになる。


従って、ホームランバッターはファーストなどのパワーウェイトレシオがあまり問題とはならないポジションに就くことが多い。



だからこそ、これらの矛盾する要求を同時に満足する必要のあるトリプルスリー(打率3割、ホームラン30本、盗塁30以上)の達成者は稀少であり高い評価を得ることができる。


投手の場合も同じような傾向はあるだろう。


長いイニングを投げることが求められる先発投手と勝ちパターンと呼ばれほとんどの場合は1イニング限定で10〜20球程度を投げるセットアッパーやクローザーとは別のポジションだと思って良い。


後者が持久力はあまり関係なく(毎日投げ続けられるタフさは必要だが)短時間だけ高出力でピッチングのできる身体作りが求められる。つまり、どちらかと言えば、ホームランバッターや砲丸投げの選手に近い体格になって行くべきなのだろう。


だから皆さん、山﨑康晃がセーブシチュエーションで失敗する度にデブだからだとか、痩せろとか言うのはやめましょうね。


「デブ」という言葉は「クローザーらしい身体つき」という表現に一括変換しましょう。



【伊勢大夢のこれから】


伊勢大夢は昨日の契約更改後のインタビューで次のように語っていた。


“去年までは「抑えの人がダメだったら次に入れるように」と発言してきた。自信がなかった。そんなんじゃダメ。今年終わって気づいた”


“みんながガツガツ狙うポジション。つかんだ人がチームを引っ張れる。空いたら取るじゃなくて奪ってやろうって気持ちでやりたい”


伊勢の太くなった首回りやアゴの下の肉付きを見ると、彼の言葉を裏付けるように、砲丸投げ方向に舵を切って瞬発系の筋肉を強化していることがわかる。


これからの自主トレそして春季キャンプを通じて肉体改造をした伊勢大夢が瞬間最大球速のアップした彼独特のシュートホップするフォーシームを引っ提げて新クローザーの座を射止める姿を見ることができるような気がする。


伊勢、山﨑、ウェンデルケンと揃った「砲丸投げ系統」のリリーバー達のクローザー争いを楽しみにしていよう。